大須は萌えているか?

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東武東上線の踏切事故の数え役満振りがスゴイ

話題になってる、東武東上線の踏み切り事故について。

29日午前6時50分ごろ、埼玉県川越市藤間の東武東上線の遮断機が下りた踏切に、人が乗っていない軽乗用車が進入し、川越市駅行きの下りの普通電車と衝突しました。
この事故で、軽乗用車は激しく壊れましたが、電車の運転士や乗客にけがはありませんでした。

また事故の影響で、東武東上線は一部の区間で、午前11時半前までおよそ4時間半にわたって運転を見合わせたほか、直通運転をしている東京メトロ副都心線有楽町線東急東横線などもダイヤが乱れました。
警察によりますと、軽乗用車を運転していた女性は「近くにあった郵便ポストに投かんしようと車を降りたところ、動き出してしまった」と話しているということです。

警察は、女性が車を確実に止める操作をしないまま車から離れたとみて、事故の詳しい原因を調べています。

via: 東武東上線 踏切で電車と車が衝突 NHKニュース

仮にこの事故の原因となったクルマに何らかの故障があったとしても、この女性ドライバーには相当な責任がありますね。

すぐそこにある郵便ポストに投函するために、踏切待ちのスキに少しだけクルマを離れる……というのは、ともすればやっちゃいたくなる行動ではあるものの、道交法的には完全にNG。そもそも踏切の真ん前は駐停車禁止です。

第四十四条  車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。

(中略)

六  踏切の前後の側端からそれぞれ前後に十メートル以内の部分

via: 道路交通法 第九節 駐車及び停車

もちろん、踏切手前に停止線があるときや、踏切が鳴っているときには当然停止しなくちゃいけないんですが、それはあくまで踏切を安全に通過するためのキマリですからね。

第三十三条  車両等は、踏切を通過しようとするときは、踏切の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止し、かつ、安全であることを確認した後でなければ進行してはならない。ただし、信号機の表示する信号に従うときは、踏切の直前で停止しないで進行することができる。

2  車両等は、踏切を通過しようとする場合において、踏切の遮断機が閉じようとし、若しくは閉じている間又は踏切の警報機が警報している間は、当該踏切に入つてはならない。

via: 道路交通法 第五節 踏切の通過

なので、この行動は完全にドライバーの過失。

それに加えて、このドライバーは「ギヤをニュートラルにしたつもりだった」と語っています。

百歩譲って、遮断機が降りている隙に踏切のど真ん前で駐車(郵便物の投函を荷物の積み降ろしと解釈できるなら停車ですが)したコトを不問としても、そこは「P(パーキング)」レンジに入れるべきでしょうと。パーキングロックがかかるPレンジと違い、N(ニュートラル)レンジではギヤがフリーの状態になっているんで、簡単にクルマが動いてしまう(ていうか、Nレンジは緊急時にクルマを押したり牽引するためのものなので)ため、ドライバーがクルマを離れる時に使うべきではありません。

なので、もしNレンジに入れていたのだとしても、その判断は間違いです。クルマを離れる時はPレンジに入れてサイドブレーキをかける、がAT車の基本。

でもまーNレンジでも平地ならすぐにクルマが動きだすコトはないだろうし、千歩譲ってそこはセーフとしましょう。ところが、テレビで流れていた防犯カメラの映像を見ると、下り坂でもないのにクルマが無人の状態でするすると動き出しているワケです。

となると、これはどう考えてもDレンジに入っていたとしか思えない。Nレンジに入っていたのだとすれば、エンジンの動力がタイヤに伝わることはあり得ないのですから。つまり、このドライバーはNレンジに入れることすらできていなかったワケです。駐車NGなところで駐車し、Pレンジに入れるべきところをNレンジに入れようとし、そしてそのNレンジに入れるのも忘れていたという、三段構えの過失。なかなか狙ってできるモノではありません。

ただ少し気になるのが、事故の映像を見る限りドライバーが降車し、ドアを締めるまでクルマは止まっているように見えること。事故の原因はAT車クリープ現象によるものだとは思うんですが、普通それならブレーキから足を離した瞬間からスルスルと動いちゃうじゃないですか。なんか変だなぁと。

Twitterなんかでアイドリングストップ機能によってエンジンが止まってたんじゃないかって意見も出てましたが、アイドリングストップ機能でエンジン止まってても、ブレーキから足を離した瞬間に再始動します。加えて、シートベルトを外したりドアを開けたりしている状態ではエンジンが再始動しないようにする安全制御もあるハズなので、アイドリングストップによるエンジン停止でドライバーが「降りても大丈夫」と誤解した、というのは無いでしょう。

んで、想像するにこのドライバーはギヤはDレンジのまま、サイドブレーキだけかけて降車したのかなぁと。本人もサイドブレーキはかけたつもりって言ってるし。すると、クリープ現象により前に進もうとする力はサイドブレーキで抑えられるワケですが、ドライバーが降りる=車重が軽くなったことと、ドアを閉めた拍子にサイドブレーキが緩み、クルマが進んでしまった……とか。サイドブレーキは長年調整せずにいると効きが弱くなるコトがありますし、あるいは単純にサイドブレーキの引き方(踏み方?)が弱かったのかも知れない。

いっそサイドブレーキ引かずにクルマ離れようとしたならば、スグにクルマが動いてヤバイと気づけるワケですが、中途半端にサイドブレーキが効いちゃってた故に完全に降車してドア閉めた途端にクルマが動くという最悪のパターンになったんじゃないかなぁ。前述した3つの過失に加え、サイドブレーキの効かせ方も中途半端だったんだとしたら、偶然にしては出来過ぎなくらいの数え役満ぶりですね。

怪我人がいなかったことは不幸中の幸いですが、やっぱりこのドライバーはそれ相応の損害賠償を請求されるんでしょうねぇ……。クルマの運転をする時は、ホントに「万が一」のリスクを考慮すべきなのだなと思い知らされる事故でした。