いつになっても無くならない、飲食店やコンビニの従業員が悪ふざけしている様を動画でネットに投稿し、それがTwitterで拡散する騒動。なんかくら寿司のケースは訴訟騒ぎにまでなってしまっているようですが。
くら寿司、不適切動画の従業員2人に刑事、民事での法的措置へ 信用回復と不適切動画続出に一石投じるため - ねとらぼ
以前、吉野家でも「テラ豚丼」騒動なんてのがあったよなあ、なんて思ったりしましたが、あれももう10年以上昔の話ですか。
それはさておき、この騒動を巡ってこんな記事を見かけたんですけども。
要するに最低賃金周辺の賃金で雇用がされているということだ。
これらの賃金でやりがいを持って、その企業や店舗に愛着を持って、熱心に働いてもらえると思うだろうか。
もちろん雇用されたからには業務を遂行することが求められるわけだが、責任ある業務を最低賃金周辺の給与で雇う従業員にさせることが適切なのだろうか。
via: くら寿司もセブンイレブンもアルバイト店員の時給が安すぎるー繰り返される「バイトテロ」問題ー(藤田孝典) - 個人 - Yahoo!ニュース
騒動が起きた店のアルバイトの時給はその都道府県の最低賃金ギリギリのラインであり、これでは責任をもった仕事はできなかろう、という意見。貰えるお金が安いから仕事に対する愛着が湧かない、責任感も生まれない、それゆえにこうした「バイトテロ」が発生する、というわけなのですが、これはどうも違和感があるんですよね。
この理屈だと、高給を貰っている人は皆責任感を強くもち、仕事に愛着を持って日々真面目に業務に邁進していないとおかしいコトになりますが、世の中を見ていればそんなコトは全然無いという事実にすぐ気付いてしまうワケで。上場企業の幹部や、国家公務員の不祥事なんかも日々ニュースになっておりますな。
ただ、こうした「バイトテロ」問題と、高給取りな人たちの不祥事はその内容が大きく違うというのも事実。少なくとも、高給取りの人たちは社員食堂で食材をゴミ箱に叩き込んだりする様をSNSにアップして炎上、なんてコトはしません。もっとバレないようにこっそり、私的な欲求を満たすための不祥事を行う。要は、やらかす不祥事の内容が異なってくるだけの話であります。
企業や仕事に愛着を持つかどうかって、賃金とはまったく比例しないものだと思ってます。実際、めちゃくちゃ有名な企業に勤めてて、すげー年収貰ってるハズの人でも会社に対する不満めちゃ抱えてる人ぽこぽこ居ますし。その理由は様々ですが、ありがちなのは「自分のやりたい仕事ができない」だとか、「誰でもできるような仕事しか任せて貰えない」っていうのがよくあるパターンですかね。逆に言うと、自分の裁量で仕事を回すことができて、自分がやりたい仕事がやれている人は多少給料が安くても不満は無かったりもするワケで。これが行きすぎると「やりがい搾取」みたいな話になるんですけど。
んで、不祥事がよく起きているコンビニや飲食店というのは、どれも有名なチェーン店なワケですね。大手チェーン店というのは全国どこの店でも均一のサービスが提供できるよう、業務の内容が事細かにマニュアル化されているワケです。これにより、今まで接客の経験が無かった学生でも、すこしトレーニングすれば店頭で働けるようになるワケですが、裏を返せばこれは「換えが効く」というコトでもあります。
世の中、ルーチンワークを正確にこなすのが得意という人も居るので、そういう人にとってはこうしたマニュアル化された仕事というのはやりやすいワケです。ただ、一方でこうした仕事を退屈だと捉える人も居る。そういう人にとって、仮に時給が最低賃金を500円くらい上回るラインに設定されていたとしても、仕事に対する愛着は芽生えないと思うんですね。
もちろん、仕事に対する愛着が無いから悪ふざけをして良いって話にはならないんですが、「ルールを破って悪ふざけする」というコトに面白さを感じてしまう人間というのも常に一定数居るものです。学校なんかでも規則を破って先生を怒らせたりする生徒が「面白キャラ」としてクラスに認知されたりするコトは良くある話で、その「成功体験」をバイト先にも持ち込んでしまう人間が居るのも不思議じゃないよなあ、と。
このとき、勤め先が有名なチェーン店で、従業員に対して厳格なマニュアルが定められていればいるほど、それが逆効果に成り得ます。その学生バイトが、ルールを破ってみせたときの「面白み」が増すと考えてしまうから。あの誰でも知ってるお店で、こんな悪ふざけしちゃいますよーって。これは、時給を上げたところで防げない感情だと思うのです。
この手の話はSNSが普及する以前からあり、自分が学生だったときにも有名な飲食チェーンでバイトしていたヤツが「一度厨房で働くと、あそこで飯を食う気が失せる」などと言っていたのを思い出します。SNSによってそれが可視化されるようになった、という話であり、以下の記事なんかは非常にしっくりくる内容ですね。
くら寿司動画炎上で考える、バイトテロが繰り返されてしまう理由(徳力基彦) - 個人 - Yahoo!ニュース
一方で、飲食店なんかはバイトの人員確保にも苦戦しているところが多いようで、せっかく来てくれたバイトにあまり口うるさいコトを言いたく無い、という社員も結構いるんじゃないかな、という気もします。また、口うるさく言ったところで、却って「ルール破り」に対する情熱をかき立ててしまう可能性も否定はできません。……いや特に若いときってさ、自分の身に降りかかるかもしれないリスクをやたら過小評価っていうか、まるで理解してなかったりするじゃないですか。いや年を取っても理解してないことも多いけど。クルマの運転とかね。
正直、時給を上げるとか、教育をしっかりやるとかで解決できる気がしないんですよねーこういう問題は。くら寿司みたいに訴訟沙汰にして脅す、というのもひとつの手段なのかもしれないけど、これもまあ時間の経過と共に効果が薄まっていきそうな……。AIによる動画解析がもうちょっと進化したら、店内の監視カメラで従業員の不審な動きを自動検知して、本部の担当部署に自動通知されるような仕組みが作れるかも……ってそれはそれで嫌な社会だなあ怖いなあ。