大須は萌えているか?

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アクセルとブレーキのペダル踏み間違え事故を減らすにはどうすりゃいいのか

割と頻繁に起きる、クルマのアクセルとブレーキの踏み間違えが原因の事故。先日大阪で起きた事故では、コンビニに突っ込んだクルマの下敷きになった店員さんが亡くなるという悲劇を招いてしまいました。

5日朝、大阪・東大阪市コンビニエンスストアで、駐車場に止まろうとした乗用車が急にスピードを出して店に突っ込み、車の下敷きになった従業員の男性が死亡しました。 警察は、運転していた79歳の男を過失運転傷害の疑いで逮捕し、男は「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と供述しているということです。

via: コンビニに車突っ込み 従業員死亡 NHKニュース

4年くらい前に、NHKクローズアップ現代』でもこのペダル踏み間違え事故について取り上げていたみたいなんですが、番組サイトの説明によると、これによる事故件数は日本だけで年間7,000件起きているんだそうな。

8月、米運輸省は、トヨタ車の急加速問題について、多くが「ドライバーのペダルの踏み間違い」だったと示唆する中間報告を出した。アクセルとブレーキの踏み間違い事故は、日本でも年間およそ7000件、幅広い年齢層で起きている。

via: 見過ごされてきた踏み間違い事故 - NHK クローズアップ現代

あと、『交通事故総合分析センター』のWEBサイトで公開されているPDFに、平成25年までの操作不適事故件数の統計データが掲載されていたりもするので、こちらも参考になりそう。

運転操作の誤りを防ぐ(PDF)

これによると、平成16年に発生したペダル踏み間違え事故は7,660件、平成25年は6,402件なので、やや減っているようではあります。ていうか、平成20年頃からだいたい年間6,500件で横ばい傾向ですね。平成25年の操作不適事故の総件数が41,805件となってますので、この内ペダル踏み間違え事故が占める割合はざっと15%といったところですか。

あと、全人身事故のうちペダル踏み間違え事故が占める割合は1%。これを多いとみるか少ないと見るかは人によりそうですが……。操作不適事故のうち、人身事故に占める割合が一番高いのはブレーキ操作不適(雪道なんかでロックアップさせちゃったりして事故るパターン)で、3.6%。

さらに、平成16年~25年の間でペダル踏み間違え事故が全死亡事故に占める割合を見ると、全体の0.5%。ペダル踏み間違え事故は時速20km以下の低速時での発生が7割を占めているため、死亡事故に直結する割合はそこまで多く無い感じでしょうか。操作不適事故で一番死亡事故に直結しやすいのはハンドル操作不適で、全死亡事故に占める割合は4.3%(スピードを出しすぎてハンドル操作を誤った、とかってアレ)。

ペダル踏み間違え事故を起こす年齢層を見ると75歳以上の高齢者がやはり一番多いみたい。事故が発生している場所は「道路以外の場所」が最も多く、駐車場での事故が多そうな感じですね。

ペダル踏み間違え事故を引き起こした人的要因の筆頭として挙げられているのが「慌て、パニック」となってますが、これはどの操作不適事故でも共通している要因。後ろにクルマがつっかえていて急いで駐車しなくちゃいけないとか、そういうシチュエーションが想像できます。

クローズアップ現代』で行った実験では、運転者の注意が運転から逸れたときに踏み間違いが起きる確率が上がったそうな。

交通心理学が専門だという九州産業大学の松永勝也教授の協力のもとに番組が実験を行ったところ、踏み間違いについての常識の非常識がわかったんだそうな。運転中にちょっと注意をそらすような出来事――たとえば、ケータイが鳴るとか――のときに、脳の注意力が低下する。そのときブレーキを踏もうとすると、被験者は普段から操作回数の多いアクセルペダルのほうを誤って踏む確率が増えた。

via: なぜ起きる?クルマのペダル踏み間違い事故 : J-CASTテレビウォッチ

これも、「早くクルマを駐めてケータイ出なくちゃ」という焦りと言えるのかも。駐車するときってのは大抵他のクルマや壁に近付けていくという繊細な操作が必要とされるシチュエーションなので、「急いで操作しなきゃ」という心理は事故に直結しやすいでしょうね。

MT車だと事故は減るのか?

