大須は萌えているか?

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違法薬物と自粛の話

先日、電気グルーヴピエール瀧が麻薬取締法違反容疑で逮捕されたとかってニュースになってましたね。しかしピエール瀧って、ミュージシャンだけでなく役者・声優としても色んなドラマや映画、ゲーム等に出演しまくっていたもんだから、この一報をトリガーに自粛騒動が広がりまくっているようで。

「過去作の封印は過剰反応」相次ぐ自粛にクリエイターも苦言 ピエール瀧容疑者逮捕の余波 - ITmedia NEWS

こうした「自粛」の必要性についてネットのあちこちで議論となっているような有様ですが、個人的にはこうした芸能人の犯罪、特に薬物がらみのものについては「自粛もやむなし」派です。もちろん、電気グルーヴの楽曲やピエール瀧の出演作品自体には罪は無いんですが、一方で芸能界が「違法薬物を許容しない」というメッセージを打ち出すコトは重要であると思っているので。

そもそもが芸能界、とりわけ音楽業界って違法薬物とは切っても切れない関係にあるようで、過去にもたくさんのミュージシャンが逮捕されたりしてますよね。海外の大物アーティストなんて薬物に手を出していないヤツの方が珍しい、なんて話も耳にしますが、実際のところはどうなのかよう知りません。ただ、「薬物だって芸の肥やしになる」みたいな風潮は確かに存在しているように思えます。特に海外なんかは文化的な背景もあるんでしょう。

ただ、「この業界では皆当たり前のように薬物やってるんだから今更大騒ぎするな」みたいな意見には同調しかねます。そういう違法行為が常態化してしまっているのならば、なおさら「業界はこれを許容しない」という姿勢を強く打ち出していくべきかと思います。薬物やったところで誰かに迷惑をかけるわけではない、迷惑がかかるとしたらやってる本人自身だけ、という意見もありますが、そういう意見がまかり通ってしまうと業界内でさらなる薬物の汚染が広がりかねませんし、その芸能人のファンの中にも薬物に興味を持っちゃう人も出てくるでしょう。

そうして業界やそれを取り巻く人たちが「違法行為の温床と化している・ヤクザの資金源と化している」と見做されていったら、結果として業界全体のマイナスになるコトは明らかでしょう。芸能界なんて対外的なイメージで商売してるとこあるんだし。薬物やってる方がイメージ通りって人も居るでしょうが、そうでない大勢の人まで巻き添えを食ってしまう。実際問題、芸能界に対して「薬物やってる人、結構いるんでしょ?」と思われがちな現実があるだけに、そのイメージを助長するような対応は厳に戒める必要があるかと。言ってみれば、プロボクサーが喧嘩で人を殴っちゃいけないとか、プロレーサーが一般公道でめちゃくちゃな交通違反しちゃいけない、みたいな話と似ているのかもしれない。その道のプロとして超えちゃいけない一線というか。

加えて、有名人が逮捕されるコトによりそれが一斉に報道され俄に注目度が上がることにより、音楽CDだとか出演作品のソフトだとかが普段よりも売れてしまう可能性があります。つまり、社会的な不祥事が商売上はむしろインセンティブとして機能してしまう。この状況を放置して、売上げ上位にランクインなんてコトになったら、「違法行為でむしろ儲けてる⇒許容しないどころか商売のダシにしているのでは」という批判にさらされるコトは容易に想像できる話で。短期的には得をするかもしれないけど、長期的には損をするってコト。

違法薬物は個人の問題であって、脇役で出演している作品まで自粛してしまうのはやり過ぎだ、という意見もありますが、逮捕の報道が短期的なインセンティブになってしまう可能性を考慮すると自粛した方が無難、という判断は間違ってはないと思いますし、こういう動きによって「個人の問題として以上に業界全体で重く受け止める」というメッセージになるでしょう。また、それが芸能界に居る個々人のモラル向上、抑止力にも繋がるのではないかと。

もちろん、こうした自粛はその作品に関わった人にとってもファンにとっても不幸な出来事ですし、逮捕された本人に更正の機会を与えるという意味でもほとぼりが冷めたタイミングで自粛は解除されるべきでしょう。永久凍結するのはむしろやってはいけないコトではないかと。自粛の期間や範囲については、いろいろ議論の余地はありそうですね。

Twitterとか見てたら「ビートルズだって薬物やってた」みたいなコト言ってる人も居ましたが、そもそも時代背景が違いすぎるし、それをもって今でもビートルズ聴いちゃ駄目ってなったらそりゃさすがにやりすぎでしょう。過ぎたるは及ばざるがごとし、過剰な自粛も害にしかなりません。日本も昔はヒロポンがふつうに買えたワケですしねえ。シャーロック・ホームズだってコカインやってた、とまで言う人も居ましたが、そもそもアレはフィクションだし、時代もめちゃ古い(100年前)し、ホームズは芸能人ではなく個人で探偵業やってる人間だし、ワトスン君には怒られていたし。

薬物やってる人間が関わっているコンテンツそのものに罪は無いし、それを視聴するのはもちろん自由。ただ、業界として違法薬物は許容しないというスタンスは常に明確にしておく必要があるんではないかな、という話でした。販売自粛以外でそのメッセージを打ち出せる方法があるなら、それもアリだと思います。