予選から波乱含み、とはいえ波乱が起きない方がおかしいレースでもあります。F1アゼルバイジャンGP予選。
- 予選結果: FORMULA 1 SOCAR AZERBAIJAN GRAND PRIX 2019 - QUALIFYING
- 予選ダイジェスト: Azerbaijan Grand Prix 2019: Qulaifying highlights and report - Bottas on pole in Baku as favourite Leclerc crashes| Formula 1(動画有)
- 予選後各チームコメント: What the teams said - Qualifying in Azerbaijan | Formula 1
- 予選後記者会見: Azerbaijan Grand Prix 2019 Saturday press conference full transcript | Formula 1
魔のターン8
Q1のクビサ、Q2のルクレールと、2台のマシンが揃ってターン8でクラッシュしてしまい、2度の赤旗中断になるという、少々間延びした感もあった予選セッションでした。それだけに、Q3に進出した面子もいつもとはちょっと顔ぶれが違い、新鮮な感じにもなりましたけども。
しかしターン8でクラッシュした2人、身も蓋もないんですが「それまでで一番速かったドライバー」と「それまでで一番遅かったドライバー」という言い方もできてしまうワケで、その2人が同じ場所でクラッシュしてしまうのもなんだか皮肉だな、という感じもします。
どちらのクラッシュもドライバー自身のミスなんですが、クラッシュした2人の心理状態っていうのは大きく違ったんだろうなーという風にも見えてしまいましてですね。クビサの場合はやっぱり「焦り」なのかなーって気がしますし、一方のルクレールは「自身過剰」だったのかなと。全然タイムが出ない状態に追い詰められてターンインを焦ったクビサと、このクルマならここまで突っ込んでも大丈夫とブレーキを遅らせたルクレール、みたいな。
通常のサーキットであれば許容範囲のミスでも、全グランプリ中でもっとも幅の狭い区間へ飛び込むコーナーでは完全な許容範囲外。そんなコーナーだからこそ、ドライバーの焦りや油断といった感情をも炙り出してしまうというか。しかし、クビサはこういうコース得意そうなイメージあったんですけど、こうしてラッセルに追いすがるコトもできずにクラッシュしてしまうシーンを見ると、ちょっと辛いものがありますね。今シーズン、最後まで乗れるかなあ……。
ルクレールも自分を責めているコメントが無線で流れてましたけど、ガレージに戻りレーシングスーツを脱いだ後は涼しい顔してベッテルの走りを眺めていたあたり、やはり大物だなと思ったりもして。気持ちの切り替えがめっちゃ早いというか……。まあ、気持ちを表情に出さないタイプっていう説もある。
予選後の記者会見でルクレールのクラッシュについて尋ねられたハミルトンは、「何年も前に同じような経験をしたときは、2~3日部屋から出られなかったよ。彼がなにを感じているかはよくわかるし、その感情を表に出しているのはクールだね。それでまた、明日前に進めるんだから」みたいな、先輩ドライバーとしてかっこいいコト言ってます。
“It's a lot of pressure around a track like this and on his young shoulders. It's totally normal. Years and years ago I didn't come out of my room for two or three days when I had some experiences like that. So I totally understand how he feels and that's cool he's open about it, because he can get it out and move forwards tomorrow.”
via: Lewis Hamilton sympathises with Leclerc after crash in Azerbaijan GP qualifying | Formula 1
ルクレールの若さが出てしまったかのようなクラッシュシーンでしたが、しかしある意味、完璧超人に見えてしまいがちなルクレールにもこういう「若さ」が見られてちょっとホッとしたりもして……。こういうイケイケなドライビングは、まだ「挑戦者」でいられるからこその特権でもあるでしょう。いずれ勝利をあげて、ワールドチャンピオンを獲得して、名実ともに「エース」の看板を背負うコトになると、より「攻めるところ」と「引くところ」の完璧な調和を求められていくワケでしてね……今ちょうどベッテルが苦しんでいるような風にね……。
そして結局メルセデス
フェラーリが圧倒的有利と思われた予選だったのに、そのルクレールのクラッシュもあって予選セッションがずるずる延びてしまい、結果としてメルセデスがフロントロウを独占する格好に。FP3では、フェラーリが1-2で、しかも3番手のフェルスタッペンに1秒以上の大差を付けるというダントツの速さだったんじゃが……。
ルクレールが欠けてしまったにしても、ベッテルすらメルセデスに太刀打ちできなかったというのもちょっと良く分からない話ではあります。最終アタックではベッテルが集団の先頭を走っており、チームメイトもいないため他車のトウを使えなかったのはハンデといえばハンデですが、メルセデスの2台もそれぞれトウを使える位置関係に無かったですしね。
路面温度が下がってしまった、というのが一番の影響としては考えられそうですが、それにしたって条件は他チームだって一緒だし……。記者会見で路面温度の低下とマシンパフォーマンスについて質問されたベッテル、「わかんないけど、路面温度が低下していくコンディションは僕らにとってトリッキーだった」とコメント。クルマが決まっていればとても良いんだけど、クルマの正しいセットアップを得るのが難しい、みたいなコトも言ってますね。
Other than that, I think the car was quite good today when we were in the right place, but it was difficult to get it in the right window.
