大須は萌えているか?

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UFOビリーバーと表現規制論

初めて国書刊行会の本を買ってしまったのですが。

定本 何かが空を飛んでいる
リエーター情報なし
国書刊行会

タイトルからなんとなく推察できるように、UFO現象や、その他諸々のオカルト的事象についてのコラムがまとめられた本になります。元々、UFO現象についてのみ論じた同名のタイトルの書籍が1992年に新人物往来社から出版されていたようですが、それにその他のコラムも合わせて2013年に再度出版されたのが本書になります。

Kindle版は無いし、定価も3,200円(税別)とそれなりに値の張る本なのですが、なんでこんな本(失礼)買っちゃったかというと、数あるNHKの番組の中でも大好きな『幻解!超常ファイル』で紹介されてた(著者もVTRで出演してた)からだったりします。

『幻解!超常ファイル』で紹介されるような本なので、内容も『UFOは宇宙人の乗り物だったんだよ!!』⇒『ナ、ナンダッテー』みたいな内容ではなく、かといってUFOを存在をムキになって否定するワケでもなく、なんで人は空に光の球を目撃してしまったり、その光の球が宇宙人の乗り物だと思ったりするのか、なんてコトを考察しているモノ。

『幻解!超常ファイル』でも紹介されていた内容ですが、著者の指摘で興味深いのは、まだ「空飛ぶ円盤」というものが存在していなかった20世紀初頭の「妖精目撃談」と、戦後の「UFO目撃談」が酷似しているという話。夜更けに道を歩いていたら、大きさが変化する光の球を目撃し、そしてその光の中に人間のような形をした「何か」を見た……っていう。

要はUFOというモノがケネス・アーノルドによって「発見」される前から、人は謎の光の球や、人の形をした「何か」を目撃しているのであり、それが時代によって妖精というコトになったり、UFOというコトになったりしてるのでは……?というお話。元々、同様の指摘は妖精の本場・ヨーロッパでも以前からされてきたものらしい。

人は自分が理解できない事象を目撃したとき、それを「よくわからないもの」として放置するのは気持ちが悪いので、それを端的に上手いこと説明してくれる「何か」を求めるっていうのはあるんでしょうね。それによって、「よくわからないもの」は頭の中で明確な像を結び、人は安心感を得る。その「何か」は、それが目撃された時代や社会によって、妖精になったり、神の奇蹟になったり、UFOになったりするんでしょう。

この人間の心理って、他でもわりと良く見られる気もするんですよね。

例えばですよ、Twitterなんかで「性犯罪が後を絶たない(あるいは女性差別を助長している)のはAVやエロいイラスト・漫画が原因だ、よってこれらの表現を規制せよ」みたいなコト言う人よく見かけるじゃないですか。正直なところ、AVもエロマンガも見たコト無い男って恐らくかなりの少数派だと思いますし、そういった表現に触れるだけで犯罪が誘発される原因になるっていうエビデンスも無いワケじゃないですか。

なのに、なんでそこまでAVやエロマンガが原因であると断定しちゃうのかな、って不思議に思ったりもするんですけども。ただ、特に女性にとってはですよ、「男の性欲」ってなかなか理解し辛いモノではないかと思うんですよね。それが性欲に振り回されて犯罪を犯すような男なんて言ったら、それこそ空を飛んでる謎の光以上に理解できない存在なのではないかと。で、そういう輩が出現してしまう原因を、一番手っ取り早く説明してくれそうなのが今のご時世ならAVとかエロマンガなのかな、とかね。

時代が時代なら、妖怪とか悪魔の仕業になるのかもね。

ついでに言うと、『何かが空を飛んでいる』の中で、UFOカルトとレイシズムの結びつきについて言及されているのも興味深いところです。

宇宙人たちが救世主とみなされる場合には、彼らは「高等人種」のイメージで描かれたわけだが、宇宙人が敵意や邪悪を秘めた存在の可能性が強い場合には、彼らは「劣等人種」のイメージで描かれることになる。宇宙人は背が低く、眼が「東洋人」のように吊り上がっていたという報告で、欧米のUFO文献は溢れかえっているといっても過言ではない。そして、「悪い」宇宙人たちの皮膚は、黒っぽい、あるいは灰色である。

via 稲生平太郎 著 『定本 何かが空を飛んでいる』(国書刊行会) 65ページより

あー。確かに。日本人としては、「背が低く」「眼が東洋人のように吊り上がっている」リトルグレイとかの映像見て喜んでる場合じゃないかもしれんですね。いや面白いけど。

UFOのような「よくわからないもの」を手っ取り早く説明する「何か」を持ち出す際に、その人の心の内にある願望なり差別意識なりが無意識的(あるいは意識的?)に表出しやすい、というのはそうなのかも。しかしそう考えるとですよ、例えば殊更に二次元萌えキャラバッシングに精を出す方々が「オタクマジキモい」みたいなコトを言ってたりするのって、めっちゃ分かりやすい図式じゃないですかねコレ。

もちろんこういう心理は男にだってあるワケで、だからこそ僕らは子供の頃に矢追純一MMRの洗脳を受け、UFOだのMJ12だのリトルグレイだのといったモノに今でも拘泥してしまうワケです。……あれ、みんなそうでもない?

えーと、つまり今回の話をまとめますと、アメリカ政府に対してエリア51に匿われている宇宙人とUFOの詳細を明らかにせよ!と訴えている人と、男が性犯罪を犯したり女性蔑視するのはAVやエロマンガや萌えキャラが原因だからこういう表現を規制しろ、っていう人って案外根は同じようなところにあるんじゃね?ってコトです。

……って、こう書いてみるとすごい暴論だな。この記事も「説明しやすい何か」に飛びついちゃった産物という可能性も否定できないので、すみません忘れてください(といいつつ、記事は公開するっていう)。