大須は萌えているか?

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「プリウスミサイル」や「老人テロ」といった言葉が蔓延するのが怖い

こないだ20プリウスが池袋で暴走事故を起こしたタイミングで、今度は50プリウスが暴走事故を起こしたみたいで。

調べに対し容疑を認め「コインパーキングを出ようとして、お金を支払うために車の中のパーキングチケットを取ろうとしたところ急発進した。ブレーキペダルを踏んでいたのでなぜ車が急発進したのかわからない」などと供述しているということです。

via: 公園で遊ぶ園児らに車突っ込む 保育士大けが | NHKニュース

クルマが暴走したのはコインパーキングの精算時であり、クルマの中のパーキングチケットを取ろうとしたら急発進したと。「ブレーキペダルを踏んでいた」とも言っているので、シフトをパーキングやニュートラルにはしていなかったし、サイドブレーキもかけていなかったんでしょう。

この状況を考えたとき、真っ先に想定される原因は「チケットを取ろうとして運転姿勢を崩し、ブレーキから足が浮いた。クルマが前に進もうとしたので再度ブレーキを踏もうとしたら、足の位置がずれていてアクセルを踏んでしまった」というパターンです。同じようなコトをしそうになった覚えのある人、結構いるのでは?(私はあります)

駐車場の精算機付近で起きた事故というと、最近だと2016年の事故がヒットしますね。

栃木県下野市自治医科大病院の正面玄関付近に車が突っ込み、女性(89)が死亡した事故で、車を運転していた茨城県古河市、小久保益男さん(84)が「(病院の)駐車場の精算機に手が届かず、誤ってアクセルを踏み急発進した」との趣旨の話をしていることが11日、捜査関係者への取材で分かった。

via: 自治医科大病院突入事故、運転男性「精算機に届かず急発進」 - 産経ニュース

こちらも2016年の事故。

被告は身長149センチ、体重約53キロと小柄。事故直前、運転席側にあった駐車場の精算機下の縁石を確認するため、体を右に傾けた際、いつもブレーキを踏んでいた左足が右側のアクセルのほうに移動したとみられている。

via: 83歳ゴールド免許、2人の命奪う 夫の看病帰りに何が:朝日新聞デジタル

こうした過去の例や、自分の経験も踏まえて考えるに、今回の事故はこの類のものじゃないかなあ、と思うわけです。今回事故を起こしたドライバーはアクセルを踏んだコトを否定していますが、誤踏み事故で「アクセル踏んでない」と主張するドライバーのなんと多いことか。ボーっと運転してんじゃねーよ!(チコちゃん風に)

クルマを運転する際には、「正しい運転姿勢をとる」というのは非常に重要です。なぜなら、クルマのハンドルやペダル、その他スイッチ類というのは、正しい運転姿勢が取られているコトを前提にして配置されているからです。なので、その正しい運転姿勢を崩さざるを得ないとき、つまり駐車料金の精算をするときだとか、ドライブスルーでハンバーガーを受け取るときだとかっていうのは、万が一のために不意にクルマが動かないようにしておく、というのが重要になってきます。

つまり、シフトをパーキング(MT車だったらニュートラル)にして、サイドブレーキを引く、というコトですね。私も昔これを億劫がってシフトをドライブに入れたまま、ブレーキペダル踏んだ状態でなんとかしてたんですが、不意にブレーキから足を離しそうになったコトがあって、それ以来ちゃんとパーキングに入れるようにしています。どんなクルマであろうとも、ドライバーの油断によって起きうる事故です。

逆に言うと、ドライバーが油断せず、しっかりパーキングに入れてサイドブレーキをかけるコトを意識していれば、この手の事故は起きないというコトです。プリウスだろうとなんだろうとね。

もちろん、事故の全貌がまだ明らかになっていない以上、これが事故の原因だと断定するコトはできません。ただ、実はクルマが欠陥車だった!というよりはよほど確率が高いと思ってます。しかし、やはりそこは事故車がプリウスというコトで、クルマの欠陥を指摘する声がまた……。

「プリウスは本当に欠陥品なのではないか?」不安の声。今度は公園の砂場に突っ込み保育士の足を折る。 - Togetter

もはやこうしたプリウスを巡る陰謀論はすっかりお馴染みとなってしまいましたが、正直もうこの手の言説には反吐が出ます。だって毎回毎回、なんの根拠も無い印象論しか出てこないんだもの。もちろん、明確にプリウスに欠陥があるコトが明らかになったなら批判の声を上げるべきだし、プリウスが他車っより明らかに多く操作不適事故を誘発していることを明示するデータがあるなら、どんどん出すべきだと思います。しかしそういうのは出てこない。

そして、今回のようにクルマとは何の関係も無い、ドライバーの油断による操作ミスの疑いが強い事故においても、なぜか真っ先にプリウスの「欠陥」を疑ってかかる人が居る。

こういうクルマの事故報道を見るとき、一番意識すべきは「自分がこうした事故を起こさない、あるいは巻き込まれないようにするためにはどうすれば良いか?」というコトだと思っています。なぜなら、交通事故というのは、誰もが加害者もしくは被害者になる可能性があるものだから。そのためには、事故がどのようにして起こったのかを正しく知るコトが重要になります。

その際、「プリウスだから」とか「高齢者だから」という片付け方をしてしまうのは、非常に危険であると思うんですね。それは、事故の真相を覆い隠してしまう可能性があると同時に、「プリウスに乗らなければ良い」とか「自分は年寄りではないから同じ事故は起こさない」といった、当事者意識の欠如……ひいては運転時の油断につながるから。そうした、「自分は大丈夫」といった認識を持つドライバーが増えてしまうコトをなにより懸念します。それは、「プリウスに乗った高齢者」よりもはるかに現実的な恐怖といっていい。

自動車学校や、免許更新時の教習でよく言われないでしょうか。「世の中のドライバーが、正しい運転姿勢で、制限速度に気をつけて、安全確認をきちんと行えれば、世の中の事故の大半は無くなる」みたいなコト。なのに事故が起きるのは、結局それだけ油断しているドライバーが居る、というコト。変な姿勢で運転している人、厚底の靴やサンダル履いて運転している人、むやみにスピードを出す人、漫然と安全確認もしないまま交差点に進入する人、運転中にスマホ見てる人……。

もちろん、人間なのでミスを起こす可能性は常にあるワケですが、それでもニュースで報道されている事故に「学ぶ」コトで、その確率をぐっと下げるコトはできるワケです。人間、なぜか「自分は事故を起こさない」と楽観的になる脳の働きがあるみたいで(逆に「いつ事故を起こすかわからない!恐ろしい!」っていう人は社会生活自体が困難になっちゃうでしょうし)、こんなコト書いている私も例外では無いワケです。だからこそ、事故報道に触れたときくらいは「自分が事故を避けるためにできるコトは何か」を少し考えるくらいでちょうどいい。

安易に「プリウスミサイル」とか「老人テロ」みたいな言葉を流行らせると、こうした個々の事故に対して「考える力」を奪う要因に成り得るコトを恐れています。別にプリウスが好きなワケではないです(断言)。実は因果が逆で、考える力が無いからこそ安易に「プリウスミサイル」とか言っちゃう、という可能性もありますが。

みんな、安全運転しましょうね。私も気をつけて運転します(最近はすっかりサンデードライバーだけど)