via: Azerbaijan Grand Prix 2019 Saturday press conference full transcript | Formula 1
ツボにハマればクソ速いフェラーリと、だいたいのコンディションでコンスタントに速いメルセデスという構図になっている感じですが、シーズンを通してチャンピオンシップを戦う上でどっちが有利かと問われれば、それは言わずもがな……。
メルセデスは、ボタスが再びハミルトンを出し抜いてみせたのも面白いところではあります。昨年、タイヤバーストでフイにしてしまった幻の勝利を取り返せるかどうか。
そのほか
予選トップ10に目を向けると、バクーとは相性が良いらしいペレスが5番手に食い込んでいたり、クビアトも今季初のQ3進出で6番手を獲得していたり、ライコネンと揃ってジョビナッツィまでQ3に進出していたりと、なかなか新鮮な顔ぶれとなっておりますね。ただ、ジョビナッツィは交換したCEユニットが早くも3基目となってしまったため、10グリッド降格となるみたいですが。まだシーズン4戦目なのに……。
他のフェラーリPUユーザーは2基目のCEを投入しているとのコトで、もし次に交換する場合は10グリッドペナルティ。うーむ。
アルファロメオのジョビナッツィ、パワーユニット交換で10グリッド降格へ
そういや、レッドブルのガスリーは金曜日にFIAの車検を無視したコトでピットレーンスタートが確定していましたが、それとは別件で、予選でも燃料流量の違反が発覚して失格処分を喰らってしまったみたいですね。
Q1でトップタイムを記録していたガスリーでしたが、これ燃料流量の恩恵もあったんじゃろか。どういう経緯でこんなコトになっちゃったのかが気になりますけど。フェルスタッペンの方は問題になってないみたいなので、チームのちょっとした設定ミス、とかそんな感じなのかな?
これだけ長いストレートを持つバクーで、ホンダPU搭載車が悪く無いパフォーマンスを発揮してみせたのは喜ばしいコトですけどね。レッドブルだけでなく、トロロッソもQ3進出してみせたワケだし。このレースから4台とも新スペックのエンジンが投入されているとのコトで、レッドブル陣営的には将来的なペナルティは織り込み済みのものとして、ホンダのバージョンアップを優先させる姿勢ですね。今のとこ、4台体制に移行してからのホンダのステップアップは順調そのものにも見えますし、ほんとマクラーレン時代とはなんだったのかと……。
一方で、前回Q3に進出していたルノーやハースは轟沈。ハースなんて予選の速さだけがウリだったのに、予選でこんなに遅くなってどうするんや(失礼)。ハースの場合、バクーは元々相性が悪いっていうのもあるみたいですが。まあ、特殊なコースであるのは間違い無い。
ウィリアムズは安定の最後尾であるのに加え、予選中にはクビサがクラッシュするわ、金曜日にはラッセルのマシンの底に外れたマンホールの蓋が浮き上がり直撃してマシンが大破するわ。しかも壊れたラッセル車を乗せた輸送車のクレーンがコース上の看板に激突してオイルが漏れ、クレーンの下にあったマシンがオイルまみれになるという踏んだり蹴ったりぶり。
なんかいろんなものに見放されている感もあるウィリアムズですが、こういう問題はパトリック・ヘッドが戻ってきたところでどうにもならんよなあ……。