大須は萌えているか?

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『クローズアップ現代+』ゲーム依存回を観ての雑感

NHKの『クローズアップ現代+』で、ゲーム依存の話題を取り扱っていたのを観たんですけども。

外出自粛の陰で…ゲーム依存は大丈夫? - NHK クローズアップ現代+

外出自粛によって、普段よりゲームにハマってしまう人が増えてしまうのは当然あるとは思うんですが、「依存」と呼べるレベルにまで到達してしまうケースはそうそう無いんじゃないの、って思ったりもします。だって、番組内でも触れているWHOの「ゲーム障害」の定義って

「ゲームの使用をコントロールできない」、「生活の関心事や日常生活より、ゲームを優先する」、「問題が起きてもゲームを続ける」など、こうした状況が12か月間以上続くことを「ゲーム障害」と定義しているんです。

via: 外出自粛の陰で…ゲーム依存は大丈夫? - NHK クローズアップ現代+

ですよ。自分の行動を抑制できないレベルまでのめり込んでしまうのが「依存」だと考えると、仮にそういう状態になってしまっているとしたら、それは外出自粛云々がひとつの引き金になっていたとしても、その裏にはもっと深い理由があるんじゃないかなーと。

番組内で

みんな共通して話していた、あるキーワードが「居場所がない」ということだったんです。

via: 外出自粛の陰で…ゲーム依存は大丈夫? - NHK クローズアップ現代+

なんて話も出ていましたが、「現実に居場所がない、ゲーム内のコミュニティが一番居心地が良い」という理由で依存症になっているのだとしたら、それはゲームを取り上げてもなんの解決にもならないし、ゲームが悪いワケでも無いですよね。なぜなら、根本原因は「現実のコミュニティに自分の居場所がない」という点にあるんだから。

外出自粛によってゲームへの依存傾向が強まっているんだとしたら、それは「家庭内の居心地が極めて悪い」という理由が真っ先に疑われるワケであって、まず考えなきゃいけないのはゲームを1日何時間までプレイして良いか、って話ではなくて、親子で率直な意思疎通が出来ているか、という点だと思うワケです。

NHKのサイトでは、番組内で放送されなかった部分も含めたコメンテーターのやりとりが掲載されているんですが、出演していた高橋名人のコメントはわかりみが深いです。

まずゲーム依存になったからひきもこるのか、それとも、ひきこもりになったから時間ができてゲームをやるのかというのは、まったく見方が逆だと思うんです。
ひきこもりになる原因がいじめだったり、いろんな問題があると思うんですけれども、オンラインで日本中の子どもたちと話せるということは、いじめの問題とか悩みを相談できるんですよね。ゲームによって救われる子どももいると思うんですよ。そこを区別してやってかないとダメなんじゃないかなと思います。

via: 【対談】新型コロナも影響か 深刻化するゲーム依存 - 記事 - NHK クローズアップ現代+

まさにそこですよね。依存症レベルまで悪化しちゃうというのは、後者の方が多いんじゃないかと思うワケです。そういう意味では、「依存症になったのならゲームを取り上げればいい」というのはなんの解決策にもならない。香川県の条例なんかも、根本的にズレてる感じするんですよね。

ただ、こういう番組で「ゲーム依存の裏にある親子のコミュニケーション問題」みたいなところに切り込まないのは、そもそもこういう番組を観るのはその親のほうだからかな、という気がしないでもありません。

あと、eスポーツとゲーム依存の関係についても触れられていましたが、この話題になるとよく「プロを目指して野球にのめり込んでいても『依存』とは言われないのに、ゲームは『依存』扱いされるのはおかしい」ってツッコミが入りますよね。ただ、これプロを目指すレベルのアスリートだと、だいたいは「名門」と呼ばれる学校に通って、有名な指導者の下でトレーニングをしていると思うんですが、「eスポーツのプロ」を目指す人ってどういう環境でトレーニングしてるんだ?っていうのはちょっと気になります。

もし一人で部屋にこもってぶっ通しでゲームしているのを「プロになるためのトレーニング」と言うのなら、そりゃ親は心配になるわなあ、とは思います。もし本気でプロを目指しているなら、そのためのロードマップを示して親を説得するくらいのコトはするべきではないかと。スポーツだって少年野球で補欠レベルだったヤツが「プロを目指す」と言っても「寝言言ってないで勉強しろ」と言われるのがオチだし、ゲームも「プロを目指すだけの根拠」を周囲に示すくらいのコトはできないとダメじゃないかな。

これについて高橋名人

eスポーツだけじゃなくて、世の中にあるプロのスポーツゲームは、みんな同じだと思うんです。例えば、プロ野球の選手だって、高校野球で甲子園に行ってスカウトされるのはわずかです。そういうことを考えると、必ずプロの選手となって成功するかどうかは、子どもからしても親御さんからしても、やっぱりチャレンジでしかないと思うんです。

から、これはこれからの私の仕事になると思うんですけど、プロのeスポーツプレーヤーじゃなければ何ができるかという道を探してあげる。例えば、実況者だったり、今までプレーをした時のアイデアを使ってゲームメーカーで働く。いろんなことをこれからも考えなきゃいけないなとは思っています。

プレーがうまいだけだと、人はついていかないんです。そこに、キャラクターや、コミュニケーション能力に長けているとか、そういうものが加わってプロのeスポーツ選手になれるわけです。ゲームがうまければ、賞金は稼げると思います。でもそれは、大会に出てみんなから羨望の眼差しで見られるプロのeスポーツ選手として成功するのとは、また違うと思うんです。

via: 【対談】新型コロナも影響か 深刻化するゲーム依存 - 記事 - NHK クローズアップ現代+

とコメントしてますが、これも良いコト言ってるなと。ゲームが好き、という気持ちは大事にしていくべきだと思うけど、それだけでプロとして食っていけるかというと、そんなに甘い世界ではない。じゃあ自分にはなにができるのか、って考えるときに大事なのは、視野の広さなんですよね。そしてそれは、プロスポーツを目指す人にとっても同じ話。自分が好きなコトをしながら食っていくための戦略を立てられるかどうか。そういうセンスは、ただひたすらゲームをやっているだけでは身につかない。

ただ、この高橋名人のコメントも番組本編では使われてなかったのが残念。尺の問題もあるでしょうが、全体的に踏み込みが足らない感じの、消化不良気味な感じのする内容でした。まあ、こうして番組でカットした部分をWEBに掲載してくれているだけ良心的なのかもしれませんが……。