予想外にいろんなコトが起きました、F1ヨーロッパGP決勝です。
決勝結果:
2010 FORMULA 1 TELEFONICA GRAND PRIX OF EUROPE - The Official F1 Website
決勝後ドライバーコメント:
European Grand Prix - selected team & driver quotes - The Official F1 Website
決勝後記者会見:
FIA post-race press conference - Europe - The Official F1 Website
天国と地獄
レッドブルの2台にとっては非常に対照的なレースとなりましたね。ベッテルはスタート直後はヒヤっとしましたが、ポールポジションから安定してレースをリードし優勝。まだ今期2勝目だったんですねぇ。一方のウェバーは肝が冷えるような大クラッシュ。前走車のリヤタイヤにフロントタイヤが乗り上げて宙に舞うという、フォーミュラカーに於ける最も危険なパターンの事故でした。
このパターンの事故として有名なのは1982年のジル・ヴィルヌーヴの死亡事故などが思い浮かびますが、ウェバーは無傷で済みました。現在のマシンの安全性、そして運が味方した格好。ただ、宙を舞う方向がまずかったりすると、無傷で済むはずありませんからね。ホント無事で良かったです。
この事故の原因として挙げられるのは、前を走っていたロータスとレッドブルのマシンでは大きくブレーキングポイントが違っていたコト。ウェバーにしてみればコヴァライネンのブレーキングがあまりにも早く、避けるヒマが無かったというコトでしょう。ウェバー曰く、「コヴァライネンがブレーキングポイントの80メートルくらい手前でブレーキングした」そうで、コヴァライネン曰く「彼(ウェバー)はブレーキングポイントを見逃したんだと思う」そうなので、その意識の差は相当なモンです。
はからずも「速いマシンと遅いマシンのペースの差がありすぎて危険」という、今シーズンが始まる前に言われていたコトが今になって現実のモノとなってしまったワケなんですけども。しかしロータスの予選タイムは、例え107%ルールが適用されたとしてもそれに引っかかるほど遅くは無いので、こればっかりはドライバーが意識的に注意するしか無い問題ではあります。ウェバー自身、ポジションを気にするあまり焦りがあったのかもしれません。
しかしウェバー自身ショックを引きずってはいないようで、「Bloody hell, let’s get on with it.(超訳:クソッタレが、次いってみよー)」なんて公式サイトでは一部伏せ字になっちゃうようなコメントするくらい元気なようです。
可夢偉フィーバー
そしてこのレースのキーマンとなったのが、誰あろう小林可夢偉でした。前戦のようにジャンプスタートとはならず、ポジションキープの走りをしていましたが、ウェバーのクラッシュでセーフティカーが入ったあと、ただ一人ピットに入らず走り続けたのが大正解でした。セーフティカー解除直後にすぐバトン達に抜かれちゃうんだろうなー、と思ってたんですが、オーバーテイクポイントが少ないコースってこともあり3番手のままポジションキープ。これが結果としてハミルトンを手助けするコトにもなるんですが。
結果として可夢偉を先頭として大規模なドライビングスクール状態が発生してしまっており、あとでピットに入らねばならないコトを考えるとポイント獲得は厳しい状況。ただ、燃料が少しずつ減ってきた状態から可夢偉のペースがみるみるアップし、しまいには先を行くハミルトンとも遜色ないタイムを叩き出す始末。これがザウバーのタイムか、とタイミングモニター見ながらビックリ。ちなみに最終的に可夢偉は全体の6位となるファステストラップをマークしてます。
うまくタイヤをコントロールしながら後方とのマージンを稼ぎ、また10番手を走行していたヒュルケンベルクがリタイヤしたこともあり、残り4周でピットストップ後も9番手のポジションで復帰。ポイント獲得できるなんて上出来、と思ってたら、タイヤのグリップがあるコトを利用しアロンソとブエミまでオーバーテイクし、なんと7位でフィニッシュ。ふつー9番手の時点でポジションキープかな、と思うんですが、やってくれちゃいました。
前戦カナダでのミスを帳消しにして余りあるほどの活躍をした可夢偉、いやはやお見事でした。正直全然期待してなかったんですが、レースのアヤで生まれたチャンスを存分に活かしきった走りにはただただ唸らされるばかり。去年のアブダビの時もそうでしたが、ここぞって時に見せるレースセンスはスゴイものがありますね。今後また、今回のような走りが見られるコトを期待させていただきます!
