ハミルトンだけ安定しすぎていたため、却って印象に残らなかったというF1イギリスGP決勝。
- 決勝結果: 2017 FORMULA 1 ROLEX BRITISH GRAND PRIX - RACE RESULT
- 決勝ダイジェスト: Race - Hamilton’s fifth home win slashes Vettel’s title advantage(動画有)
- 決勝後各チームコメント: What the teams said - race day in Great Britain
- 決勝後記者会見: FIA post-race press conference - Great Britain
ハミルトン完勝
ハミルトンがトップを明け渡すコトなくチェッカーを受ける完勝。予選の勢いをそのまま持っていったかの様なパーフェクトウィンでした。母国でここまで強いドライバーってのも逆にスゴイですねぇ。ハミルトンが敬愛するアイルトン・セナは母国ブラジルで2勝しかできておりません。
にしても、今回もメルセデス勢のタイヤマネージメントの上手さが光るレースになりましたねぇ。ハミルトンはフェラーリの2台と同様にスーパーソフトでスタートして、ベッテルより7周後・ライコネンより1周後にピットイン。その間ずっと33秒台前半から32秒台のタイムをコンスタントにマークし、33秒台の壁を破れないフェラーリ勢との差が浮き彫りに。まーベッテルはフェルスタッペンの後ろでエキサイトしていたのもありますが。
ソフトタイヤに履き替えてからはライコネンとのペース差はほぼ拮抗した状態になりますが、これはハミルトンがペースコントロールしていたというコトでしょうね。レース終盤の48周目には1:30.621というレース全体のファステストラップをマークしていますが、フェラーリの2人のファステストは31秒台中盤~後半。
一方、ボタスもスゴかった
ハミルトンとは作戦を変えて、後方からソフトタイヤでスタートしたボタスは1回目のピットストップを引っ張って引っ張って、32周目にスーパーソフトに交換。タイヤ交換前にはコンスタントに32秒台をマークしており、結果としてタイヤ交換後ベッテルの後ろ4番手で復帰。
ベッテルがライコネンより6周早い18周目にタイヤを交換したのは、フェルスタッペンの後ろにスタックしていたコトもあったでしょうし、2ストップ作戦も念頭にあったんだと思われますが、ボタスがこれだけ長い周回をタイヤ換えないまま良いペースで走り切っちゃったもんだから、フェラーリとしては2ストップ作戦はボツにせざるを得なくなった感じ。
が、今度はボタスがベッテルに仕掛けた際、ベッテルが左フロントのブレーキをロックさせてしまい、大きくブレーキングスモークを上げるシーンが。これによりおそらくタイヤにダメージを負ってしまったベッテル、ボタスに抜かれた後はペースが伸びず。そしてそれが原因とも思われる左フロントのパンクに見舞われ、結果として7位フィニッシュと大きくポイントを失う結果に。
振り返ってみれば、ボタスがベッテルのポイントを大幅に削り取って、しかも最後は2位まで追い上げたというコトで、チームとハミルトンにしてみれば最高の仕事をしてくれた!というコトになるでしょう。
それと同時に、今やメルセデスはフェラーリよりも上手くタイヤを使いこなしている、というのが浮き彫りになったレースでもありましたね。
フェラーリのタイヤ祭り
にしても、終盤になってライコネンとベッテルが立て続けにタイヤトラブルに見舞われたのは唖然としましたけどね。
Race Dramatic end costs Ferrari at Silverstone(動画)
とりあえず、この記事を書いている現在はまだピレリも原因を調査中というコトですが、ライコネンとベッテルでそれぞれ起きた事象は異なるようです。
ピレリは決勝終了直後の見解として、どちらのタイヤもほぼ終わりかけていたが、2台に起きた問題は全く別物であると述べた。ライコネンのタイヤにはダメージが生じていたがエアが抜けてはいなかった。一方、ベッテルのタイヤはパンクしていたと、ピレリは説明している。
ベッテルはバルテリ・ボッタスとのバトルのなかで激しいロックアップをしていたが、これとトラブルが関係している可能性をピレリは否定していない。
ライコネンのトラブルはデラミネーション(タイヤのトレッド面が剥がれる)が起きていたっぽいですが、シルバーストーンでピレリタイヤのデラミネーションというと、また2013年のタイヤバースト祭りを思い出しますねぇ(⇒ F1[13] イギリスGP ピレリタイヤはなぜ爆発したのか - 大須は萌えているか?)。まー、あの時問題になったのは左リヤタイヤなので、原因としてはまったく別物だと思われますけど。
CSの中継の中で、川井ちゃんと浜島さんがタイヤのブリスターの悪化が原因となった可能性にも言及していましたが、どうなんでしょ。今のピレリタイヤは見た目ブリスターが目立っても性能劣化はほとんど無い、って言われてますけど、なんか別の懸念が浮上してくるのかも?
