何年かに一度はあるよねこういうレース……いやしかし、驚きの連続でしたね。F1ドイツGP決勝。
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メルセデス ああメルセデス メルセデス
2年連続開催のドイツGP、メルセデスがタイトルスポンサーをつとめ、自身のモータースポーツ活動125周年と、F1 200戦目を祝う節目のレース。予選ではハミルトンがポールポジションを獲得する一方でフェラーリはメカニカルトラブルで自滅、こりゃもう決勝ではハミルトンがこの記念すべきレースに華を添える勝利を飾るんでしょう……と思っていたんですが。
終わってみれば勝利どころか、表彰台にメルセデスのドライバーがひとりも居ない。それどころか、アルファロメオの失格が無ければ、2人ともノーポイントでレースが終わるところでした。近年のメルセデスにとっては信じがたい、破滅的な結果。背景にスリーポインテッドスターがあしらわれた表彰台に上ったのは、ホンダのドライバー2人にフェラーリのドライバー1人……いやー、こんな皮肉なコトってあるんですねえ……。
まー、とにかくトリッキーな天候がレースを終盤まで引っ掻き回し続けた格好でしたね。
フルウェットでスタートして、しかし早々に皆インターミディエイトに履き替えて、だんだんドライ部分が目立ち始めてインターで走り続けるのが辛くなってきたなーっていう頃合いにマグヌッセンがドライタイヤに履き替えるギャンブルに出て、割と走れてるもんだから上位陣も後に続き始めて、ドライ勝負か……と思いきやまた強まった雨により足をすくわれクラッシュするドライバーが相次ぎ、また皆インターに戻して、終盤ようやく雨が一段落してソフトタイヤ勝負になるという、もうカオスとしか言い様の無い展開。全チーム合わせてのピットストップの総数は、78回に上ったそうな。モナコの周回数かな?
78 pits.... 78!#Fit4F1 #GermanGP pic.twitter.com/cbhuQXMvU2
— Pirelli Motorsport (@pirellisport) July 28, 2019
ハミルトンは最初にドライタイヤに履き替えたタイミングが28周目と遅く、これがまさに最悪のタイミングでした。結果として、履き替えて出て行った周の最終コーナー手前でコースアウト、フロントウィングを破損して緊急ピットインをする羽目に。まったく準備が出来ていなかったメルセデスピットは大混乱、あそこまで慌てふためくメルセデスのクルーは初めて見たような……。
ボタスは終盤まで表彰台を狙える位置には踏みとどまっていたものの、3位ストロールを追いかける場面でまさかの単独クラッシュ。ハミルトンもスピンしていた1コーナーでのクラッシュでしたが、当てずに立て直したハミルトンとは対照的に、ボタスは豪快にやっちゃってましたね。
記念のマシンカラーリングに、チームクルーの衣装まで特別仕様という凝り様だったのに……ってそういえば、今回の特別カラーの元ネタになっていた、「85年前のレースで最大重量規定をクリアするために白い塗料を剥がして、アルミ剥き出しになったクルマで勝利した」っていうシルバーアロー誕生のきっかけとなったという逸話も、実は作り話だという指摘をしている記事を見かけました。
The paint-scraping myth: Why the story behind Mercedes' special livery isn't true · RaceFans
なんでも、シルバーアロー伝説の発端となったとされる1934年のアイフェルのレースには、最大重量規定そのものが適用されていなかった、と。おまけに、塗料を剥がす前の白いメルセデスの写真が1枚も見つからないんだそう。また、当時メルセデス・チームの監督を務めていたアルフレード・ノイバウアーが、この最大重量規定について語っている記事は存在するものの「アイフェルのレースで塗料を剥がした」とは一言も語っていないようで、どうも他のエピソードがごっちゃになって、あとから「メルセデスの逸話」として付け足された疑いが強い模様。
なので、メルセデスもあくまで「伝説(legend)」だと言っているのだ、と……って、それならちゃんと「※この物語はフィクションです」ってマシンのどこかに書いておいてくれないと……。
予想外すぎる表彰台
にしても、荒れた展開になればフェルスタッペンの優勝はあるかもな、と予想していた人は結構多かったんじゃないかと思いますが、2位に最後尾スタートのベッテル、3位になぜか(失礼)トロロッソのクビアトが入るなんて予想できた人は居ないんじゃないでしょうか。まさか、トロロッソが再び表彰台に上る日が来るなんて思ってもみなかったよ……。
ホンダエンジンを搭載する異なるチームが一緒に表彰台に上るのは、マクラーレンのセナとプロスト、そしてロータスのピケが表彰台に上った1988年のオーストラリアGP以来だそうで……まさか、ホンダ黄金時代以来の記録がここで生まれるとは。しかもクビアト14番手スタートですよ。
