スタート開始直後のド派手なクラッシュのインパクトが強すぎて、その後の展開がすごく地味に見えたF1ベルギーGP決勝。
- 決勝結果: FORMULA 1 2018 JOHNNIE WALKER BELGIAN GRAND PRIX - RACE RESULT
- 決勝ダイジェスト: REPORT: Vettel defeats Hamilton in Belgium to narrow title race(動画有)
- 決勝後各チームコメント: What the teams said – race day in Belgium
- 決勝後記者会見: FIA post-race press conference - Belgium
パワーでさらに抜きん出たフェラーリ
予選ではポールをハミルトンに譲ったベッテルが、決勝では1周目のケメルストレートで易々とハミルトンをパスし、そのままきっちり逃げ切っての優勝。メルセデスとフェラーリはともにこの週末に新型PUを投入したみたいですが、パワー面に於けるフェラーリの優位性はさらに高くなったようにも感じられますね。
このフェラーリのパワーに対して、ハミルトンは「何か『トリック』がある」とコメントし、記者会見で「つまりそれってフェラーリが違反行為をしているってこと?」と質問されて「トリックってのは『何か特別なこと』という意味で、フェラーリのやってることが違法か合法かなんて知らんがな」みたいなコトを言い返したりしていたみたいですね。
Q: Something special that’s legal?
LH: Just something special. I don’t know. I don’t know what’s on their car so I couldn't tell you either way.
にしても、パワーがモノを言うこのスパで、フェラーリが2009年以来の優勝を飾ったのはちょっと興味深い流れかもしれません。次のモンツァも強烈なパワーサーキットだし。もしモンツァでもフェラーリ勝てたら、2010年のアロンソ以来の地元優勝ってコトになりますか?
しかし、まだハミルトンとベッテルのポイント差は17点あり、ダウンフォースも含めたトータルパッケージでメルセデスが優れているのも間違い無いところなので、ハミルトンにしてみればまだ慌てるような時間じゃない、って感じでしょう。まーモンツァ、シンガポールもベッテルが勝ったりするようなコトがあった場合、ちょっと慌てた方が良い気もしますが。あるいはハミルトンが何かのトラブルで大きくポイント取りこぼしちゃったりとかね。
かつての「ミサイル」を思い起こさせるクラッシュ
スタート直後に発生した、ヒュルケンベルグのブレーキングミスをトリガーにした多重クラッシュ、2012年のグロージャンを思い返した人多かったでしょうねえ。ていうか、咄嗟に2012年の映像が中継で流れてたのスゴかったですね。まあ。最近の国際映像ってスタート前のコース紹介で過去の名場面ダイジェストみたいなの流しているし、その絡みで2012年の映像も用意していたから、ってのもありそうですけど。
2012年のグロージャンは次のイタリアGPの出場停止(+罰金)という裁定を下されたワケですが、今回のヒュルケンベルグについてはイタリアGPでの10グリッドダウンペナルティ+ペナルティポイント3という裁定。2012年当時はペナルティポイント制度が無く、その時とは判断基準が違う、という話みたいですが。
多重クラッシュ引き起こしたヒュルケンベルグに、次戦降格ペナルティ。2012年の失格裁定との違いも説明
まー、グロージャンの場合は「またグロージャンか!」って感じでしたし、なんかそういう積もり積もった心証の悪さみたいなモノが影響したような気もするんですが。あの時は井出と同じようにスーパーラインセス取り消せ、と言ってるファンもちらほら見かけたもんなあ。
にしても、今回事故を起こしたマシンが、2012年グロージャンが乗ってたロータス・ルノーを引き継いだルノーワークスのマシンだったというのは何かの皮肉でしょうか。オマケに、アロンソは前回も今回も巻き込まれちゃったし。前回はアロンソのマシンの上にグロージャンのマシンが飛び乗る格好でしたが、今回はアロンソがルクレールのマシンに飛び乗る側でしたね。
前回のクラッシュはアロンソの頭部にマシンが当たるんじゃないかというヒヤッとするシーンでしたが、今回はルクレールのマシンに取り付けられたヘイローがしっかり仕事をし、幸いルクレールも無事。まー確かに、こういうシーンを見るとヘイローは必要だね、と言わざるを得ません。カッコ悪いけど。
この事故でリカルドもリヤウイングを失い、さらにそのリカルドに追突されたライコネンもタイヤバーストにDRS故障という目に遭い、どちらもしばらく走行した後にリタイヤしているので、都合5台のマシンがこの1クラッシュでレースを棒に振ってしまったコトになります。スパは時折こういう大クラッシュ起きるよなあ……。
アロンソのイメージ戦略?
