大須は萌えているか?

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F1[18] 中国GP 決勝

予選以上にナナメ上の展開が待ち受けておりました、F1中国GP決勝。

まさかのレッドブル

表彰台に立った面子を見てみると、3位のライコネンと2位のボタスは予選順位から見てもそこまで意外なモノではありませんが、なぜかその中央には満面の笑みを浮かべるリカルドの姿が……!これはちょっと予想外、というか予想外すぎる展開でした。そうでなくともリカルド、FP3でターボぶっ壊してあわや予選出走は無理か?という状況まで追い込まれてたのに……。

レッドブルにとってこのレースの決め手となったのは、トロロッソの2台が同士討ちを演じたコトによって散乱したデブリが原因で出動したセーフティカー。トップ集団の各チームともワンストップ作戦を前提にスティントを組み立てて既にピットストップは完了している状態、ただレースはまだ25周残っておりミディアムで引っ張るにはやや不安が残る、できればフレッシュタイヤに履き替えとくに越したコトは無い……というめっちゃ微妙なシチュエーション。

しかしながら、セーフティカーの表示が出た瞬間、先頭を行くボタスとベッテルはちょうどピットエントリーを通り過ぎるタイミングで反応するコトは不可能。そしてその後ろから来ていたレッドブルの2台はピットの咄嗟の判断でダブルストップを決断(リカルドがピットインの指示を受けたのはターン14)、ピットクルーも完璧な作業でこれに対応。これによりフレッシュなソフトタイヤを履いたレッドブルの2台、そりゃもう速い速い。

実のところ、レッドブルの2台の間にはハミルトンも居たんですが、メルセデスはハミルトンのピットインを見送る決断。あとから「これは失敗だった」というのは簡単なんですが、トラックポジションを維持した方が良いのではないか、という判断もこの瞬間に於いては間違いでは無かったと思いますし、それを失策だったとは言えないのではないかと思います。なにより、メルセデスはこの時点で新品のソフトタイヤはもう在庫切れだったし。

“The two Red Bulls were bold enough to pit for tyres, we thought track position was more important,” said Wolff, after Bottas came home second, with Hamilton fourth.

“We got it wrong, they got it right and they probably deserved to win. “Afterwards you always look more clever,” added Wolff, when asked if Mercedes should have at least brought in Hamilton. “Now, 30 minutes after the race, yes we should have pitted him – you always look more clever [afterwards].”

via: Wolff on Mercedes - We need to get our act together

タイトル候補の最右翼たるメルセデスフェラーリの動きを見ながらのコンサバな作戦になるのはやむを得ないし、挑戦者たるレッドブルは大胆な動きに出やすい。これはもうそういうモンでしょう。あるいは、予選でタイヤを余分に使っていた時点でメルセデスはすでに負けていた、とも言えるかもしれません。

この時点ではリカルドの前に居たフェルスタッペン、アグレッシブな動きでハミルトンをかわそうとするも、高速コーナーでコースオフしてしまいリカルドが先行する形に。ほいで、ここからのリカルドのオーバーテイクショーが凄まじかったですね。

RACE: Ricciardo passes Hamilton , Vettel & Bottas(動画)

リカルドのオーバーテイクって、そのスーパーレイトブレーキングでもタイヤを全然ロックアップさせないという精密なブレーキコントロールが素晴らしいのと、なにより相手の動きを非常に良く見てますよね。川井ちゃんが絶賛していたボタスのオーバーテイクなんかはまさにそうで、軽く右にフェイント入れたボタスが一瞬見せた隙を見逃さずにズバッと入り込んでいる。素晴らしいとしか言いようが無い。

また、リカルドのスーパードライビングだけでなく、咄嗟のダブルストップを指示したピットの判断力、ダブルストップを完璧にこなしたピットクルー、さらには金曜の予選でPU載せ替えを間に合わせたメカニック、これらが全て揃ったからこそ実現できた、まさにチームが一丸となってもぎ取った勝利でした。久しぶりに、「常勝軍団」だったレッドブルの凄みを感じましたね。

一方でフェルスタッペンはターン14でベッテルにぶつかってしまうというミスを犯してしまい、レッドブルの1-2フィニッシュは幻となってしまいました。

RACE: Late drama as Verstappen runs into Vettel

これについてはフェルスタッペンも自身の非を認め、10秒のタイムペナルティとペナルティポイント2という比較的重めの罰則が科されましたね。しかし、フェルスタッペンのコメントが実に「らしい」感じ。

Asked if he needed to calm down, he said: "It's easy to comment. At the moment, it is not going the way I like. Does it mean I have to calm down? I don't think so. It is very unfortunate those things happening. I just need to analyse everything and come back stronger for the next race."

via: Chinese GP: Max Verstappen believes he does not need to calm down - BBC Sport

「落ち着く必要があるとは思えない。こういうことが起きたのは不運だった。すべてのことを分析する必要があるし、次のレースに向けてより強くなって戻ってくるよ」てな感じでしょうか。「やらかし」が多いのは事実ですが、その分彼の速さは本物だし、そのやらかしてる内容も「危険なドライビング」というワケではなく、一歩……というか半歩くらい限界を行き過ぎちゃってる感じなんですよね。そこをコントロールする術を学んでいって貰えればな、と。

まあ、キャリアの半分を通り過ぎちゃってるドライバーにしてみれば、1戦1戦が大事なので後ろから若者に突っ込まれると「テメエなんだコノヤロウ」って言いたくなるのもそれはそれで仕方ないです。これがレースです。

