大須は萌えているか?

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F1[20] イギリスGP 決勝

レースは何が起きるかわからないとは申しますが、その何かが起きても勝つのは……。

なぜタイヤは壊れた?

今年もセーフティカーが2度入るというやや波乱の展開となりましたが、2度目のセーフティカーが出たタイミングがハードタイヤ交換のウインドウ内だったコトもあり、アルボンとグロージャンを除く全車が一斉にピットストップ。ピットストップのタイミングが強制的に揃えられてしまったコトで、これ以降はピット戦略での差が付く可能性は無くなり、あまり見所のないレースになりそうだなあ……と思ったりしました。

しかしレース終盤、3台のクルマの左フロントタイヤが相次いでパンク。しかもトップを争っていたメルセデスの2台ともがその中に含まれていたもんだから、さすがに唖然としました。シルバーストーンでの相次ぐタイヤトラブルというコトで、2013年に起きたピレリバースト祭りを思い出しちゃったりもしましたが、今回のトラブルはデラミネーション(層間剥離)ではなく、何か異物でタイヤを切ってしまったような壊れ方をしてましたね。

ハミルトンはデブリを踏んだ可能性を疑っているようで、その理由はタイヤがパンクする直前まではタイヤに違和感を感じておらず、突然ダメになったから。ピットがハミルトンへの無線でボタスのタイヤトラブルについて伝えた際にも、デブリが落ちてる可能性を指摘してたんですね。それでもパンクは避けられなかった。

Great Britain 2020: Listen to Hamilton’s radio during Silverstone tyre drama(動画)

ハミルトンほどの名手がタイヤの異変をまったく感じ取れなかったというんですから、確かにデブリの可能性が疑わしくはなります。ボタスがパンクした数周前には、ライコネンフロントウイングの左側を落っことしたりしてますしね。トト・ウォルフもデブリの可能性を疑ってます。

“I think the left front [tyre] is the one that is the most hammered, and therefore more vulnerable also to debris. There were lots of pieces of carbon on the track after [Kimi] Raikkonen’s off. We saw some part of the car, part of the front wing on track, so we will never know but I guess Pirelli’s going to analyse that.”

via: Bottas tyre issue ‘cruel’ says Wolff as he suggests debris likely to blame | Formula 1®

来週はさらに1ランク柔らかいアロケーションで同じシルバーストーンでレースをやることになっているので、ピレリは大慌てで原因調査をしているようです。大変ですね。

“We don’t have a lot of time to investigate as we have another race [the 70th Anniversary Grand Prix at Silverstone] in another week, so we have to come to a conclusion as soon as possible. The target is to have something more by Tuesday at the latest.”

via: Pirelli investigating after Hamilton, Bottas and Sainz all suffer late tyre issues in British GP | Formula 1®

パンクを起こしたタイヤはいずれも寿命寸前だったコトもあり、それも一因ではないかと疑われているようですね。ヨレヨレのタイヤにデブリがトドメを刺したと。ただ、レース序盤に起きたクビアトのクラッシュ、あれクビアトの後方車載映像を見ると、おもくそ右リヤタイヤがバーストしているんですよね。このタイヤはまだ寿命には程遠かったと思うんですが、これはこれで何が起きたのか……。

All The Angles: Kvyat’s massive crash at Silverstone(動画)

ともあれ、高速コーナーが多く、そうでなくともタイヤに負担が掛かりやすいサーキットなだけに、確実な原因究明をして欲しいところ。昔に比べて全開でいけちゃうコーナーが増えているってコトは、もしタイヤになにかあったら重大なトラブルに直結しやすくなっている、ってコトでもあるんですよねえ……。

しかし、ボタスはタイヤトラブルでポイント圏外まで弾き出されてしまった一方、ハミルトンはギリギリトップを維持したままチェッカーを受けるコトができたんだから、やっぱりハミルトンはシルバーストーンに愛されているんですねえ。これでハミルトンはイギリスGP7勝目。母国GPで7勝というのは、アラン・プロストの持つフランスGP6勝という記録を上回る歴代トップだとか。セナが母国ブラジルでなかなか勝利に恵まれなかったのとは対照的。

2位表彰台は幸運なのか不運なのか

フェルスタッペンはボタスのパンクの影響で2位に浮上し、その後フリーストップが可能だったためファステストラップ狙いでソフトタイヤに交換していたワケですが、結果論でいうとこのピットストップをしなければ、パンクで失速したハミルトンを抜き去って優勝できていた可能性がありました。ただ、クリスチャン・ホーナーはそのような見方を否定してますね。フェルスタッペンのタイヤも危険な状態だったと。

“And the tyre that’s come off Max’s car has actually got a deep groove and quite a lot of lacerations on it as well, so there’s no guarantee he would have got to the end of the race.”

via: ‘No guarantee Verstappen would have got to the end’, say Red Bull as they stand by pit stop decision | Formula 1®

以下の記事では、交換したフェルスタッペンのタイヤにはおよそ50カ所にもデブリによる小さな傷が付けられていた、というコメントがありますね。

“The tyre that came off the car had about 50 little cuts in it,” said Horner. “So it’s been through debris.”

