あのル・マンの衝撃的な結末を見た直後にF1のスタートだったもんだから、妙に印象が薄いレースになっちゃいました。F1ヨーロッパGP決勝。
- 決勝結果: 2016 FORMULA 1 GRAND PRIX OF EUROPE - RACE RESULT
- 決勝ダイジェスト: Race highlights - Europe 2016
- 決勝後各チームコメント: Sunday in Baku - team by team
- 決勝後記者会見: FIA post-race press conference - Europe
そんなに混乱しなかった
フリー走行や予選ではコースを飛び出すクルマが非常に多く、ちょっと気を抜けばウォールの餌食になってしまうこのコース、当然決勝でもやらかすクルマが多く出て、ベルント・マイランダーが過労死するレベルでセーフティカーがどっかんどっかん出動するハメになるんだろうなと思っていました。……が、セーフティーカーはおろかバーチャルセーフティーカーの機会すら一度もありませんでした。
なんという肩すかし。
ロズベルグは記者会見で、F1ドライバーの持つ経験と、GP2レースのアクシデントを見てそこから学んだことが大きいとコメントしてますね。
NR: I think for sure a little bit the experience helps in that case. We’re all much more experienced and we’re able to avoid the incidents better and we also learned a lot from what was going on in the GP2 for sure, because we were watching and that was mayhem so I think we picked up a few things there as well and that’s it, but very surprising anyways.
なにせあからさまにリスクの高そうなコースですし、初開催のコースでもあるワケなので、ミスをしやすいポイントを見極めて、タイムを出しつつもマージンを確保する走りを心がけていたという感じでしょうか。言うほど簡単じゃ無いですが、それをやってのけるのがF1ドライバー。ただまー、「運が良かった」といえばそれまでなのかも知れませんけどね。ベッテルは大きなアクシデントが発生しなかったコトに驚きつつ、改めてこのコースの危険性についてコメントしてます。
SV: Well, surprised, yes, but then again I think it speaks for the quality. I think we’ve talked a lot about this track being high risk, dangerous. It reminds me.
近年のグランプリコースの安全基準から考えると、ハイリスクなのは間違い無さそう。雨とか降ったらまともにレースできんですよね、このコース。
しかしまー、結果的に今回は何事もなく、そしてロズベルグは一人悠々と優勝できたワケなんですけど。ハミルトンが予選で自爆したのもありますけど、一度ハミルトン側に大きく傾いた流れを戻してみせたのはお見事でした。去年までのロズベルグだったら、このままズブズブ転落しそうなところですが。優勝をほぼ確実にしながら、最後の最後で止まってしまったトヨタとは対照的な、完璧な勝利でした。
……そういや、止まってしまったトヨタ5号車のアンカードライバー中嶋一貴とロズベルグって、元チームメイトですねぇ。
ちなみに、トップ3ドライバーがポディウムから記者会見場に移動した際、ベッテルが記者団にル・マンの勝者を尋ねたようで、「ポルシェ」と言われたもんだから「トヨタはどうやって負けたの?」と聞き返し、「ラスト1周」と聞かされ「リタイヤしたの?Nooooooo…! 」とさすがのベッテルも驚きを隠せなかったようです。
Q: (Sebastian Vettel – Scuderia Ferrari) Question to anyone. Who won the Le Mans…?
Porsche
SV: How did Toyota manage to lose?
Last lap
SV: Retired? Nooooooo…!
無線は混乱してた
比較的落ち着いていたレース展開とは裏腹に、無線ではハミルトンとライコネンが大いに混乱していたようです。原因はパワーユニットのエンジンモードのプリセットが適切では無かったようで、これによりしばらくの間、出力の低下に悩まされていた模様。
ハミルトンとチームの歯がゆい無線通信 | Mercedes | F1ニュース | ESPN F1
実は同じ現象がロズベルグにも起きていたようですが、彼はスイッチを直前の状態に戻すコトによって半周のウチにパワーを取り戻すコトができた、とトト・ウォルフは説明してます。一方ハミルトンは、12周もの間スイッチと格闘していた模様。
Nico was in the more fortunate situation that he did a switch change just before which kind of led him on the right path, so within half a lap he went back into the right mode. Lewis - because he didn’t have that right path - took a while to figure it out, something like 12 laps - and this for sure affected his race.
via: Toto Wolff Q&A: Engine mode problems stemmed from ‘messy’ Friday
こうなっちゃったのも、例の無線規制によってエンジニアがドライバーに助言するコトを禁じられているからなワケですが、レース後ハミルトンがこれを痛烈に批判、アロンソも無線規制に批判的なコメントをしたコトで俄かにこの問題がクローズアップされてますね。
ハミルトンが主張するように、こうした問題が起きた際にドライバーの意識がステアリングに向くコトになってしまい危険というのも一理あるとは思いますが、何より観客席やテレビで観ている側としてはこんなしょーもないコトでドライバーがそのパフォーマンスを発揮できないというのは少々面白く無いなぁ、と思います。まーアツくなったドライバーと冷静なピットのやりとりは漫才めいていて面白かったりはするんですが。
しかしなんですね、シーズンも1/3を消化しましたけど、これまではここまで大きな問題にはなってなかったのがむしろ不思議ですけどね。新しいコースゆえの混乱、というコトなんでしょうか。
そのほか
予選では印象的な速さを見せたレッドブル、決勝ではタイヤがどうにも持たず、2ストップ作戦に切り替えポジションを落とす形に。トップスピードを稼ぐためにダウンフォースを削りまくったツケを払わされてしまったようです。この辺も、データが無い新コースならではの光景ですねぇ。しかし、ミディアムのペースは悪く無かったよね、レッドブル。
それから5グリッドダウンペナルティを喰らいながら、3位表彰台まで巻き返したペレスもお見事でした。こういうストリートコースはホント得意ですねぇ、彼。データが少ないコースでここまでキレた走りを見せるのは彼らしいというか、どちらかというと理屈で走るタイプじゃ無いんでしょうね。この活躍でまたトップチームもペレスに注目しそうな気もしますが、うっかりデータ偏重主義のチームに行っちゃったりすると、また不幸なコトになってしまうのかも?