セーフティカーによる混乱その1
あとはもう風物詩ともなっているかのような、セーフティーカー時の混乱が。まずはハミルトンがコースインしてくるセーフティカーをオーバーテイクしたとして、ドライブスルーペナルティ。しかし可夢偉との間に大きなマージンがあったため、結果的にポジションキープできちゃったんですけど。
これに対してセーフティカーの後ろに付いたアロンソにしてみれば、全てが最悪のタイミング。後ろの集団は真っ先にピットインして追いついてきちゃうわ、先に行ってしまったハミルトンは脱落しないわ。そりゃ「人為的に操作されたレースだ」とブチ切れたくなる気持ちもわかりますけど。しかしこれはもうタイミングのアヤとしか言い様がないですね。
「アロンソが操作されたレースだって言ってますけど、どう思います?」と聞かれたハミルトンは「うーん、彼はたぶん感情的な反応をしちゃってるんだと思うよ・・・」とのコメント。アロンソにしてみれば「クキィィィーーー」って感じでしょうね。母国レースだけに尚更。ハミルトンがもしペナルティ上等でセーフティーカーをパスしたんだとしたら、かなりの策士ではあります。
セーフティカーによる混乱その2
もう一人不満タラタラなのがミハエル様。セーフティーカーが入って少し遅れてピットインしたところ、出口がレッドシグナルで出るに出られず、順位を落としたコトにブチ切れています。これ、問題となるのはレギュレーションの解釈で、たぶんスポーティングレギュレーション40条10にある、
Whilst the safety car is in operation, competing cars may enter the pit lane, but may only rejoin the track when the green light at the end of the pit lane is on. It will be on at all times except when the safety car and the line of cars following it are about to pass or are passing the pit exit .
via: FORMULA ONE SPORTING REGULATIONS
「セーフティカーとそれに続く車列がピット出口を通過しようとしている、もしくは通過中以外は常にグリーンライトが点灯している」ってところが問題。確かにミハエルがピット出口に来たときには他のマシンがピット出口を通過しているんですが、ロス・ブラウンのコメントを借りれば「レギュレーションではセーフティカーの後ろに続く車列が形成されるまでレッドライトにはならないはずだ、ミハエルがピットに入ったときにはまだ車列が形成されて無かったじゃん、ハミルトンとコバヤシなんて18秒以上離れてたぜ」というワケです。
この辺も言葉の解釈の問題だと思われますが・・・モナコの時と同じような感じがしちゃいますね。レギュレーションではっきり車列の定義を決めるしか無い?ちなみにスポーティングレギュレーション40条9には「レースリーダーはセーフティカーと10車身以内の差を保ち、残りのクルマは可能な限り車間を詰めて隊列を維持しなければならない」としています。
セーフティカーによる混乱その3
とどめはレース後発表された、9台のマシンに対する5秒ペナルティ。なんの理由だったのかよくわからなかったんですが、セーフティカー中のラップタイム制限超過というコトらしいです。2010年から付け加えられた、セーフティカー出動中は指定するラップタイムより遅く走らなければならない、って項目ですね(スポーティングレギュレーション40条7)。
ヨーロッパGP決勝レースでは、セーフティカー導入時の速度違反(ラップタイム制限)を超過したとして、実に9名のドライバーが審議対象になっていたが、結局レース結果に5秒加算という極めて軽いペナルティで結着した。
場合によっては可夢偉の順位がさらにハネ上がる可能性もあったんですが、なんだ5秒だけかという話。ていうかこのケースでのペナルティって初めてでしたっけか。対象となったマシンは皆セーフティカーインが知らされた直後にドタバタとピットに駆け込んだグループなので、いきなりそのタイミングで指定タイムより遅く走れって言われても無理な話でしょうね、そりゃ。不可抗力の要素が強いケースだから軽くしたよ、というコトになるでしょうか。9台まとめてペナルティ、なんてかなりレアケースですよねぇ。
今回はセーフティーカーまわりのレギュレーションがいろいろ気になったので久しぶりにスポーティングレギュレーションを見てみたんですが、見てて疲れますねコレ・・・。ちなみに最新のスポーティングレギュレーションはFIAのサイトにあります。英語です。読めません。いや無理矢理読んでますが解釈間違ってたらごめんなさい。
FIA Formula One World Championship
ちょっと古いのでよければ、JAFのサイトに日本語訳があります。このエントリ書いている現在だと2009年版。2010年に追加されたレギュレーションでなければ、こちらのが良いですね。
それから
なにげにバリチェロってすごくね?ていうか去年といい、このコースと相性良いのかなー。