大須は萌えているか?

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快傑ズバットが面白いので各話感想を書く(1~10話)

最近、Amazonプライムビデオに追加された『快傑ズバット』を観ています。1970年代の東映特撮ヒーロー作品(原作は石森章太郎)なのですが、私はコレをリアルタイムで観ている世代ではありません。……が、その「濃い」内容から根強いファンも多いらしく、テレビのバラエティー番組で紹介されたり、マンガなんかでズバットのパロディネタが出てきたりと、そういうトンデモない作品がある、というのは知っていたんですね。

その後なんかのタイミングで数話視聴する機会があったんですが、全話観るタイミングが無かったため、良い機会だからプライムで全話観てみようかと。で、とりあえず今現在10話まで観たんですけど、……むちゃくちゃ面白いですねコレ。作品の概略はピクシブ百科事典の記事が端的にまとまってて分かりやすいので、ズバットご存じない方はこちらをどうぞ。

快傑ズバット (かいけつずばっと)とは【ピクシブ百科事典】

個人的に感じるズバットの面白さを簡単に列挙しますと、

  • 主人公・早川健のキャラが濃すぎ
  • 敵のボス・用心棒のキャラが濃すぎ
  • 時代劇めいたお約束パターン

あたりでしょうか。

早川のキャラの濃さは言うまでもありませんが、普段はキザで軽妙な態度を取っていながら、その内心では殺された親友・飛鳥五郎の復讐に燃えているというギャップがたまりません。ていうか悪と戦うメインの理由が「復讐」ってのが良いですね。やはりヒーローは純粋な正義の体現者ではなく、どこか影を背負っていた方が深みが出ます。石森章太郎の特撮代表作である仮面ライダーも、改造人間としての影を背負った格好良さがありましたね。

一方で、敵のボスと用心棒のキャラの濃さも大概です。ズバットに出てくる敵組織は「ダッカー」という大きな組織と、それにぶら下がる下部組織という構成になっており、早い話がヤクザみたいなもんですね。早川は毎話、飛鳥を殺した犯人を見つけるために日本各地にあるダッカーの下部組織のボスを締め上げにいくんですが、ボスには必ず用心棒がついてます。こいつらのキャラも毎回濃いのばっか。性格はいかにも悪人然としたのばっかなんですが、ただの人間のクセに外見がやたら派手だったり、言葉遣いが変だったり、殺しの方法が意味不明だったりと、毎話必ずツッコミどころがあるのはお見事としか言いようがありません。

登場するキャラが異様に濃い一方、ストーリーは1話完結式で、時代劇と同じように定形のパターンが存在します。わかりやすい起承転結です。

  • 【起】 どこかの町で悪人(ザコ)が善人を襲っているところに、早川が登場して悪人(ザコ)をぶちのめす
  • 【承】 用心棒が現れ、早川と日本一の座を争う ⇒ 早川が勝つ
  • 【転】 早川がボスに近づこうとするも、なんやかんやで早川が窮地に陥り、姿を消す
  • 【結】 悪人が勝ち誇っているところに、ズバッカーに乗ったズバットが登場して用心棒とボスをぶちのめす

昔の特撮ドラマってどれも定形はあったようにも思いますが、ズバットはそれが特にわかりやすいというか。ただ、毎回早川と悪人のキャラが濃すぎるせいで、ストーリーの流れは「お約束」に沿っていてくれた方が有難かったりします。その方が、キャラそのものの面白さを堪能できるので。

各話感想(1~10話)

そんなワケで、以下10話までの各話の感想をざざっと。

1話 さすらいは爆破のあとで

サブタイトルからして面白い。ていうか意味がわからない。この1話で早川の親友である飛鳥五郎が殺されてしまうワケですが、冒頭のOPムービーでモロに飛鳥の銃殺シーンが映っており、いきなりネタバレをしてしまうという爽快さ加減がたまりません。飛鳥は自分のことを「山登りの好きな貧乏学者」と称していますが、悪人の用心棒に銃で撃たれても動じない肝の据わり方、途中までズバットスーツやズバッカーを開発していた資金力を考えると、ただの貧乏学者とは思えません。何者ですか飛鳥さん。それを完成させて、悪の組織を潰して回る早川も何者なんだって話ですが。

飛鳥が倒されたあと、早川はギターで「二人の地平線」という曲を弾き語るようになるんですが、早川を演じる宮内洋の歌が微妙にアレな感じなのがまた(てつをよりは常識的な範囲ですが)。

  • ボス: 地獄竜
  • 用心棒: ランカーク(射撃の名人。ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 爆破犯人!

