大須は萌えているか?

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雑誌の衰退は書店の衰退に直結する、という話

「まず雑誌は、コンビニエンスストアでさえも売れなくなった。当然、書店でも売れていない。増数したくても、配本する書店が見当たらないという状況だ。アマゾンなどのネット書店くらいしか、もう配本が増える要因はないのかもしれない。それに、売れないからといって、ある大手取次会社のように雑誌の返品上限を決めて、書店ごとの返品数に応じて、次からの入荷部数を削るというやり方は、手荒い気がする。確かに、この取次は主要取引書店をライバルの会社に奪われてしまったにもかかわらず、仕入れ部数は多いし、返品も多かったのだけど……」

via: 出版社、書店、取次不況の実態…新刊の7割が返品、コンビニでも雑誌売れない (Business Journal) - Yahoo!ニュース

元書店員(かなり昔の話ですが)としては、こんな記事見るといよいよ書店やべーなと思ったりしちゃいますね。

雑誌って正直書店員的には非常に鬱陶しい商品でして、判型(大きさ)がふつーの書籍よりでかいので検品して店頭に並べるのも面倒だし、付録付きの雑誌は毎朝ゴムかけたり紐で縛らなきゃいけないし、売り場の場所やたら取るし(デアゴスティーニのバインダー付きとか殺意湧くレベル)、返品の量も多いから梱包めんどくさいし。

それでも、書店にとって雑誌ってそれはそれは重要な商品なんですよ。特に郊外型の店舗にとっては。その証拠に、郊外の書店は店内に入ってすぐのところに雑誌棚があるでしょ。都市部にあるジュンク堂とか丸善はまた別の世界なんですが。都市部は人が多いので店舗のスケールメリットを活かせるし、インテリ層が多いため文芸書や専門書も売れやすい傾向にあるので、雑誌に頼らなくていいんですよ。

雑誌というのは定期刊行物、つまり必ず一定のスパンで発売される出版物のコトを指します。月に一度出るなら月刊誌、週に一度出るなら週刊誌てな感じで。雑誌っぽい体裁だけど定期的に刊行されないものは「ムック」と呼ばれますね。

んで、基本的に雑誌を読む人というのは継続的に買い続けるコトが多いワケです。特集が面白そうな時だけ買うという人も結構いますが、割合としては毎号買う人が多い。雑誌を毎号買うってコトは、雑誌が発売されるスパンで繰り返し来店してくれるってコトでもありますよね。つまり、雑誌というのは書店にとってリピーターを獲得するための強力な商品となるワケです。小売業にとって、リピーターの比率を増やすコトの重要性は言うまでもないところ。

私が以前郊外型の書店に勤めていたときの感覚でいうと、店全体の売上げの中で雑誌が占める割合は30%くらいでした。以下の記事など見ると、概ね間違ってない感じかな。

本屋の場所、大きさ別・雑誌やコミックの売上全体に占める割合をグラフ化してみる:Garbagenews.com

雑誌の売上げが減っているとのことなので、この割合も今後変化していくのかもしれませんけどね。ただ重要なのは、雑誌はリピーターを獲得するための商品でもあるってコトです。

書店としては、雑誌棚のすぐ横にベストセラーコーナーやら企画コーナーやらを用意して、「雑誌を見るついでにこちらもどうぞ」とお客さんを店のさらに奥深くに引きずり込もうと画策するワケですよ。雑誌目当てに店舗に足を運んで貰い、そこから他の本にも興味を持って貰うという流れ。でも、雑誌が売れずリピーターが減ってしまうと、そもそも定期的にお客さんが来店してくれなくなり、結果他の商品の売上げまで下がるコトが懸念されるワケです。単に雑誌の売上げが減るってだけの話じゃ済まなくなる。

じゃあ雑誌の代わりになりそうなモノといったら何かつったらねぇ……ある程度定期的な刊行が見込めるといったらコミックですよね。でも週刊連載のコミックでも2~3ヶ月に一冊くらいのペースですもんねぇ。あと雑誌に比べると間口が狭いし。雑誌の代わりになるかというと厳しいところ。

正直、私も雑誌全然買わなくなりましたけどね。たまに買うのは、『Racing on』のF1特集号みたいな自分の趣味の分野を思い切りディープに掘り下げたものくらい(あ、これムック扱いか)。こういうのは保存しておきたいので。ふつーの情報誌的な雑誌って、基本的に「読み捨て」じゃないですか。一度読んだらポイ。でも、今って「ちり紙交換」とかも来なくなったし、古雑誌を捨てる手間が結構バカにならないんですよね。それに、読み捨てる程度の情報ならWEBで拾えちゃいますしね。なので、「保存しておきたい」と思えるモノしか買わない。

でも、やっぱり書店にとって雑誌というのは捨て置けない商品なのです。雑誌がダメになると、郊外の小中規模の書店は店ごとダメになる。実際、そうなりつつありますけど。近い将来、書店というのは都市部にある超ドデカい売り場面積を持つところだけしか残らなくなるのかもしれません。

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