そういやこのブログで話題にしてませんでしたが、夏休み中に来季F1に乗らないコトを宣言したアロンソ、事実上の引退宣言と解釈できますが、ただF1復帰自体に含みは残しており、要は「勝てるシートが空いてるなら復帰する」というコトですよね。メルセデスとフェラーリが2020年のレースシートをアロンソにオファーしてくるとも考えにくいため、マクラーレンが勝てるチームになっていれば……なんてコトを言っているようですが、もしメルセデスがシートをオファーしてきたら1も2もなく飛びつくでしょうアロンソ。
オマケに、「レッドブルから2019年のシートのオファーがあったけど蹴ったった」みたいなコメントをして、それに対してホーナーが「ウチからアロンソにオファーしたのは2007年の1回だけ」と反論されるという不毛なやりとりも発生しているようで。
レッドブル、アロンソへのオファーは2007年の一度だけ | Red Bull | F1ニュース | ESPN F1
アロンソにしてみれば、「トラブルメーカー」という印象を強くさせるホーナーのコメントは許容し難いんでしょうね。ブリアトーレまでホーナーに文句言ってるもんなぁ。アロンソにしてみれば、「いやいや俺はチームプレーヤーだよ、チームメイトがハミルトンだろうとベッテルだろうと上手くやれるよ」と言いたいのかもしれません。WECトヨタチームでは徹底したチームプレーヤーとして振る舞い株を上げているアロンソ、しかし今までの数々の政治的な言動を考えると、これすらも「イメージ戦略」の一環なのでは、と勘ぐりたくなるんですが、さすがにゲス過ぎますかね?
レーサーとしての才能は間違いなくF1史上でもトップクラスですよアロンソ。なんせあのミハエル・シューマッハに一度は引導を渡した男ですもん。インディ500でもWECでも並外れた順応性を高さを示しているし、ホントならもっとF1に居てほしいレーサーであるのは間違い無い。ただ、やっぱりどーも彼の「振る舞い」に色んな作為を感じちゃって。ブリアトーレにいろいろ吹き込まれているのか知りませんけど。
以前見かけた、マッサのアロンソ評が個人的にはしっくりきます。
「フェルナンドにはひとつ問題があるんだ。バイザーを下ろしたら彼は別の人格になる。彼はチームを真っ二つにすることができるんだ。そのことは彼が所属してきたたくさんのレーシングチームで見受けられていた」
「僕はそれが彼の問題だと見ているんだ。もしかしたらそういう特質がなければ、彼は才能をもっと生かせたかもしれないね」
モンツァで日本GPの継続が決まる?
あとこれもベルギーGPとは関係ないんですけど、次戦モンツァにおいて、日本GPの開催継続についての詰めの交渉が行われる模様。
F1日本グランプリ、開催契約延長に向けて大詰め。「来週にはいい報告をできると思う」
なんですけど、記事内のコメント読んでると、継続できたとしても当面相当に厳しい状態なのは間違い無さそうですね。
山下社長がモンツァで決断を下すにあたっての最大の要件は、「今後F1のお客様が増えていくと思えるのかどうか」だという。
「そう思えるのであれば来年以降も継続開催する判断をしますし、そう思えなければ、やり続けると我々の会社が立ちゆかなくなってしまうレベル。それを最終的に判断し、モンツァで発表できればと思っています」
開催を続ければ続けるほど、会社(モビリティランド)が立ちゆかなくなるってね……。一番お客さんが入っていたときでも大もうけどころかトントンレベルだったみたいですし、イベント単体としてはサーキット側は全然儲からないというのがF1。メルセデス・ベンツやセバスチャン・ベッテルが居る今でも、ドイツGPもヒイヒイの状態だしなあ。バーニーさん体制が崩壊して、もうちっとサーキット側の利益も重視する形になっていくのかなーと思いきや、やっぱり一筋縄じゃいかないようで……。
鈴鹿サーキット側でもいろんなイベント企画したりとかして、目一杯の営業努力をしているのはひしひしと感じられるので、あとはもうF1そのものの魅力をもっと上げていくしか無いっていうのはありますよね。これはサーキット側ではどうしようもないコトで。
開催継続が決まったとしても、この情勢だとホントにいつまで「鈴鹿のF1」が続くのかは不透明。ただまー、今までずっとF1観てきた身としては鈴鹿に愛着ありますし、こういう状況だからこそ現地に足を運びたいな、という気持ちはありますね(前は自宅観戦でいいや派だったんですが)。マックス・フェルスタッペン級の日本人ドライバーが登場すれば、鈴鹿のスタンドも日の丸カラーを身に纏った観客で埋まるんだろうか(それはそれでちょっとコワイけど)。