大須は萌えているか?

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カメラマンにおける「常識と情熱のあいだ」

たまたま見かけたTogetterから。

プロが望遠レンズを使いこなすとこんなにスゴイ写真が出来る「鳥肌が止まらない」「カメラに興味湧いてきた」 - Togetter

私はインスタはやってないのでアレですが、FlickrTwitterなんかでもこういうエモい感じの写真はちょいちょい見掛けますね。多重露出なんかを駆使して、現実ではあり得ないような感じに「盛られた」写真も多いですが、しかしこのレベルまで来ると、写真を撮りに行く前から相当な計算が為されているんだろうなあ、と推察します。

というのも、これらの写真はカメラのレンズの特性を理解している人だからこそイメージできる構図であり、むやみやたらに撮っていたのでは絶対に撮れないものだから。つまり、日頃から「こういう写真を撮りたい」っていうイメージがあって、それに合う場所を探し当てている、というコト。自分が持っているカメラとレンズによってもベストな場所は異なるので、手持ちの機材の特性を熟知しているコトも大前提。

じゃあこの人が撮影した場所に、同じ機材を持って出かければ同じ写真が撮れるかというと、まだ足らないワケです。例えば、お城の向こうに大きな満月がある写真なんかは、当然ながら満月の日にしか撮れないし、曇っていてはダメだし、お城の後ろに月が大きく見えるわずかな時間の間に撮影しないとダメなワケです。これらの条件を満たすタイミングというのは相当限られるハズだし、そのタイミングにこの構図で撮影できる場所に居ないとダメなワケで。

場合によっては、何度もその場所に通い詰める必要があるかもしれないし、撮りたい写真によってはその場所に泊まり込む必要があるかもしれない。例えば、「雲海に覆われた竹田城」なんて撮るの大変でしょうね。そもそも雲海が出る日が相当限られるし、早朝が勝負になるし、有名になりすぎたので条件の良さそうな日はカメラマンが殺到するでしょうし。……まあ、竹田城はモチーフとしてメジャーになりすぎたので、苦労して雲海の写真撮っても「どこかで見たことある写真」と受け取られてしまう可能性も高いですが……。

そういう意味では、「これスゴイ!」と言われるような写真を撮ろうと思ったら、他人とは違う着眼点を持つ、というのも大事なんでしょうね。そういった諸々のコトを考えると、カネにモノを言わせて高い機材を揃えれば良い写真が撮れるってものでは無いし、現像ソフトで盛ればどうとでもなる、というモノでも無いと思うワケです。言うなれば、常に頭の中で撮りたい写真のイメージを膨らませ、それをどれだけの労力を払ってでもレンズに収めてやる、っていう情熱のなせるワザなんじゃないでしょうか。

そういや、先日炎上していた富士フイルムストリートスナップ写真のアレ(⇒ 道路使用許可なし、警察の職質シーンも――富士フイルムのカメラ販促動画炎上、削除までの一部始終 (1/2) - ITmedia NEWS)なんかは、また全然違う世界ですよね。先にリンクしたTogetterにあるような写真が緻密な計算を土台にしているのに対し、ストリートスナップは偶然性をコンテンツの一部として取り込んでいるイメージ。撮影者も計算できない要素を積極的にフレームに入れるコトで、まさにその時にしか撮れない、オリジナリティの高い写真を目指している感じ。

そしてその「撮影者も計算できない要素」っていうのは主に赤の他人だったりするワケですが、その行きすぎた結果がこの炎上騒ぎだったのかな、と。「偶然」をコンテンツの構成要素とする分、「緻密な計算の上で狙い澄ました1枚」を撮るコトはできない。ならば、数をこなすしかない。そして数をこなして新しい境地を求めていた結果、端から見るとただの迷惑行為に成り下がっていたっていう。

……まー、ただこれストリートスナップだけの問題ではなくて、風景写真なんかでも、カメラマンが自分の撮りたい構図を叶えるために私有地や立ち入り禁止区域にずかずか踏み込んだりして問題になるケースは後を絶ちませんからね。鉄道写真でも、線路内に立ち入って運行を妨げるなんてケースもあるくらいだし。目的のために手段を選ばなくなる典型例だとも言えますが、ある意味これは情熱が行きすぎた結果と言えなくもないのかも知れない。けど、そういう輩が話題になる度にカメラマンが白眼視されていくコトにもなるワケで、ホント勘弁して欲しい……(ていうか私有地や線路内の立ち入りはガチで逮捕される案件だし)。

なんか取り留めの無い話になってしまいましたが、敢えてまとめるとするならば「一流のカメラマンは、情熱と常識を兼ね備えた者であるべし」という感じでしょうか。なお、私は常識は多少持ち合わせているつもりですが、情熱が決定的に足らない……!