フェラーリがレース戦略でやらかすっていうのは概ね想像した通りだったんですけど、メルセデスが勝つとは思わなかったな……。F1メキシコGP決勝。
- 決勝結果: FORMULA 1 GRAN PREMIO DE MÉXICO 2019 - RACE RESULT
- 決勝ダイジェスト: Mexican Grand Prix 2019 report & highlights: Hamilton closes in on title with supreme Mexico victory | Formula 1(動画有)
- 決勝後各チームコメント: What the teams said – Race day in Mexico | Formula 1
- 決勝後記者会見: FIA post-race press conference - Mexico | Formula 1
柔軟なメルセデスと、硬直しているフェラーリ
予選までの流れを見る限りは、メキシコと相性のいいフェルスタッペンか、フェラーリのどちらかが勝つのかなーと思ってまして、メルセデスはまあダメだろうと思ってました。……ところが、マシンの劣勢を戦略で覆すという見事なレース運びでハミルトンが勝利。いや、恐れ入りました。今回は、メルセデスでハミルトンとずっとコンビを組んでいるレースエンジニア、ピーター・ボニントン(ボノ)が不在という状況だったようですが、そんな状況でもここまで優れたレース運びのできるメルセデスの層の厚さよ。
ボノがメキシコGPを欠席したのは『医療処置を受けるため』とのことで、なんらか体に問題があったりするのかもしれませんが、それもあってかハミルトンはこの勝利をボノに捧げる、とコメントしてますね。
Hamilton dedicates strategic Mexican GP win to absent race engineer ‘Bono’ | Formula 1
今回のレース戦略のカギはハードタイヤでどれくらい走れるのか、という点に集約されていたと思うんですが、金曜フリー走行時点での見立てよりもデグラデーションが少なかったため、結果的に1ストップ作戦を採りつつも、トラックポジションを重視して早めに動いたハミルトンに有利に働いたと。ハミルトンはハードタイヤで48周走りきったんですねえ。
一度最後尾まで順位を落としつつ、6位まで追い上げたフェルスタッペンに至っては5周目に緊急ピットインを強いられて履き替えたハードタイヤで66周(!)を走り切り、その後ろで予選11番手から7位入賞を果たしたペレスも51周をハードで走行、さらにその後ろ8位入賞のリカルドはハードタイヤでスタートし、タイヤ交換を50周まで引っ張るという作戦で順位を上げてきました。
こうしてみると、タレの少ないハードタイヤをマネージメントしながらの1ストップが最速の作戦だったと言えるでしょうけど、ベッテルは「そんなの事前の確証は無かったし、メルセデスはちょっと運が良かった」みたいなコメントしてるんですね。
There are these days that it pays off, so it was certainly not all knowledge – so we didn’t get beat on strategy terms – they won, got a bit lucky, and second, I think they just had a bit more speed.
ただ、メルセデスのトラックエンジニア、アンドリュー・ショブリンのレース後のコメントを見ると、金曜の夜にマシンに大きな変更を加えた(文脈的に、路面温度が高くなる想定での変更だったんでしょう)もんだから、レースがどうなるか分からなかったんだけど、第1スティントの状況を見て路面温度が暖かくデグラーデーションが少ない=早めのピットインでも1ストップ作戦でイケるという確信があったんですね。
We didn't really know what to expect in the race as we'd made a lot of changes to the car after Friday night and the first stint was going to tell us whether we'd gone in the right direction. The warmer track seemed to help the tyres today and we could see early on that the degradation was low which brought the one stop back onto the table.
via: Andrew Shovlin : What the teams said – Race day in Mexico | Formula 1
フェラーリにとっては、ハミルトンのピットストップタイミングは「ギャンブル」にしか見えなかったんだけど、メルセデスは「勝ち目のある作戦」としてハミルトンをピットに呼び込んだというコトでしょう(まあボタスのピットストップは遅らせて保険は掛けてましたけど)。リアルタイムに状況を判断して作戦を組み立てるメルセデスと、事前の想定通りにしか動けないフェラーリ。いや、今年の両チームを象徴するかのような……。
ハミルトンはチームの戦略を疑うような無線もありましたけど、まあこれも恒例行事(?)というコトで。
フェルスタッペンはどうも……
ハードタイヤで66周を走り切るというスーパーロングランで順位を挽回したフェルスタッペン、Driver of the Dayにも選ばれてましたけど、しかし普通に考えたら勝てるレースを落としてしまった格好ですよねえ。予選でのイエローフラッグ無視もそうだし、決勝では早々にハミルトンと絡んでポジションを落としたかと思えば、今度はボタスと接触してタイヤをダメにしてしまい、緊急ピットインを強いられてしまったワケで……。
なんかちょっと、ダメなときのマックスに戻ってきてしまってませんかね?
レース後のトップ3記者会見でもフェルスタッペンの話題が出ており、ハミルトンが「意図的じゃないと思うけど、マックスは接触を引き寄せるタイプのドライバーなんだ」みたいなコメントをしたところ、ベッテルが激しく同意するシーンもあったようで。「(ルイスのコメントに)なんか付け加えることはない?」と聞かれても「ないよ、そのまんま。ホントのことだもの」と全肯定。
Lewis, you touched on this earlier. Do you treat Max differently to other drivers?
LH: Err… yep. I think every driver is slightly different. Some are smarter; some are like very smart, aggressive and some are silly with it. And so, through those experiences of racing with people, you give some more space and others you don’t have to. They’re quite respectful. But yeah, Max, it’s very likely you’re going to come together with Max if you don’t give him extra space, so most of the time you do. But as I said, in my experience, I didn’t have a lot of space to give him extra space. But I don’t think it was intentional or anything like that. It was just… he’s a magnet for those kind of things but yeah, nonetheless, I managed to keep the car together and in a straight line, fortunately.
Sebastian. Max? SV: Yes and yes.
Can you put a bit more flesh on the bone? SV: No, just copy-paste. It’s true.
少なくとも、ハミルトンとベッテルにとっては「あいつが近くに居るとヤベえよな」というのは共通見解のようです。フェルスタッペンが危険なドライバーだと言っているワケではなさそうですが、なんだろうこの微妙な言い回し。今のフェルスタッペンがメルセデスなりフェラーリなりに乗ったらどうなるのか、ってのも興味はありますが、もう一皮むけないとワールドチャンピオンは難しい……?
そのほか
レッドブルは来年のフェルスタッペンの相棒をぼちぼち決める頃合いかと思いますが、まあアルボンで決まりっぽいですよね。鈴鹿、メキシコとかなり印象的な走りを見せてますし。レッドブルに起用されて以降、4位~6位で全戦入賞しているという安定感もある。夏休み明けから見ると、なんとフェルスタッペンよりもポイントを稼いでいる。
Red Bull boss Horner: Mexican GP performance shows 'Albon is stepping up' | Formula 1
ガスリーもトロロッソに戻ってからは復調している感じしますけどね。マシンの相性なのかなあ……。ただ、与えられたチャンスを即座にモノにできないと、トップチームのシートを得るコトはできないのがF1の世界。アルボンは、今のところその期待に応えていると言えそう。
あと、2ストップ作戦の結果4位に終わったルクレールが、「チームの作戦がヘボかった」とは言わずに「もっと自分からのフィードバックを伝えてチームと一緒にベストな作戦を立てられるようにしたい」とコメントしているのが上手いなー、と思いました。ルクレールもだんだん処世術を学んできてますね(?)。
All in all, it’s a shame but if there is something I can learn from today it is to try to help the team more with my feedback from inside the car so that we can make the best call together.