大須は萌えているか?

gooブログからこっちに移動しました

F1[20] トスカーナGP 決勝

ごくまれに「なんじゃこりゃぁぁあ!」と松田優作ばりに叫びたくなるレースがありますが、今回がまさにそれでしたね。F1トスカーナGP決勝。

なぜ多重クラッシュが起きたか

先週のモンツァで久しぶりに決勝中に赤旗が出る展開となり、珍しいコトもあるもんだ……と思っていたら、今度は決勝の最中に2度も赤旗が出る展開に。なんなんですかこれは。コース幅が狭い区間が多く中高速コーナーが連続するサーキットなだけに、ある程度荒れた展開は予想していましたが、ここまで荒れるとは想像してなかったぞ。

特にビックリしたのが7周目に発生した多重クラッシュ。1周目に発生したマルチクラッシュでセーフティカーが出動し、そのセーフティカーが引っ込んでさあリスタート、というときに後方集団で発生したクラッシュですね。最初なんでこんなクラッシュが発生したのか理解できませんでしたし、その後流れたジョビナッツィやラティフィのオンボード映像を見ると、前方のマグヌッセンらが減速しているところにフルスロットルで突っ込んで行っているという有様で、思わず「こいつらアホか」と思ってしまったりしたのでした(失礼)。

こりゃジョビナッツィとラティフィは厳罰だろ、と思っていたんですが、レース後の裁定では特定のドライバーに対するペナルティは無し、その代わりに12人という大量のドライバーに警告が出されるという異例の結果となりました。つまり、この時点で4番手を走っていたアルボンから、クラッシュに巻き込まれた15番手のサインツまでの全員ですね。

「このインシデントの根本的な原因は、上記ドライバーたちによる最終コーナーからピットストレートにかけての一貫性のない加減速にあったとスチュワードは結論づける」と発表された声明には書かれている。「スチュワードはこのサーキットのコントロールラインの位置がチャレンジをもたらすこと、またドライバーたちがリスタートでアドバンテージを得ようとすることを認識している」

「しかしながら、このインシデントはリスタートの状況には十分な注意が必要であることを示すものであり、集団の後方へ行くに従って、極度のアコーディオン効果が劇的に加速したことを注記する必要があることを示している」

via: リスタートの多重衝突で12人に警告、ペナルティはなし | Formula 1 | F1ニュース | ESPN F1

トップ集団の後ろで固まりになっていたドライバー全員が注意すべき事例である、というワケです。スチュワードのコメントにある『このサーキットのコントロールラインの位置がチャレンジをもたらす』というのは、ムジェロサーキットが第1セーフティカーライン(ピットエントリーのライン)とコントロールラインがかなり離れているコトを指しているみたいですね(ムジェロのコントロールラインはピット出口に近いくらいの位置にある)。

セーフティカーのランプが消灯してこの周でセーフティカーランを解除しますよ、と合図された際、セーフティカーラインを過ぎた時点でセーフティカーを追い越してもよい状態になりますが、走路上の車両はまだ追い越し禁止。そしてコントロールラインを過ぎた時点で再び追い越し可能となるワケですが、ここでコントロールラインを通り過ぎるまでの間のペースはラップリーダーに決定権があります。今回の場合はボタスですね。

なので、セーフティカーラインを過ぎてもまだ蛇行しながらタイヤを温めていたボタスの行動は、レギュレーション上なんの問題もありません。それにボタスは急減速をしたりしているワケでもなかったですしね。問題は、ジャストタイミングで加速したいという気持ちが先行してしまい、まだボタスがコントロールラインを通過していないタイミングで全開加速を始めてしまったドライバーが後方集団に居た、というコトです。

んでこれ、F1公式サイトにある動画なんかを観ると、ボタスらがセーフティカーラインを通り過ぎて少し後からやってくる集団がややばらけているコトがわかります。9番手だったクビアト、そのすぐ後ろのオコンが前のペレスとノリスに少し離されており、その後ろのラッセルはさらに大きな間隔を空けています(以下の動画の1:35あたり)。

ANALYSIS: What caused the massive Tuscan Grand Prix crash?(動画)