via: Verstappen’s tyre had 50 cuts in it - Horner · RaceFans

フェルスタッペンがタイヤを交換した時点でハミルトンのトラブルを予見できるワケは無いし、しかももしタイヤを換えていなかったら、フェルスタッペンも同じ目に遭っていた可能性があると。それなら確かに、2位を確実にしてかつファステストラップポイントを持ち帰るコトができたのは上々と言えます。元々、レッドブルにしてみれば3位に入れれば上出来なレースだったワケですしね。

見ている方としては、今シーズンがもう完全にメルセデス(ていうかハミルトン)のシーズンになるコトが見えちゃってるもんだから、まさかの逆転劇でレッドブル・ホンダが勝つところを見てみたい!っていう欲が出ちゃった感はあります。いや私はメルセデス派なんですけど、思わずファイナルラップは「うおおおお!行けマックス!ルイスブチ抜かせ!」とか思っちゃいましたもんね。……いやメルセデス派なんですよ?

ただまー、これでハミルトンが優勝した一方でボタスがノーポイントですからね、レース数が少ない今シーズンでこの展開はデカいですよ。

そのほか

3位に飛び込んだフェラーリルクレール、戦闘力が悲惨だと散々言われながらも今シーズン2度目の表彰台というのは賞賛に値しますね。腐らずキッチリ仕事しているというか。いやベッテルが腐っていると言いたいワケではないんですけども。フェラーリも他チームと同じタイミングでハードタイヤに換えているワケですが、タイヤには特に問題起きてないんですね。ダウンフォースかなり削ってるからタイヤは辛いのでは……という観測もありましたが、そこはルクレールのタイヤマネジメントが一枚上手だったのでしょう。やはり只者ではない。ルクレール本人も自画自賛

I am satisfied with the way in which we have been working this weekend and I am very proud of the team. I am also pleased with my performance, especially with regards to tyre management. It was not easy. We had a very aggressive downforce level coming here, so we had quite a lot of speed in the straights but difficulties in the corners.

via: Charles Leclerc : What the teams said - Race day in Great Britain | Formula 1®

フェラーリカスタマー勢も相変わらず悲惨というか、ハースの2人は悪い意味で大暴れでしたね。マグヌッセンはスタート早々にアルボンと絡んで派手なクラッシュ。スチュワードの裁定はアルボンに5秒ペナルティでしたけど、これはレーシングインシデントに見えるけどなあ。アルボンの動きもちょっと楽観的でしたけど、それはマグヌッセンも同じな気がする。

Albon calls Magnussen clash ‘50/50’ as Horner praises ‘really exciting’ P8 recovery drive | Formula 1®

グロージャンは危険な進路変更を行ったとして黒白旗を出されてましたけど、無線でそれを伝えられると逆ギレしていたのがまた。スペースは残している、って言うんだけど、ブレーキングポイント直前で後ろのクルマがインに進路を取ったのを見てから同じ方向に進路変更する行為がダメなんだっていう話で……もうベテランなんだから、何言ってんだって感じです。

Grosjean handed warning from stewards after ‘potentially dangerous’ defence of Sainz and Ricciardo at 2020 British Grand Prix | Formula 1®

今の状況にドライバーとして苛立つのは分かるんですけどね……。苛立つと言えば、極めつけはライコネンの無線のやりとりですね。ピット入り口直前で「Box! Box!」(ピットに入れ)って無線で指示され、ピットロードに向かった瞬間に「Stay out! Stay out! Stay out! Stay out! Stay out!」(入るな!× 5、ホントに5回言ってる)って言われ、ライコネンは「オイ遅すぎるんだよクソが、いい加減にしろよこのスットコ(意訳)」とブチ切れ。

Raikkonen reacts furiously to Alfa Romeo pit confusion(動画)

うん、これはライコネンでなくともキレる。ピットは慌てて「了解、了解、わかったよキミ」と必死でなだめているのがまたなんとも。マシンのパフォーマンスだけでなく、ドライバーやチームもいろいろグダグダになってしまっている感……貧すれば鈍すでしょうか。

一方で、マクラーレンだけでなく、ルノーワークスも調子上げてきている感じしますね。今回2台とも力強いレースペースを見せ、リカルド4位・オコン6位と上々の結果。もちろん終盤のタイヤパンク祭りに助けられたのもあるんですが、マクラーレンと良い勝負できてましたしね。ダブル入賞は今季初、シルバーストーンでここまでの結果を出せたのは、今後の自信に繋がるんじゃないでしょうか。

レーシングポイントは期待していたヒュルケンベルグがなんとスタート直前のマシントラブルで出走できないままリタイヤ、そしてストロールは9位入賞がやっとという結果。ストロールのレースペースはいつにも増して悪かったですねえ。

そしてルノーはもはや恒例行事のように、再度レーシングポイントのブレーキダクトについて提訴をしたようで。いつ結論でるのこれ。

Renault lodges third Racing Point protest after F1 British GP - F1 - Autosport