大須は萌えているか?

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続・セクハラの話

最近、F1以外の記事をぜんっぜん書いて無いコトに気付いたので、それとなく違う話題も書いておきたいと思います。

最近、どこかの事務次官さんのアレでセクハラの話題がまた盛り上がっている感じがしますが、この騒動もなんかちょっと冷めた目で見てしまうところがあります。被害に遭った女性記者や加害者である事務次官に対してではなく、ネット上の反応に、ですけども。いやなんかさー、結局また加害者に対する個人攻撃に収束していっちゃってる気がしましてね。

昨年末にもはあちゅう氏の騒動を眺めながらセクハラに関する記事をちょろっと書いたりしてたんですけど、ちょっと自己引用。

ただもちろん、そういう他者に対するパワハラ・セクハラを許せというワケでは無くて、不快に感じる行為に対する批判は必要だと思うワケです。特にはあちゅう氏が告発した岸勇希氏という人の行状は、これ刑事事件にできるんじゃねーのくらいの行為に見えますし。さすがにこれは論外。困ったコトに、これに類するような人は電通のみならずいろんな場所に居るので、この告発には大きな意味がある。

ただ、その告発の目的というのは、岸という人を社会的に抹殺するコトにあるワケではなくて、これを通じて岸氏本人と、同様の行為をしている人間にそれを止めさせる、というものであるべきだろうと。それと同時に、加害者である自覚が無い人に対しても、「ひょっとしたら自分も」という自省を促すトリガーになれば理想的なのではないかと。

これが「岸というセクハラパワハラ野郎を血祭りに上げろ」っていう個人攻撃になっちゃうと、「こいつも似たようなコトやっている」とか個人攻撃が拡大していって魔女狩りの様相を呈していくでしょうし、その騒動を眺めている人は「俺関係無いし」って思っちゃうし。

via: セクハラの話 - 大須は萌えているか?

セクハラとかパワハラの一番の問題って、いじめの問題ともリンクする部分があるように思うんですけど、加害者側が「こんなの大した問題じゃないでしょ」「こんなのセクハラのうちに入らないでしょ」って認識を持っていて、いつまで経っても問題が是正されない、被害者が我慢するしか無い状態に追い込まれるっていう点にあると思ってます。

んで、Me too運動のように被害者が世界中でそれを告発する意義というのは、「セクハラは大きな問題である」と世間に認識させ、加害者として身に覚えの有る人には自省を促し、被害者として身に覚えのある人には「一人で我慢しなくて良い」というメッセージを発するという点にあるのかな、と思ってます。

しかしやっかいなのは、これもいじめの問題と同様、誰でも被害者になり得るし、加害者にもなり得るというコト。また、加害者=男性というイメージが強いですが、意外とそうでもない。自分が最初に働いてた書店では古株のパート女性から今思えばセクハラ紛いの言動を受けていたし(入荷してきたエロ本見せて「あんたこういうの好き?」とか)、とある職場ではめちゃくちゃ短気な女性上司が机蹴り飛ばして怒鳴り散らしたりしてたし。

んで、どうあれ加害者となった人間を許すな、全員クビにしろ……という話では無いと思ってます。これは誰でも加害者になり得るコトであり、被害者である人が、別の人に対しては加害者であるケースも結構あるんじゃないかと思います。人は社会においていくつもの役割を負っており、その時々の役割によって加害者と被害者の立場がくるんと入れ替わるっていうのは十分あり得る話で。

先に挙げた女性の皆さんも、仕事はバリバリできる人たちなんです。仕事ができるからこそ、そのプライドが高いからこそ、相手に対して不躾な言動をしてしまうとも言えます。でも、自分のさらに上役の人間からはもっとどぎついコトを言われてるかも知れない。こういうのってある意味人間の本能的な部分の問題とも言えますし、社会のシステムの問題であるとも言えます。セクハラ・パワハラするのは男だ、だから男を許すな、とか、あるいは特定の個人を血祭りに上げたりするのは、却って問題を矮小化してしまうのではないかと。

私自身、仕事上でセクハラ・パワハラに該当するような言動は慎んでいるつもりですし、今まで訴えられたりしたコトはありませんが、しかし実は誰かの内心でセクハラ野郎・パワハラ野郎というレッテルを貼られている可能性が全く無いとは言い切れません。そういう点でも、「セクハラ=悪、セクハラをするようなヤツはクビになって当然」というモノの見方には与するコトができません。いつブーメランになって返ってくるかわからないもの。

被害者が告発しやすくなるような仕組みを作る、というのはもちろんそうあるべきなんですが、同時に加害者にも反省し襟を正す機会を与える、というコトでもあって欲しいなあ、と思います。「セクハラ・パワハラというのは被害者がそう感じれば成立するのである、そして加害者は即クビな」みたいな話になってっちゃうと、加害者はいつまでも己の非を認めようとしないでしょうし、被害者が告発しても「お前もこういうことやってたやんけ」と言われて泥沼化するパターンがいつまでも無くならない気がしてて。

まぁ例の事務次官は、相手がテレ朝の記者だとハッキリしてからものらりくらりとした弁解をしているので、叩かれるのもやむなしな感はありますが……。ただ、誰かを叩いて終わっちゃダメなんですよ、この話。