2年ぶりの開催となる伝統の市街地コース、観客もある程度入れているようでちょっと羨ましいな……F1モナコGP予選。
- 予選結果: FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2021 - QUALIFYING
- 予選ダイジェスト: 2021 Monaco Grand Prix qualifying report: Leclerc beats Verstappen to sensational Monaco pole as late crash prevents others improving | Formula 1®
- 予選後各チームコメント: What the teams said – Qualifying for the 2021 Monaco Grand Prix | Formula 1®
- 予選後記者会見: FIA post-qualifying press conference - Monaco | Formula 1®
予想外の予選
極めて特殊なコースであるモナコ、ここはメルセデスが必ずしも得意とは言えないコースのひとつであるのは間違いないですよね。予選で分があるのはレッドブル、また性格がモナコと似ていると言われるバルセロナのセクター3で速かったフェラーリも上位争いに絡むのではないか、なんてコトは言われてましたが、まさかフェラーリがポールポジション獲るとは思わなかったし、ましてハミルトンが7番手に低迷するなんて予想外もいいとこでした。
フェルスタッペンらが最後のアタックに入る直前にルクレールがクラッシュ、赤旗で終了となってしまったので水を差された感は否めないのですが、こういう事態が起きうるコトは当然想定されるべきだし、それを見越して早めにタイムを出していくか、路面のインプルーブメントに賭けて最後の最後にアタックを狙うのかっていう駆け引きもモナコ予選の醍醐味であるのも確かです。フェルスタッペンは後者に賭けて負けた、というだけの話。
トップ3記者会見において、「インディカーでは予選中にドライバーの過失で赤旗が出た場合、そのセグメントでのベスト2ラップ分のタイムが取り消されるルールがあるが、F1にもこうしたルールがあったほうが良いと思うか?」みたいな質問が投げかけられていますが、フェルスタッペンは「タイムを取り消すべきじゃない」とコメント。フェルスタッペン自身も同じところでクラッシュやらかした経験があるってのもあるかもしれませんが、まあタイム取り消しのルールがあると特にモナコのようなコースでは皆プッシュするのを恐れるようになっちゃうかもしれませんしね。ルクレールも故意にクラッシュするようなコトはしないでしょうし。
まあ、過去にラスカスでマシンを「駐車」した人はいましたけど、あの時はポール剥奪されましたしね……図らずも同じフェラーリでしたが……。
今年のモナコは各ドライバーともタイヤの熱入れに相当苦労していたようで、それがこの珍しい順位を生んだ感じでもありますね。メルセデスはタイヤの熱入れをし辛いクルマと言われているだけにその影響がモロに出た感じですが、しかしハミルトンより熱入れが下手(失礼)と言われるボタスが3番手に入って、ハミルトンがそのボタスより0.5秒近く遅いというのはなんとも奇妙な感じです。アルファタウリのガスリーにも負けちゃってますしね。
木曜のFP1・2はそこまで悪くなったように見えましたが、どうも土曜日に向けて行ったセッティング変更が完全に裏目に出ちゃったみたいですね。それでセットアップが振り出しに戻っちゃって、立て直す暇も無いまま予選に突入してしまったと。
逆に、木曜日のマシンの仕上がりに満足いかなかったボタスは土曜日に良いセットアップを見つけるコトができて、もうちょっとでポールを狙えるくらいのところまでクルマを仕上げるコトが出来たという。メルセデスとしては極めて珍しい事態ですねえ。
チャンピオンシップリーダーのハミルトンが予選で沈んだというコトは、フェルスタッペンにしてみればポイント差を一気に詰めるまたとないチャンスでもありますが、あとは決勝でトップを奪えるかどうかってところですよね。ルクレールは懸念されたギヤボックスのダメージはほとんどなく、無交換で決勝に出られるようなのでポールポジションは変わらず。スタートで前に出るコトも難しいモナコなので、あとはピットでの逆転に望みを託すといった感じでしょうか。ルクレールの地元優勝ってのも見てみたいですけどね。
ルクレールは今回ルイ・シロンをトリビュートしたヘルメットを被ってますが、シロンがモナコGPを制したのは1931年(まだF1が生まれていない時代)なので90年前ってコトになるんですね。その時シロンが乗っていたのはブガッティであり、ブガッティ自体は第1回大会の1929年からこの1931年までモナコGPを3年連続で制覇。そんな時代もあったんですねえ。数年前に発売された1500馬力の変態スーパーカー、ブガッティ・シロンはこのルイ・シロンから命名されてますが、今現在のブガッティはモナコGPを制した当時のブガッティとは直接の関係は無かったりして。
明暗分かれた移籍組
モナコはクルマに自信を持てないとタイムを縮められない、なんて言われ方をしたりしますが、そういう意味では新人や移籍組にとっても試練となるレース。ただ、移籍組を見るとかなり明暗が分かれましたね。
フェラーリのサインツは金曜日からルクレールと共々非常に調子が良く、ポールも狙えるのでは、くらいの勢いでした。予選ではもろもろのタイミングが噛み合わなくて4番手止まりでしたが、もう一発の速さはルクレールと互角かそれ以上くらいのモノを持ってますね。正直、サインツがここまでの速さを発揮できるとは思わなかった。
それからベッテルもQ1はギリギリ突破でしたが、その後調子を上げてQ3まで進出して8番手。Q1がギリギリだったのは、Q3に向けてソフトタイヤを取っておきたかったからというコトみたいですが、それだけ自信があったってコトなんですね。FP1~3いずれもトップ10に入っていたからっていうのもあるんでしょうけど、もしQ1ノックアウトで終わってたらちょっと笑えないところでしたね。
一方でレッドブルのペレスは9番手、マクラーレンのリカルドは12番手、アルピーヌのアロンソは17番手といずれも振るわぬ結果に。ペレスはそこまでモナコが得意なイメージ無いですが、アロンソとリカルドはねえ……2人ともだんだんマシンに馴染んできたのかな、と思え始めてたところだったので、意外といえば意外な結果。2人ともモナコ自体は苦手どころか得意なハズだし。やっぱりこのコースはマシンとドライバーの相性みたいなものも浮き彫りにするんでしょうか。
そういう意味では、またしても僅差でQ1突破を逃した角田にとっても残念な予選ではありました。角田にとってはモナコを走るコト自体初めてというコトで、決勝でとにかく最後まで走り切って欲しいところ。逆に、アルファタウリで6番手をもぎ取ってみせたガスリーはホント今のマシンに馴染んでるんでしょうねえ……ただ、ガスリーの過去や他のドライバーの相性問題なんかを見ても、「これだけ速いんだから、もう一度レッドブルに乗せれば大成功間違いなし」とも断言できないのが今のF1の難しさかもしれません。
マシンの設計やセットアップの技術がどんどん緻密化していく中で、ドライバーも自身のスタイルをより高いレベルで合わせこんでいくコト求められているのかなあ、とか想像するんですけど、そうなんだとするとレーシングドライバーの「速さ」というのはもう一口に説明できないようなモノになっちゃってるのかもなあ、なんて思ったりもします。