んで、こういう踏み間違え事故が起きたときによく言われるのが、「AT車だからこういう事故が起きるんだ」という話。アクセル、ブレーキに加えてクラッチペダルも操作する必要のあるMT車なら、事故は減るはず、っていう。

確かに、MT車だとクルマを停止させる際にはブレーキペダルを踏みながらクラッチペダルも踏み込む格好になるので、万一ブレーキとアクセルを間違えても、クラッチさえ切れていればエンジンが空ぶかしされるだけで済みますね。

ただ、「慌て・パニック」による誤操作をしちゃうときって、「クラッチ操作を忘れる」、あるいは「加速操作と減速操作をあべこべにしてしまう」コトだってあるんじゃないかと思います。いや私もインプレッサ乗ってたときにクラッチ切るの忘れてエンストさせたコトがげふんげふん。

ペダル踏み間違え事故が昭和の時代より増えているとしても、それは高齢者ドライバーの増加やケータイの普及により運転時に注意力散漫になるドライバーが増えている、といった要因の方が大きいような気が。まー、AT車よりマシかもしれませんが、事故りやすい高齢者ドライバーをMT車に乗せておけば解決かというと正直疑問ですね。

逆に、坂道発進でずり下がってきて後続車にぶつける事故が多発、とか新たな問題が出てきそう。

ドライバーのUIを見直すべきか?

あとよく言われるのが、アクセルペダルとブレーキペダルが隣り合わせになっており、かつどちらも「踏む」という操作で加速と減速という真逆の制御を行っているため、本質的に誤操作を招きやすいインターフェイスだという話。

ただ、アクセルペダルとブレーキペダルって日本だけじゃなく世界中のクルマがああなっているので、これを見直そうと思うとなかなか難儀な話ではあります。オーディオなんかの操作系統と違って、クルマの最もコアな機能である「走る・曲がる・止まる」に関わるインターフェイスを変えるというのは、それこそ日本のメーカーだけじゃなく、世界中の自動車メーカーで検討していかなくちゃいけない。

海外でもそういう機運が高まれば話が進んでいくのかも知れませんが、欧米だとペダル踏み間違い事故は「ドライバーの責任」で片付けられているみたいだし、やるにしても長い年月がかかりそう。かといって、「じゃあ日本だけでも変えろ」と言ったら自動車メーカーは猛反発するでしょう(国内向けと輸出向けで大きく仕様が異なるモノを作らなきゃいけないので)。

そもそもが、先の統計にあるように全死亡事故に占めるペダル踏み間違え事故の比率はそこまで高くないワケで、そのためにクルマのインターフェイスの最もコアな部分を刷新する……というのはそらメーカーとしても二の足踏むでしょう。

じゃあナルセペダルみたいな誤操作を防ぎやすいとされている装置をオプション設定すれば、という話もありますが、こういう装置をオプションや後付けで導入するような「意識高い」ドライバーは、そもそもあまり踏み間違え事故を起こさないんでないかな、という気はしちゃいます。

運転誤操作って、ドライバー自身の慢心が少なからずあると思うんですよね。「そんな単純な操作ミスを自分がするワケが無い」っていう。そういう人が、ナルセペダルのようなものをお金払ってまで取り付けたがるか?それに、アクセルとブレーキのインターフェイスが変わるコトに抵抗を覚えるドライバーも多いと思われます。つまりは、仮にナルセペダルのようなモノをオプション設定しても、装着率は1%も行かないんじゃないか、ってコト。

じゃあどうするか

インターフェイスの変更をせずにこの手のペダル踏み間違い事故を防止しようと思うと、現状もっとも有望なのはスバルのアイサイトのようなシステムというコトになるんでしょうね。クルマに取り付けたカメラ(トヨタなんかはミリ波レーダーも使ってますが)で障害物や対向車等を検知し、ブレーキとアクセルの補助や制御を行うシステム。他メーカーも同様の技術開発を進めており、今後どんどん普及していきそうなシステムです。

オプションで設定されるクルマも増えてますが、まだ「中~高級車の装備」というイメージは強いですね。ただ、エアバッグやバックモニターみたいな装備と同様、コレも今後すべてのクルマに普及していくコトでしょう。

アイサイトの場合、価格がそこまで高く無く、他者要因による事故の抑制(急な割り込みとか、飛び出しとか)にもなるし、全車速クルーズコントロール(前走車を追従し発進・停止まで自動でやってくれる)というドライバーにとって嬉しい機能もあるため、オプション設定率は結構高いみたい(2013年の記事によると、レガシィのアイサイト装着率は81.8% ⇒ スバル、EyeSight搭載車が国内販売10万台を達成 / 記念してアイサイト購入資金プレゼントキャンペーン - Car Watch)。

ナルセペダルのようなものをオプション設定するより、こっちのがずっと現実的だと思います。

アメリカでは以前からバックカメラの搭載を法律で義務づけようとする動きもありますが、ペダル踏み間違え事故の件数がもし今後増加傾向になっていくようなら、アイサイトの様なシステムも軽自動車まで全車標準装備させちゃう、なんてのもアリなのかも。製造コストもどんどん下がっていくでしょうし。