大須は萌えているか?

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『ROBOTICS;NOTES』は劣化版『パトレイバー2』だった

えーと、しばらく前に購入した『ROBOTICS;NOTES(ロボティクス・ノーツ=通称ロボノ)』、クリアしました(プラチナトロフィー獲得までやった)。以下、感想など書いてみたいと思うのですが、わりとネガティブな内容の上に、結構なネタバレありでいきますので、これからプレイする予定の方、あるいはロボノ大好きッ子な方は取り扱いにご注意ください。

ROBOTICS;NOTES (通常版)
リエーター情報なし
5pb.

一応この科学アドベンチャーシリーズは、PSP版『CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド ノア=通称カオヘ)』、Windows版『STEINS;GATEシュタインズゲート=通称シュタゲ)』とクリアしているんですが、個人的な評価としてカオヘはイマイチ、シュタゲはハマりました。勢い余って『比翼恋理のだーりん』にまで手を出してしまいましたが、こっちはまぁよくあるファンディスク程度の出来。

それでもシュタゲ本編は面白かったので、期待しつつロボノもプレイしてみたのです、んが、なんか残念な出来でした。カオヘよりはちょい上かなくらい。以下、残念な理由をいくつか。

主人公が好きになれなかった

これはカオヘとまったく同じ。カオヘの主人公でありネトゲ廃人でもある西條拓巳(にしじょう たくみ=通称タク)は相当なキモオタでどうにも好きになれず、彼の印象の悪さがゲームそのものの印象の悪さに繋がってしまいました。終盤になって覚醒する展開があるんですけど、正直「主人公らしくなるのがおせーよ!」と思ってしまったりして。

ロボノの主人公八汐海翔(やしお かいと=通称カイ)はタクよりはなんぼかマシな印象ですが、格ゲーオタクで隙あらば格ゲーをやっている状態。とにかく格ゲーをプレイするコトを最優先し、他人から頼み事をされても「格ゲーで俺に勝ったらやってやる」てなもんで。格ゲー好きなのは別に良いんですけど、これじゃ単純に嫌なヤツです。

裏でこっそり幼馴染みの瀬乃宮あき穂(せのみや あきほ=通称アキ)の世話を焼く一面もあるんですが、それでも「俺が手伝うのはここまで」ときっかり線引きをするタイプ。格ゲーに対してならとことん熱くなるヤツなんですが、私自身格ゲーは嗜み程度にしかやらなかったクチなので、最後までカイの価値観に同調できませんでした。

そこいくと、シュタゲの主人公である岡部倫太郎(おかべ りんたろう=通称オカリン)は秀逸なキャラでした。大学生にもなって痛々しい厨二病キャラのオカリンですが、とにかく彼はエネルギッシュで前向きだからね。

ロボノでは格ゲー中毒のカイの代わりにヒロインのアキが牽引役を務める格好になるのですが、カイが格ゲーばっかやってる分無駄に空回りするキャラになってしまっており、なんだか見てて気の毒になってきてしまう感じに。カイとアキは二人でひとつ、というコトなんでしょうが、終盤になるまで延々とアキが空回りしちゃってて……。オカリンも空回りキャラですが、大学生の男が空回りする分には「バッカでー」で済むんですよ。でもアキみたいな女の子がそれやると、なんともいたたまれない気持ちに……。

システムがダメだった

そもそも、セーブデータがある状態でもタイトル画面の初期選択が「NEW GAME」になっている辺り「ん?」と思ったんですが、このゲームの最大の問題はフラグ分岐のシステム。シュタゲではメールの返信内容によってフラグを立ててましたが、ロボノではメールが「ツイぽ」というTwitterもどきに変わりました。とはいえ、やることは誰かのメッセージに返信していくだけです(すべてのメッセージに返信できるワケではない)。返信内容が三択になっていて、その選択によってフラグが変化する仕組み。メールと大差ありません。

じゃあなにが問題かというと、ツイぽに返信可能なメッセージが投稿されても、メールのようにプッシュ通知されないというコトです。逐一ポケコン(この世界のタブレット端末)を取り出して、ツイぽを起動しメッセージをチェックする必要がある。しかも投稿されたメッセージはしばらくすると消えてしまいますから、場面転換するたびにポケコンを気にする必要が出てきてしまい、物語への没入感を著しく奪ってしまいます。

そして2周目以降のプレイ時に既読スキップをすると、ついうっかりツイぽで返信しなきゃいけない場面までまとめてスキップしてしまいかねません。……なーんでこんなシステムにしちゃったかなぁ……。私はもうすっかり面倒になってしまい、もうガッツリと攻略Wikiのお世話になってしまいました。