2話 炎の中の渡り鳥

登場する用心棒、居合いの名人である風 流之介が妙に死神博士っぽいな、と思ったら天本英世ご本人でした。悪の組織・ブラックハート団が大規模な賭博場を建設するために、建設予定地に建っているレストランに暴力行為を働いて立ち退きを要求するというストーリーに、妙な生々しさを感じずにはおれません。これホントに子供向けの特撮番組なんでしょうか。レストラン経営者のじいさんの孫娘の一人称が「あたい」なのが萌えポイント。ズバットが畳返しで居合いに対抗するのも面白い。

  • ボス: ブラックスター
  • 用心棒: 風 流之介(居合いの名人。ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 放火殺人犯人!

3話 悲しき純金の天使

何よりも金が好きなボスの金仮面、胡散臭い英語を使う用心棒の殺し屋ジョーが最高。

早川「殺し屋ジョー。金仮面の用心棒。そして日本じゃ二番目のナイフ投げの名人」
ジョー「hahahaha……ワッチュアネイム!!??」
早川「早川健。さすらいの私立探偵さ」
ジョー「ha?ミスターハヤカワの仰るには、ミーのナイフ投げは二番目だと。それじゃあ日本一は誰なんだ?ha?」
早川「ヒュウ(口笛)チッチッチッチッ」⇒自分を指さす
ジョー「気に入ったぜユー。自惚れってのはいいもんだ」

このハタから見てるとコントにしか聞こえないセリフの応酬、まさにズバットの魅力が凝縮されたワンシーンでは無いかと思います。

  • ボス: 金仮面
  • 用心棒: 殺し屋ジョー(ナイフ投げの名人。ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 殺人犯人!

4話 涙の敵中突破

用心棒がワルツ・リーという名前の拳法使い……ってどう考えてもブルース・リーのパロディでありながら、その姿はチャイナ服を着たどこぞの中華料理屋の店主みたいな感じなのがたまりません。しかもこのワルツ・リー、ズバットに変身する前の早川にやられてしまいます。たぶん一番弱い用心棒なんじゃないでしょうか。

この話で登場する誠という名の青年が、いつも早川の後を追いかけている飛鳥の妹・みどりに惚れてしまうという展開もありながら、敵に狙われたみどりを庇うため「撃つなら俺を撃てーー!」と叫んだところホントに撃たれて死んでしまうという展開が非常に泣けます。ゲストキャラの命が非常に軽いです、ズバット

  • ボス: 鬼の勘三
  • 用心棒: ワルツ・リー(拳法の名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 極悪殺人犯人!

5話 花売り少女と白い粉

サブタイトルがヤバイ。本当に子供向けのドラマでしょうか。「白い粉」はまんま麻薬の意味ですが、その麻薬により廃人状態になった人間までもが描かれており、ある意味麻薬の怖さを子供に伝えるコトには成功しているのかもしれません。

用心棒はビリヤードの名人と、もはや殺傷能力とは無縁の世界に突入してしまっておりますが、ズバットと戦う際にはキューの先端から刃物が飛び出して槍のようにキューを振り回して戦っています。……槍使いの名人ではダメだったんでしょうか。

  • ボス: 紅蜘蛛
  • 用心棒: 必殺ハスラー(ビリヤードの名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 「殺人未遂麻薬犯人」!!

6話 海にほえるマシンガン

登場する用心棒がいわゆるインディアンっぽい感じのトマホーク投げの名人なんですが、ずっとカタコトの日本語で喋っており、現代でこのキャラ登場させたら差別問題に発展しそうな気がしないでもありません。

早川の友人である刑事・東条進吾の登場シーンが多く、彼の早川=ズバットに対するスタンスや考え方が描かれているのが印象的。東条は警察官として、また友人として早川が独りで悪の組織を潰して回っているのを好ましく思っておらず、早川に対して「お前は手を出すな、警察に任せろ」と諭したりして。「お前が動くと巻き添えを食う人間が増える」とキツいことも言ってますが、まぁこの辺は早川の身を案じてのツンデレ心の表れでしょう。

早川・東条・飛鳥の関係って今ならBLネタとしてその筋の方にはウケそうな気がするけど、いかがなもんでしょうか。

  • ボス:海賊キッド
  • 用心棒: レッドボワ(トマホーク投げの名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 銀行ギャング殺人犯人!

