予選の記事で、「ハミルトン優勝おめでとう」とか書いちゃったんだけどどうしよう。F1モナコGP決勝。
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- 決勝後ドライバーコメント:In quotes - Sunday in Monte Carlo
- 決勝後記者会見:FIA post-race press conference - Monaco
大どんでん返し
予選Q2まではロズベルグが流れを支配したものの、Q3からハミルトンが状況をひっくり返し、レースも終盤まで盤石のリード。今年のモナコの栄冠はハミルトンで間違い無し……と思っていたのに、グロージャンとフェルスタッペンのクラッシュからまさかの展開。正直、一体何が起きたのか良くわかりませんでした。そもそもなぜハミルトンはタイヤを交換する必要があったのか、なぜまんまとロズベルグとベッテルに先行を許してしまったのか。
レース後のハミルトンとトト・ウォルフのコメントを見ると、なんとも不幸なコミュニケーションミスがあったコトが窺えます。
ハミルトン曰く、セーフティーカーが入ったときにコースサイドのモニターにメルセデスのピットクルーが出てきているのが見えたようで、それでロズベルグとベッテルはピットインしたと思い込んだと。んで、チームは最初コース上に留まるよう無線で告げたものの、ロズベルグらがオプションタイヤに交換したと思い込んだハミルトンはタイヤの温度についての懸念を口にしたようで(セーフティーカーランでタイヤが冷えてしまっていた)、それを聞いたチーム側はハミルトンにピットインを指示した、と。
スクリーンを見るとチームが出てきていたから、ニコがピットインしたのだと思った。後ろのドライバーたちのことは見えないから、彼らはピットに入るのだと思った。
チームがステイアウトすると言った時、僕は「タイヤの温度が下がってきている」と言った。僕はハード側のタイヤで走っていたが、後ろのドライバーたちはオプションタイヤを履くのだと思い込んでいたんだ。そしたらチームはピットに入るよう言った。
この時、チームはハミルトンをピットに迎え入れても、ロズベルグらが追いついてくる前にハミルトンをコースに戻せると判断していたワケですが、実際のところギリギリのマージンしかなく、ハミルトンから少し遅れてピットに入ってきたザウバーが通り過ぎるのを待った一瞬の遅れによって、コースに復帰したときには3番手に転落していたという。
「ハミルトンをタイヤ交換のためピットに呼び入れた時、作業後再びトップで戦列に戻す時間的余裕が十分にあると認識していた。 しかしそれが現実には計算ミスだった。 われわれは結果的に誤った判断を下してしてしまったということだ」
また同氏(引用註:トト・ウォルフ)はさらに「通常こうした時われわれはGPSによる正確な位置情報を判断の材料にするが、(狭いコースに高層ビルが林立する)モナコの特殊な立地に情報が混乱したことも考えられる。 またセーフティカーが当初のバーチャルから現実のセーフティカーに変更されたことも原因にあるかも知れない」と、釈明した。
これ、ハミルトンはロズベルグとベッテルがタイヤを交換したと勘違いをし、チームはタイヤ交換するのに十分なマージンがあると勘違いをした、というお互いの勘違いによって引き起こされた事態だったんですね。例えば、ハミルトンが無線で一言「ロズベルグとベッテルはピットインしたのか」と尋ねていれば、状況は全然違うものになっていたのかも知れません。
ある意味、ハミルトンはそれまであまりにも順調だったんですよね。ロズベルグとの差が数秒程度であれば、サイドミラーに映るロズベルグのマシンを見てハミルトンが勘違いするコトもなかっただろうし、あるいはギリギリミラーに映らない程度の間隔だったとしても、チームが「ニコとのマージンが十分ではない」と警告したでしょう。
それまであまりに盤石なレース運びをしていて、さらに勝利を確実なモノにしたいという思いが落とし穴になったという、ハミルトンにとっては非常に皮肉としか言い様が無いレースだったなぁと。
ただまー、それでロズベルグのモナコ3連勝という記録にケチが付くワケでは無いと思ってます。ロズベルグもコメントしてますが、「勝ちは勝ち」なので。セナの5連勝だって、運に恵まれた結果でもあったワケですし。こういう思わぬ偶然が重なっての勝利もまたレースのうちです。別にロズベルグ自身は何か悪いコトしたワケでも無いですしね。
セナを尊敬するハミルトンにしてみれば、モナコの勝利は是が非でも欲しいモノであろうことは想像に難くないですけどね。それなのに、2度のチャンピオンを獲った自分を差し置いて、無冠のロズベルグがセナ以来のモナコ3連勝を達成したというのは彼にとって屈辱的な出来事でしょう。
放送で川井ちゃんらも言ってましたが、フィニッシュ後ハミルトンがポルティエでマシンを止めたときは、「セナのマネしてこのままどこかに雲隠れするつもりか?」と邪推してしまいました(88年、トップを独走していたセナがここでクラッシュ、そのままガレージに戻らず自宅に帰ってしまった)。
表彰式やインタビューの場でも不機嫌さを隠そうとしなかったハミルトンですが、次戦彼がどのようにこのレースを受け止め、その走りにぶつけて来るかが楽しみでもあり、ちょっと怖くもあり……。
クラッシュを巡るあれこれ
トップ争いのドラマを作るきっかけとなったグロージャンとフェルスタッペンのクラッシュ、トロロッソのマシンがかなり高速でバリアに突っ込む形になったので肝が冷えました。幸いフェルスタッペンは自力でマシンから脱出できましたが、大怪我しててもおかしくないレベルのクラッシュ。
このクラッシュについて、マッサなんかは結構痛烈にフェルスタッペンを批判しているようですが、フェルスタッペンは「グロージャンのブレーキが早すぎた」とコメント。確かにオンボードカメラを見たとき、なんかブレーキが早いようには見えました。
ただ、裁定としてはフェルスタッペンにクラッシュの非があるとされ、次戦カナダでの5グリッド降格及びペナルティポイント「2」が加算されるとのこと。
Verstappen penalised for Grosjean clash
これはまー、ブロックラインを取るグロージャンに対して、フェルスタッペンは中途半端に仕掛けようとしちゃった感はあります。グロージャンはまさか仕掛けてくるとは思ってなかったでしょうね。だからこそ、2台の間でブレーキのタイミングが随分と異なってしまった。
レース序盤にはアロンソとヒュルケンベルグがミラボー付近で接触、アロンソに5秒ペナルティ。アロンソはこれに従ったものの、かなり不服そうでしたね。実際、あれはレーシングインシデントじゃないのかなぁって気がしますが。
終盤にはライコネンとリカルドが同じくミラボーで接触したものの、こちらはお咎め無し。こっちのがリカルドの仕掛けが強引に見えますけどねぇ……。ライコネンは当然納得しておらず、リカルドにペナルティを与えるべきだとコメント。これは確かにジャッジに一貫性が無いと言われても仕方無いと思います。
マクラーレン・ホンダ初入賞
で、衝撃のクラッシュからトップ争いのゴタゴタですっかり霞んでしまったんですが、とうとうマクラーレン・ホンダが初入賞。ホントはアロンソ含めてダブル入賞と行きたかったところなんですが、まずはバトンの入賞を喜ぶべきでしょうね。
アロンソのマシンを見るとまだ信頼性には難があるし、今回はパワーの差が出にくいモナコだからこそってのはあるでしょうが、しかしモナコでそれなりに速さを見せられたってコトはマシンの素性自体は悪く無いってコトでしょうし、この結果を次に繋げていって欲しいところ。
にしても、ちょっとアロンソは今シーズンツキに見放されている感じがしますね……。