大須は萌えているか?

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F1[22] オランダGP 決勝

今回はメルセデスがかなり盛り上げてくれたので面白かったですねえ。フェラーリは相変わらずフェラーリでしたが……。そんなワケで、F1オランダGP決勝のお話。

まさかのハードタイヤ大活躍

なんか事前の予想では、2ストップが主流でハードタイヤは基本的に避けられるタイヤ……という見通しだったと思うんですが、まさかそのハードタイヤが決勝の大きな鍵を握る存在になるとは思いもしませんでした。

トップ3チームの中ではレッドブルフェラーリは定石通りスタートタイヤとしてソフトをチョイス、しかしメルセデスはミディアムを選択。レース序盤はフェルスタッペンとルクレールのマッチレースの様相でしたが、ニュータイヤを履いていたフェルスタッペンがルクレールをじわじわ離していく展開。これは今回もフェルスタッペンが楽に勝っちゃうのかしら……と思っていたんですが、メルセデスが1回めのピットで2台ともハードタイヤを履き、しかもかなり良いペースで走り出したもんだからびっくり。

メルセデスより前にアロンソやノリスもハードタイヤにスイッチして悪くないペースで走っており、これハードでもわりとイケる……?という雰囲気だったのも事実ですが、ハードタイヤ履いたメルセデスはそこそこというか、めっちゃ良いペースだったんですよね。メルセデスのマシン特性がハードタイヤにうまくハマっていたということなんでしょうけど、先にミディアムに履き替えていたフェルスタッペンに対してグイグイタイムを縮めていくくらいの速さを発揮できるとは思いもしませんでした。

フェルスタッペンはミディアムである程度スティントを引っ張って、二度目のピットでソフトに交換する算段だったんでしょうけど、そうこうしている間にメルセデス勢がフェルスタッペンのピットストップウィンドウ内に入ってきてしまっていたので、フェルスタッペンはピットに入ったあとメルセデスの後ろにならざるを得ない状況に。さてこれは面白くなってきた……と思ったら、トラブルでピットに入っていた角田が再度コースに復帰したと思ったら結局マシンを止める、という事態が発生しVSC。

これが48周目だったものだから、残り周回をソフトで走り切るのは厳しくフェルスタッペンはハードタイヤに交換。逆にメルセデス勢はハードからミディアムに交換する形になりましたが、ハードを履いたレッドブルよりもミディアムを履いたメルセデスのがペースは良かったんですよね。56周目の段階で、2番手ハミルトンとトップのフェルスタッペンの差は11秒。直近のラップではハミルトンはフェルスタッペンより0.6秒ちょっと速く、残り16周というコトを考えるとなんとかフェルスタッペンが逃げ切る感じかな……という雰囲気でしたが、そこで今度はボタスがホームストレートでマシンを止めることになり、セーフティカーが出動。

ここでフェルスタッペンはソフトタイヤに交換、ラッセルもソフトに換えますが、ハミルトンはトラックポジションを取りステイアウト。メルセデス、少しでも可能性があるなら勝ちを狙いに行くというアグレッシブな考え。それならラッセルもステイアウトさせてフェルスタッペンに対する壁にする、という考え方もありそうですが、しかしそこは作戦を分けるコトで保険をかけにいった感じですね。まあ普通に考えたら、ストレートが速くソフトタイヤとの相性が良いレッドブルを、少し周回を重ねたミディアムで抑えきれるとは思えないし。

逆に、レッドブルがフェルスタッペンをピットに呼び戻したのは、トラックポジションを失ってもソフトタイヤならメルセデスを逆転することは十分可能、と踏んだからでしょう。レッドブルの判断はいつも的確だよなあ……。結果的にハミルトンのステイアウトは失敗に終わったワケですが、メルセデスの作戦はレースを多いに盛り上げてくれましたよね。まあハミルトンは無線でかなりブチ切れてましたが。

今回のメルセデスの活躍は、「狭いウィンドウにハマれば速い」メルセデスのマシンが、その「狭いウィンドウ」にばっちり入ったコトによるものだったんだろうと思いますが、そのチャンスを最大限に活かすために1ストップ作戦を講じ、そして最後までトップを伺う姿勢はさすがだな、と感じます。今年は脇役に回っちゃってますけど、やはりチャンピオンチームですね。某赤いチームと違って。

一方で、フェルスタッペンはもうどうにも止まらない4連勝ですが、これでランキング2位のルクレールに対して109ポイントまでリードを広げました。さすがにルクレールもお手上げムード。

Leclerc says title ‘looking difficult’ after Dutch GP defeat to Verstappen | Formula 1

これ、もし次戦モンツァとかでルクレールがトラブルで下位に沈んでフェルスタッペン優勝、なんてことになったらシンガポールでタイトルが決まる可能性も出てきちゃうわけですが、現状の雰囲気で考えると鈴鹿がタイトル決定戦になる可能性が濃厚になってきている感じしますね。まあ逆に、ルクレールが優勝してフェルスタッペンリタイヤ、みたいな展開があると鈴鹿でのタイトル決定は遠のくんですけど。正直ここまで来たら鈴鹿で決まってほしい気がするので、フェルスタッペンには好調を維持していただき、ルクレールにはほどほどに頑張って欲しいです(?)。