7話 悪い風だぜ 港町

たぶん6話とロケ地が同じ(伊東温泉らしい)。用心棒がプロレスラーのミスター珍演じる「グレートコング」という名前の男なんですが、何の名人なのかが明示されないんですよね。早川もテーブルや椅子を破壊するグレートコングを見て「結構な腕前だ、見たところ日本じゃ二番目ってところかな」と言うだけで。この話と12話「死刑執行10秒前」に限っては、ほとんどの話の脚本を手がけている長坂秀佳以外の人が脚本を書いているというコトで、その辺も関係しているんでしょうか。

  • ボス:不死身の道斎
  • 用心棒: グレートコング(??の名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 誘拐犯人!

8話 哀しみのプロパン爆破

これもサブタイトルだけで笑えてしまいます。さらに、冒頭巨大ブルドーザーのショベルの上でギターをかき鳴らす早川がまた笑えます。どうしてそんなとこで歌っているんだ。ほいでもって敵のボスがミッキー蛇山という胡散臭い名前のおっさんで、あろうことか市長選に立候補しているというのも笑えます。悪の組織って表には出ずに裏から政治家を操ったりしてそうなイメージですが、自ら堂々と立候補するその気概は評価されても良いんじゃないでしょうか。

あと、用心棒の仕込み杖の名人・地獄市はあからさまに座頭市のパク……オマージュであり、目隠しをしていることから盲人なんだろう……と思わせておきながら、ズバットに目隠しを取られるや目を開いて戦うというフェイントぶりは見事でした(?)。

  • ボス:ミッキー蛇山
  • 用心棒: 地獄市(仕込み杖の名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 プロパン爆破殺人犯人!

9話 涙の河を振り返れ

ズバットに登場するボスは基本的に弱っちく、だからこそ用心棒を雇っていたりするワケですが、この話に登場するボス・鉄の爪はなかなかの武闘派。外見は蝶野正洋をひょろっちくした感じですが。そのおかげもあってか、早川を追い詰めてマシンガンを何発も叩き込むコトに成功しますが、その後ズバットに変身した早川、何事も無かったかのように敵をぶちのめしてしまいます。どういうことなの。

ボスが武闘派である一方、用心棒は釣りの達人というのがまた。どうやってズバットと戦うんだと思ったら、釣り竿で手榴弾を引っかけて投げつけるっていう。……手で投げた方が早くね?最後はズバットのムチにより手榴弾の上に放り投げられ爆死するという、その残念な散り様に涙を禁じ得ません。

  • ボス:鉄の爪
  • 用心棒: 釣師十兵衛(釣りの名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 殺人犯人!

10話 野球の敵を場外へ飛ばせ

「野球の敵を場外へ飛ばせ」。シリーズ通して一番面白いサブタイトルではないでしょうか。いやこのセンスはすごい……。

ゲストとして原作の石森章太郎(「石ノ森」では無い時代です)が元プロ野球選手(三塁手)役で出演。さしずめ、石森章太郎こそ漫画界の長嶋茂雄だ、というコトでしょうか。となると、王貞治手塚治虫

この話で、普段早川がギターで弾き語っている『二人の地平線』という曲が、飛鳥五郎の作曲(作中の設定上は)だということが判明。どんだけ多芸なんだ飛鳥。相変わらずツッコミどころの多い展開ではありますが、意外と石森章太郎の出番も多いのでそれだけでも観る価値のある話と言えましょう。

  • ボス:黒やもり
  • 用心棒: トミー(トランペットの名人、ただし腕前は日本じゃあ二番目)
  • カードの文言: この者 殺人犯人!!

……というワケで、また20話くらいまで観たら感想の続きを書きたいと思います。にしても、世間が『アナ雪』のテレビ放送で盛り上がっていたり、オタ界隈が『けものフレンズ』で盛り上がっていたりする中、黙々と『快傑ズバット』観てる人って日本で何人くらい居るんでしょうか。