んで、間隔が空いた分、クビアトとオコンはアクセル踏んで加速していくワケですね。すると、さらに後ろで大きな間隔を開けていたラッセルは、ここで踏んでいかないとリスタートで出遅れると思ってアクセル全開で加速していっている感じ。となれば、当然うしろのマグヌッセンらも加速していくワケですが、この時点でボタスらはまだ全然コントロールラインに届かない位置に居ます。

クビアトとオコンは前のノリスに追い付いてしまったので減速し、そうなると後ろから勢いよく加速してきたラッセルは結構な減速を強いられます。ラッセルの後ろにくっついていたマグヌッセンもその動きに倣う形になり、さらに後ろからラティフィ、ジョビナッツィ、サインツが縦一列でやってきていたもんだから、ラティフィはギリでマグヌッセンを避けるコトに成功するも、いきなり目の前にマグヌッセンが現れる格好になったジョビナッツィはひとたまりも無く追突、そこにサインツも突っ込んでラティフィも巻き込まれた、みたいな格好ですね。

オンボードで見るとマグヌッセンはまだ余裕を持って減速出来ている感じですが、ラティフィがギリギリのよけ方をする形になったので、一直線にならんで前方が見えていなかったジョビナッツィとサインツはもう避けるコトができないタイミングでした。

2020 Tuscan Grand Prix: Chaotic restart at Mugello sparks huge four-car crash(動画)

この状況を見ると確かにラティフィやジョビナッツィだけが悪いとは言い難い状況で、大量警告の理由もそれなりに理解できなくは無いですが、しかし12人にも出すのもどうなんだろうね……?

この件についてハミルトンは、セーフティカーがライトを消すタイミングが遅すぎると指摘していますが、マイケル・マシはこれを一蹴しているようで。セーフティカーのライトを消灯した位置からコントロールラインまでの距離は、他のサーキットと変わらないというワケです。さらに、「ここには世界で最も優れた20人のドライバーがいる、そして先のF3レースでも非常によく似たリスタートの状況があったが、事故もなく切り抜けられたんだ」みたいなコメントもしてますね。

“Simply put, they can criticise all they want,” he said. “If we have a look at a distance perspective from where the lights were extinguished to the control line, it’s probably not dissimilar, if not longer, than a number of other venues.

“The Safety Car lights go out where they do, the Safety Car is in pit lane, we have the 20 best drivers in the world, and as we saw earlier in the Formula 3 race those drivers in the junior category had a very, very similar restart to what was occurring in the F1 race and navigated it quite well, without incident.”

via: Restart rules don’t need reviewing, says Masi as 12 drivers warned for their part in Mugello chaos | Formula 1®

F3ドライバーがちゃんとやれているコトを、お前らF1ドライバーができないとは言わせねえぞ?というワケです。さらには、追い越し可能になるコントロールラインの位置がピットレーン出口近くにあるっていうコトは金曜夜のドライバーズミーティングでも説明していると。そこまで言われちゃうと、ドライバー側はなかなか言い返す言葉が出ないかも。

ひょっとしたら次戦ロシアでもこの件が議論の対象になるのかもしれませんが、これFIA側が折れる可能性は低そうだな……。

ハミルトンの記録続々

クラッシュの話が長くなりすぎた。

ボタスが一度はトップに立つ展開があったものの、結局勝利したのはハミルトン。やっぱり役者が違うなあ。しかし、予選後の記者会見ではフィジカルには問題無い的な感じだったのに、決勝レース後はかなりクタクタになってましたね。赤旗による中断が2回もあったから楽だったのでは、と思っちゃいますけど、考えてみたら一番プレッシャ-の掛かるスタンディングスタートを1レースで3回もやったんだから、そりゃ疲れるか。「1日で3回レースやったみたいだ」ってコメントがそれを表してますね。なお、過去に1レースで3回のスタンディングスタートが行われたのは、1987年のオーストリアGPと1990年のベルギーGPの2回のみで、どちらも1周目に2回赤旗が出たそうな。今回のように別々の周回で赤旗が出てスタンディングスタートが行われたのは史上初ってコトになりますね。