クビアトの表彰台は、45周目に他車に先んじてソフトタイヤにスイッチしたこと、これに尽きますね。この時点で他にソフトに交換していたのはストロールとマグヌッセン、他のクルマがドライにスイッチしたのが46~47周目にかけてなので、この1周の先行が大きなアドバンテージに繋がりました。44周目に真っ先にソフトにスイッチしたストロールも、表彰台に手が届く寸前でしたしね。
レース前半、マグヌッセンのギャンブルに端を発する25周目~29周目にかけての「ドライで行こう!……いや、やっぱダメだ!」騒動、そしてセーフティカー中の44周目にストロールがドライにスイッチしたことが呼び水になった45周目~47周目の「今度こそドライだ!」という流れがレースの行方を大きく左右した感じですね。どちらも、失うものが無いポジションに居たドライバーがきっかけを作ってます。
ヒュルケンベルグのクラッシュがきっかけでセーフティカーが出動した41周目には、フェルスタッペンやベッテル、ストロールはインターから新しいインターへと履き替えているワケですが、メルセデス陣営が動こうとしなかったのは先のピットストップでのトラウマがあったからでしょうか。ボタスはアルボンに対してポジションを失うだけで済んだハズだったんですけどね。
このとき、ベッテルは集団の中にいたハズなんですけど、12周オールドのインターを履き替えてるんですよね。これはこれで思い切ったな、という気もしますけど。ベッテルはこのタイヤ交換で6位から10位まで順位を下げ、そこから順位を上げたあと、ソフトタイヤへの交換でもう一度9位まで順位を下げたものの、そこから再びガシガシと巻き返して2位フィニッシュ。作戦の勝利というよりは、フェラーリのパワーを最後の最後で見せつけた感じもします。
表彰台に上ったメンバーが皆トロロッソ、レッドブルに在籍経験があるというコトで、記者会見では3人がそれぞれヘルムート・マルコに関する思い出を語る場面もあったようで。フェルスタッペンが「彼は当時まだかなり若かった僕をトロロッソに入れるというギャンブルをしたんだ、いやまだ僕は若いけど、当時はもっと若かった」みたいなコメントをしたら、ベッテルとクビアトが「いやお前おっさんやろ(意訳)」とツッコむ心温まるシーンも。
MV: Yeah, of course, we are dealing with Helmut every day still, so for me, of course he took the gamble of putting me in Toro Rosso when I was still very young. I’m still young – but back then I was very young.
SV: You’re not very young any more…
MV: Getting old?
SV: Older.
MV: Older, yeah…
DK: You look quite old…
いやしかし、この面子だとこういうやりとりも新鮮ですね……!
そのほか
えーと、あとなにを書きたかったんだっけ……。
あ、アルファロメオのペナルティを受けての繰り上がりではありますが、ウィリアムズのクビサが入賞するというこれまた予想のナナメ上な結果が出ておりますね。ラッセルの前にクビサがいた、というのも驚きではありますが、これラッセル悔しいだろなあ。ウィリアムズにとってはとても貴重な今季初ポイントですが、コンストラクターズ9位のアルファロメオとはあと25ポイント差あります。……大変ですね。
ハースは7位と8位のダブル入賞という、チームとしては今季ベストと言える結果を残したものの、またチームメイト同士での危ないシーンが見られたコトもあり、シュタイナーさんのコメントも控えめですね。マシンのスピードが反映された結果ではない、というのもあるんでしょうけど。
リタイヤに終わったヒュルケンベルグは残念でした。今回こそは初表彰台か!?と思っただけにねー。こういうコンディションのヒュルケンベルグは速いし。ハミルトン、ルクレールも餌食になったターン16には勝てなかったよ……。
German GP crash 'hard to swallow' says Nico Hulkenberg | Formula 1
そういや、レース終了後の月曜日、次戦のハンガリーに向かうチームのトランスポーターが事故を起こしたっていうニュースも出ていますけど、これ大丈夫なんでしょうか……。とりあえず、運転手には大きな怪我は無いようなので、そこは一安心。
Renault Formula 1 team truck in crash on way to Hungarian GP - F1 - Autosport
悲喜こもごも、いろいろありすぎて良く分からなくなってきたのでこの辺で。とにかくスゴいレースでした。ハンガリーもレッドブル・ホンダは得意そうだけど、さてどこまでいけますか?