物語が劣化版パトレイバー2だった

んで、これが本題。

ロボノはその名の通りロボットをテーマとしたお話ですが、それだけに序盤からアキがやたらシャアのセリフを引用したりするなどガンダムネタ(物語の中では『ガンバム』というタイトル)が出てきます。ただ、アキが一番ハマっているのは『ガンヴァレル』というスーパーロボット系のアニメ。

じゃあ物語もスーパーロボット的なストーリーになっていくのかと思いきや、物語後半の構造が思い切り『パトレイバー2』です。いやこれは私がパトレイバー好きだから言ってるワケじゃなくてガチで。

機動警察パトレイバー 2 the Movie - Wikipedia

だってロボノの後半の展開を振り返ってみると……敵役が情報操作をし、人々に偽の状況を現実だと誤認させ、誤解が混乱を生み、正規の警察や軍隊が役に立たなくなる。そして敵を止めるコトができるのは、独立愚連隊同然の主人公達と、時代遅れのロボットだけ……うん、どうみてもパトレイバー2です本当に以下略。

それに、物語の中でアキが「うちら二人は性別逆だけどノアとアスマだね」みたいなセリフを言うシーンがあったり、「ワイバーン」「プリースト」「ウィザード」「トレボー」といったパトレイバー2の劇中で使用されていたコールサインがそのまんま登場したりと、作り手も意識的にやってるのは明白です。……ちなみに、これらのコールサインの大元は押井守が大好きだという『ウィザードリィ』。これ豆知識な。

それはまぁ良いんですけど、そうなると重要なのは情報操作のプロセスです。パト2の場合、最初に一発だけホンモノのミサイルをベイブリッジに叩き込み、その後の状況を敵役の柘植が完全に掌握していくプロセスが見物だったワケですが……ロボノの場合、どうもその辺の踏み込みが浅い。

物語を通しても、「情報操作」や「プロパガンダ」というのがかなり重要なテーマであるハズなんです。そもそも2019年という未来において、ガンヴァレルのような古くさいロボットアニメが大ヒットし、ロボット開発ブームが起きたのは敵側の組織のプロパガンダによるものだと。でもいくら巨大な組織が裏で情報操作したところで、時流から大きく外れた作品を爆発的にヒットさせるコトなんてできるの?という疑問がどうしてもあるワケです。しかし、その手法への具体的な言及は一切ナシ。

「君島レポート」の存在もなんだか中途半端です。不特定多数の人間を疑心暗鬼にさせたいのなら、日本の片隅にある離島で高校生一人にえっちらおっちらレポートを集めさせ、最後にまとめてネットに拡散させるなんていうプロセスを踏む理由がわかりません。ついでに言うと、格ゲーバカのカイが君島レポートに興味を持つ理由も弱い気がします。

さらに根本的なところで、「なぜロボットなのか?」という疑問もあります。押井守は二足歩行の人型巨大ロボットという存在を真面目に考えた結果、パト2ではロボット(レイバー)をほとんど活躍させなかったワケじゃないですか。主人公である泉野明に「あたし、いつまでもレイバーが好きなだけの女の子でいたくない。レイバーが好きな自分に甘えていたくないの」なんてセリフまで言わせて。

ロボノはきっと、あえてパト2のオマージュをやりながら、押井守が否定しかけた人型巨大ロボットを最後まで肯定する物語をやりたかったんじゃないかと思うんですよ。

でも、肝心の「なぜロボットなのか?」という理由が弱い。敵側の組織がプロパガンダまで用いてロボットを流行らせたのは、人類を大量に「間引き」したあとにロボットをマンパワーとして使いたいからという理由っぽいのですが、それなら別に二足歩行しなくても、人型で無くても良いワケで。ガンヴァレルみたいなアニメを一生懸命流行らせなくても、企業にカネばらまいて研究開発させりゃいいでしょう。

パト2がかなり説得力のある物語だっただけに、せっかくそのオマージュやるなら、もっとストーリー練って欲しかったですね。

最後に、良かった点

いろいろ書いてきましたが、最後にこのゲームの良いところを挙げるならば、シュタゲで個人的イチオシキャラだった、シスターブラウンこと天王寺綯が再登場していること!しかも20歳に成長した姿で!ビキニ姿もあるよ!でもそのルートに入っちゃうと打ち切りエンド!切ねえ!

あ、あと「女版ダル」とでも言うべきキャラクター・神代フラウのCV:名塚佳織の怪演は聴く価値ありです。

ただ、そのためだけに買うべきかというと……えー……ノイタミナでアニメ化するみたいなんで、それ待ちましょうか。