ライコネンのトラブルを受けて、後ろを走っていたレッドブルのフェルスタッペンも緊急ピットインを行ってタイヤを換えていますが、フェルスタッペンのがライコネンより5周多く使っているソフトタイヤでしたからね、チームの懸念もわからなくは無い。しかも場所が因縁のシルバーストーンだし。
今回のトラブルがフェラーリのタイヤの使い方にあったのか、それとも?というのが気になるところ。
クビアトが失ったものは大きい
あと、レースの印象的なシーンといえばトロロッソの同士討ち。
Race Sainz out after Toro Rosso team mates collide(動画)
結果的に、クビアトに対してドライブスルーペナルティとペナルティポイントが科せられましたが、まぁそうなるでしょうねコレは。ただ、クビアトはこの裁定にかなり不満なご様子。
「僕はぎりぎりコース内に残っていた。だから、実際の出来事に対してあのペナルティは厳しすぎると僕らは考えているんだ・・・レーシングドライバーならあの状況で、僕がターン12で理想のラインは取れないことが分かるはずだ。考えれば接触は90%避けられたはずだ。もう1台のクルマはそれを予想していたはず。次のストレートで取り戻せば済んだことなのに」
安全な形でコースに復帰しなかったからペナルティを科されたコトに対して、そもそもコースアウトしてないっていう主張ですね。ビデオを見てみると、たしかに右フロントタイヤはギリッギリホワイトライン上にあるように見えなくもない(縁石は走路に含まれません)。
しかし、それでもクビアトの主張は苦しい感じしますね。自分がラインを外してしまっているのはサインツにも分かるはずだし、それが分かっているならスペースを空けるなりして接触を避けられるハズだ、というんですが、サインツはクビアトの居た左側に十分スペースを残しています。が、クビアトはラインを外してコースを飛び出しかけたあともスロットルを緩めず、コースに戻った直後バランスを崩して右にステアリング切って衝突したワケで。
前回のオーストリアでクビアトに追突されたアロンソは以下のようにコメントしてましたが、
1周目の1コーナーで何メートルか稼ぐために無理をする必要なんてない。でも後方にいるドライバーたちは、シートや将来を確保するために、自分の力を証明しなければならないことがある。それで必要以上に大きなリスクを冒すわけだ。
まさにこのコメントは当を得ているように思えちゃいますねぇ。この立て続けの失態で失ったものは大きいと思いますよ、クビアト。
相変わらずゴシップまみれのマクラーレン・ホンダ
マクラーレン・ホンダは天候に恵まれず(?)、バンドーンはギリギリポイント圏外の11位。アロンソは燃圧のトラブルが起きたようでリタイヤ。うむむ。シルバーストーンのパドックでは、マクラーレンの首脳陣がルノーのモーターホームを訪ねるシーンが目撃され、ホンダからの乗り換え先交渉かと言われたりもしていたようですが、トロロッソにホンダPUを載せる動きに絡んでいる可能性も指摘されてますね。
F1 Topic:ホンダが新たなパワーユニット供給先としてトロロッソと交渉か?
まー、正直マクラーレンがホンダから乗り換えるにしても、ルノーはないだろって気はしますが。確かに、ルノーってワークスチームよりもカスタマーチーム(レッドブル)のが力を持っている唯一のメーカーですけど、PUの戦闘力で言えばメルセデスやフェラーリには及ばないし、レッドブルもいい顔しないでしょう。マクラーレンにとっては正直うま味があまりないように思えて仕方ありません。
メルセデスやフェラーリは見ての通り、ワークスとカスタマーチームの戦力差が歴然として存在しております。そもそもマクラーレンは、メルセデスのカスタマーチームである限りタイトルを狙う望みは薄いと考えてホンダと組んだのであり、その経緯を考えると「メルセデスPUに戻す」という選択肢はできれば取りたくないでしょうし、まさかの「フェラーリに供給してもらう」っていうのも同様でしょう。
マクラーレンがホンダのパフォーマンスにサッパリ満足しておらず(これで満足するほうがおかしい)、あの手この手でホンダにプレッシャーを掛けているのは紛れもない事実ですが、じゃあメルセデスに乗り換えればオッケー!という話かというと、そんなワケも無いんですよね。マクラーレンはメルセデスやフェラーリの前を走りたいのですから。
みんな大好きF1-Gateは『フェルナンド・アロンソ「マクラーレンは早く来年のエンジンを決定すべき」』なんて記事を出していますが、これどこの記事だよって探してみたらデイリー・メールの以下の記事でした。
Fernando Alonso: McLaren need to make 2018 engine call | Daily Mail Online
なお、デイリー・メールとはこんな感じのイギリス大衆紙です↓。
百科事典サイトのウィキペディアは10日までに、英大衆紙デイリー・メールの記事について「全般的に信頼できない」という判断から引用を禁止すると発表した。ウィキペディアがこうした措置を講じるのは異例。
モータースポーツ専門のサイトどころか、こんなところから引用元の出典も示さず記事を引っ張ってくるF1-Gateさんマジパネェっす。(あわせて読みたい⇒ F1-Gateってそろそろ消滅しねえかな - 大須は萌えているか?)
そのほか
スターティンググリッドから7つポジションを上げて表彰台に上がったボタスも大したもんですが、それ以上に14つポジションを上げて5位入賞したリカルドはさらにスゴかったですねぇ。しかも、こちらはスーパーソフトでスタートして、ソフトスタートのボタスと同じ周回までピットストップ引っ張ってるし。まーちょっと引っ張りすぎた感もありますが。
しかし、その後再び面白いようにオーバーテイクを重ねていたのが印象的でした。フォースインディアなんて敵じゃ無いレベル。順位としてはフェルスタッペンの後ろですが、乗れていたのは明らかにリカルドの方でしたね。ドライバーズオブザデイ選出も納得です。
あ、あとウイリアムズ40周年のシルバーストーンで、低迷した予選から挽回して10位ポイントゲットを果たしたマッサは殊勲賞ものだと思います……って今日はいつもより書きすぎたのでこの辺で。。