そしてハミルトンはこのレースで222回目のポイントフィニッシュとなり、これはミハエル・シューマッハを上回り、F1最多記録。さらに42戦連続完走となり、これはニック・ハイドフェルドの持っていた記録を上回りF1最多。てか、連続完走記録ってハイドフェルドが持っていたのか……。そして次に優勝すれば、ミハエル・シューマッハの持つF1最多勝記録・91勝に並ぶコトになります。ハミルトン、記録づくめの年になりそうですね。

Tuscan GP Facts & Stats: Hamilton just one win shy of Schumacher record | Formula 1®

そのハミルトン、今回のレース前とレース後には「Arrest the cops who killed Breonna Taylor」と書かれたシャツを着ていましたが、これ以下の事件のことを指しているんですね。

3月13日、救急救命士のブリアンナ・テイラー(Breonna Taylor)さんとその交際相手が就寝中に警察が踏み込み、テイラーさんに8回発砲した。

事件について明らかにしたテイラーさんの弁護士、ベン・クランプ(Ben Crump)氏によると、無警告で破壊器具を使用し、ケンタッキー州ルイビル(Louisville)のアパートに突入。しかし警官らが持っていた住所の情報は不正確で、警察が行方を追っていた容疑者はすでに拘束されていたという。

テイラーさんの交際相手は現在も拘束されている一方、テイラーさんの死をめぐる容疑で訴追された警官はいない。

via: 米でまた警官が黒人を射殺、誤った住所に踏み込み8回発砲 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

なので、このテイラーさんを殺した警察官を逮捕せよ、というワケです。そして、先に行われたテニスの全米オープンで優勝した大坂なおみがテイラーさんの名前入りマスクをしていたんですね。

大坂なおみ、マスクに銃撃された黒人の名 全米テニス - 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタル

記者会見でハミルトンは「ナオミは素晴らしいことをしている」みたいなコメントもしており、それに共鳴しての行動だったんでしょう。

Hamilton said: "We can’t rest. We have to continue to raise awareness with it. And Naomi’s being doing amazing, so huge congratulations to her. She is an incredible inspiration with what she has done with her platform.

“We just have to continue to push on the issue.”

via: Lewis Hamilton wears T-shirt highlighting police brutality in the US - BBC Sport

にしても、フジテレビの中継だとこういうハミルトンのアピールには絶対に触れないんですけど、なんかそういうルールがあるんでしょうか。「Black Lives Matter」とは絶対放送では言わないし、「レイシズム」って言葉も使わないですよね。毎戦、国際映像で「END RACISM」のVTRは流れてるんですけど。迂闊に触れると抗議してくるような人が居るから、とか?そうやって、腫れ物扱いするのもなんか違う気がするんですけどねえ。毎回露骨に避けるから、逆に気になっちゃうんだよな……。

そのほか

あとちょっとでポイントを逃したラッセル、無念でしたね……。しかも10位入賞したベッテルが、「ラッセルがポイントに相応しい」と讃えるコメントをしているのがまた。

‘He really deserved a point today’ – Vettel feels for Russell after Williams driver misses out at Mugello | Formula 1®

予選でも一瞬コースアウトしながらアクセルを戻さないガッツを見せたラッセル、サバイバルの様相を見せた今回のレースはまたとないポイントゲットのチャンスだっただけにね……。レース後のインタビューでも落胆を隠せない様子で、観ているこちらまで悔しい気持ちに。彼の才能は明らかなので、どこかでメルセデスワークスに登用してあげて……。

ホンダ勢は1周目でガスリーとフェルスタッペンが消えるという最悪の状況に陥りましたが、アルボンが初の表彰台に登れたのは良かったですね。リカルドをオーバーテイクしたあともきっちり押さえ込んだし。今まで表彰台に手が届きそうなときに限ってハミルトンに邪魔されてましたが、今回は相手がリカルドで良かった(?)。本人も、オーバーテイクする際には過去の接触がフラッシュバックしたってコメントしてますね。しかしこれで表彰台には登れたので、さらに一皮むけた走りを見せてくれる、かな?