フェラーリは重症

予選ではフェルスタッペンと対等な勝負ができることを期待させたフェラーリですが、蓋を開けてみれば惨敗。ハミルトンのアグレッシブな作戦が裏目に出たことにより、ルクレールはなんとか3位表彰台を獲得しましたが、そうでなければ表彰台にも登れないところでした。サインツに至っては、ピットでタイヤが用意できてないという間抜けすぎるトラブルもあり8位フィニッシュがやっと。

これまで「チームとして間違ってはいない」みたいな発言を繰り返してきたフェラーリのビノットさん、この期に及んでようやく「なにかが間違っているのかもしんない」というコトに思い至ったようです。

‘There is something wrong we need to address’ admits Binotto after tough Dutch GP for Ferrari | Formula 1®

まあ予選一発の速さはともかく、少なくともレースペースの欠如はどう考えても問題だよね……。そうこうしている間に、メルセデスにもレースペースの速さで負けるようになってるんだからまあ気づくのが遅すぎるというか。正直今季の勝負はもう決してしまった感が否めないので、あとはこの反省を来季に活かせるかどうか……。ただビノットさん、サインツのピットトラブルについてはあまり問題視していないようで、「あれは単純にピットのコールをするのが遅すぎただけなので、修正するのは簡単。それよりマシンのペースが遅いのが心配だ」みたいなコメントしてます。

“I think if I look at today, simply the call was too late a call, so we had no time to react… All these things need to be fixed, but these ones are the easiest to be fixed. So at the end, they happened; they should not happen, I’m pretty sure that we can be stronger in the future. So, I’m less concerned by that than the pace of the car.”

via: ‘There is something wrong we need to address’ admits Binotto after tough Dutch GP for Ferrari | Formula 1®

……こういうのを「単純なミス」と考えてしまうのってなんか危なっかしい気がするんだけどな……。サインツはその後アンセーフリリースの問題も起こしているワケで、1回のレースで立て続けにピットの判断ミスがあったというのは重く受け止めるべきだと思うんですけどねえ。それに、こういうのって一瞬の判断になるので、再発防止も意外と難しいのでは、って思っちゃうんですけど。

レッドブルが独走しまくるのも問題なので、フェラーリにももちろん頑張って欲しくはあるんですが……残りのレース、良い意味で開き直ってくれれば良いのですが。

角田のあれは結局なんだったのか

今回のレースのターニングポイントのひとつになった角田のトラブル、あれは結局なんだったんでしょうか。

AlphaTauri Chief Engineer explains Tsunoda’s bizarre DNF at Zandvoort | Formula 1®

角田は44周目にハードタイヤに交換、コースに復帰したもののマシンのリヤに違和感を覚えてマシンをコースサイドに止めたワケですが、そのときもうマシンを降りるつもりでシートベルトを緩めたんですね。そしたらチームからデータ上マシンに異常はないからマシン動かしてピットまで戻ってこい、と指示され、走行を再開。ピットにて再度タイヤ交換を行い、シートベルトを締め直して送り出したものの、やはり角田がマシンの異常を訴え、今度はテレメトリーからも異常が発見されたためにリタイヤさせた……という流れ。

さらになにが問題かって、シートベルトを緩めた状態で走行を再開しちゃったもんだから、これが戒告処分の対象になっちゃったコト。マシンを止めるやさっさとシートベルトを外そうとした角田もどうかと思うんですが、マシンに問題が見つけられなかったのも問題ですよねえ。もしピットからもトラブルが確認できていれば、この戒告はもらわずに済んだのに。

角田はすでにここまで4度の戒告を受けており、今回が5度目の戒告。

ほいでもって、F1のスポーティングレギュレーションには

18.2 同一の選手権の中で戒告処分を5回受けたドライバーは、5回目の処分決定により、その競技会の決勝レースにて10グリッド降格の罰則を受ける。その5回目の戒告が、決勝レース中の事件に続いて科された場合は、10グリッド降格の罰則は、当該ドライバーの次の競技会に適用される。
10グリッド降格の罰則は、戒告処分のうち少なくとも4回が、運転に関する違反であった場合にのみ科される。

via: FIAフォーミュラ1世界選手権規則書_日本語版 2022年競技規則_日本語版_20220429 (PDF)

角田の場合、これまでに受けてきた戒告もすべて運転に関する違反だったため、まあ思い切り10グリッド降格の条件にハマっちゃってるワケですね。予選では素晴らしい結果を残したのに、結局レースでは流れが掴めず、さらに次のレースにも影響を及ぼす格好に……。

ポイント獲得からずいぶん遠ざかっちゃってますし、まだアルファタウリの来季の体制がハッキリしていないのでやきもきしてしまいますが、なんとか日本GPまでに流れを立て直して欲しいところではあります。速さがあるのはわかっているのに、こうして空回りしてく状況というのは歯がゆいものがありますね。おそらく本人が一番悔しさを感じているでしょうけども、ここを乗り越えていけるかどうかでドライバーとしての将来が決まっていくんでしょうね。

歴代の日本人レギュラードライバーも皆実力はある(タキ井上は除く)んだけど上手くハマらないところがあるというか……ううむ。