ライコネンの気の毒さが増している

以前から「ベッテル・ファースト」をあまり隠そうともしないフェラーリですが、今回もライコネンはなんかロコツに冷遇されていた感がありますね。ちょっと良いスタートを決めたらベッテルにロコツな幅寄せをされて順位を落とし、かと思ったら今度はいつまで経ってもピットからお呼びが掛からずにポジションを失う羽目になり、挙げ句ピット入る前にベッテルvsボタスの壁役にされたりもして。

ライコネンにはコンスタントにポイントを稼いでもらいたい、ただしベッテルの後ろでな!と言わんばかりの感じですが、今回はそのベッテルもピットストップをやや遅らせた結果、ボタスのアンダーカットを許してしまったんだからフェラーリが単にアホすぎるだけ、って気がしないでもないですが。ていうかフェラーリのストラテジストってどんな仕事してるんですかねマジで。レッドブルメルセデスは出来うる限りのコトをやっている感じがしましたが、フェラーリお前はダメだろ。

開幕2連勝で勢いが出たかに見えた跳ね馬ですが、やっぱりこのチームはチャンピオン取れるようなチームじゃないんじゃ……という疑念がどうも拭えません。

それでもレース展開のアヤで、ライコネンベッテルの前、3位表彰台でフィニッシュできたのは不幸中の幸い(チームに取ってはそうでもないかも知れませんが)でしたが、実はもう一つ、ライコネンは運に恵まれていたのでした。

Q: (Keren Wang – Top Driver) Daniel, why didn’t you share your shoey with Valtteri and Kimi?

DR: To be honest, actually I don’t know if I’ve ever offered it to Kimi but to be honest I sprayed most of the champagne so I didn’t have that much more and obviously I saw my number one mechanic Genty (Chris Gent) and he was the priority at the time. There wasn’t enough to go round today unfortunately. Hopefully there’s plenty more opportunities.

Q: Kimi, would you accept a shoey?

KR: Lucky for us…

DR: Maybe next time. It’s a privilege.

via: FIA post-race press conference - China

記者会見で「なんでバルテリとキミにはシューイを分かち合わなかったの?」と質問されたリカルド、「実のところ、シャンパンがあまり残ってなかったんだ。願わくば、これからもっと沢山の機会があるといいね」とコメント。「キミ、そしたらシューイを受け入れる?」と訊かれたライコネン、「僕らはラッキーだった……」とポツリ。お酒大好きライコネンでも、シューイだけは全力で回避したいようです。もうレッドブルに負けるワケにはいかんですね(?)。

なお、今回表彰台インタビュアーを務めたマーティン・ブランドルは、昨年内耳炎を患い長期間体調不良に見舞われてたりしたんですが、オーストリアGPでリカルドに飲まされたシューイが原因では?なんて噂が立った(ブランドル自身がネタにしてたけど)りもした因縁の持ち主。一番ホッとしたのはブランドルだったりして?

そのほか

結果的に、親チームであるレッドブルの好アシストをする形になってしまったトロロッソの2人ですが、どうもハートレイとガスリーのポジションを入れ替えようとして起きた事故みたいですね。

I apologise to Brendon for the contact we had, the team told me that they were going to switch our positions so I went on the inside of the back straight thinking he would give me space. Unfortunately, I don’t think he saw me and once I was on the inside there was nothing I could do.

via: What the teams said - race day in Shanghai

「ターン14でブレンドンが譲るよ」と言われて、ガスリーはスッとインに飛び込んだところ、ハートレイはターン14を曲がりきった立ち上がりで譲るつもりだったので、結果的にドアを閉める格好になってしまったようで。まあ不幸なコミュニケーションミスですが……。ガスリーはコーナーで抜くつもりなら、もっと手前からハートレイのサイドミラーに自分を映して「今からイン行くぞ!」ってアピールした方が良かったんじゃないかな。

こういう直接言葉を交わせないドライバー同士の呼吸って、若いドライバーにはまだなかなか体得しきれてないモノなのかも。こちらもリカルドと比べてしまうと未熟さが浮き出た格好とはなりましたが、ガスリーが持っている速さも光るものがありますからね。これを糧に、さらなる成長を期待したいところ。

今回はアロンソフェラーリベッテルオーバーテイクするという貴重なシーンが観られましたが、その際タイヤ同士を接触させたコトについてベッテルは不満のようですね。

Fernando Alonso: Chinese GP Sebastian Vettel pass 'not fair fight' - F1 - Autosport

ただ、これでアロンソは3戦連続ポイントゲット、ドライバーズランキング6位というのは堂々たるモノです。もちろんアロンソは6位で満足できるドライバーではないハズですが。しかし、このストレートの長い上海で、どうにも直線が遅いマクラーレンできっちりポイント獲ってくる辺りはさすがアロンソと言わざるを得ません。バンドーンがポイント圏外に沈んでいるので尚更。てか、今頃バンドーンは「アロンソのチームメイト」という立場の難しさを噛みしめているのかも。

あとさらにもうひとつ、セーフティカーが入ったタイミングについてもベッテルは苦言を呈しているみたいですね。

Formula 1: Vettel says safety car timing was 'not right' in China - F1 - Autosport

確かに、セーフティカーが入ったのはトロロッソ接触によりデブリがまき散らされた「直後」というワケではなく、またトップの2台がピットエントリーを通り過ぎようとするジャストタイミングで出動しているのは確か。これを「意図したもの」と考えるのは邪推が過ぎるとは思いますが、セーフティカーによってトップを走っているクルマが一番割を食うのはどうなのよ、と恨み言を言いたくなる気持ちはまあわかる。

開幕3連勝も見えていたハズのベッテルにしてみれば、文句だらけの週末になっちゃいましたね。