大須は萌えているか?

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F1[20] ベルギーGP 予選

フェラーリ阿鼻叫喚(?)。今年3回目の3連戦の初戦、ベルギーGP予選。

割と調子の良いレッドブル

メルセデスが安定のフロントロウ独占。特にボタスを0.5秒以上突き放して見せたハミルトンの走りは圧巻でした。あの長いコースでまったくミスを犯さず、かつタイヤの温度管理にも最大限気を配ってみせるという、並外れた集中力の賜物ですね。あと、ボタスは最終アタックのセクター1・3で自己ベストに届かなかったのも痛かったですね。どちらもほとんど全開のセクターなので、あまりタイムを失う要因がわからないんですが、何があったのやら。ただ、セクター2でもハミルトンに0.23秒負けているので、どのみちポールはハミルトンのものだったでしょうけど。

全開区間が極めて長いサーキットだけに、他車のトウを得ようと懸命になるドライバーも見受けられる中、ハミルトンはそんなのお構いなしに集団の先頭を切ってアタックしていっていたのも印象的でしたね。記者会見でそこを質問されたハミルトン、トウを使って得られる少しのタイムより、前のクルマに追い付いてしまったり、イエローフラッグが出たりするリスクを警戒していたとのコト。しかしこれ、自分のラップタイムに自信があるからこそ言えるコトですよねえ。

I just wanted clean air in front of me. I think it worked. I think there’s potentially a small gain from being in the tow but then there’s equally a potential danger of being caught behind someone, someone making a mistake and causing a yellow flag ahead of you, all sorts, so I just made sure I was clear of that so I could pull out the best lap I could do.

via: FIA post-qualifying press conference - 2020 Belgian Grand Prix | Formula 1®

そして3番手のフェルスタッペンがボタスに0.015秒差という僅差。これだけ長いパワーサーキットでここまでメルセデスに肉薄できたのは正直意外で、決勝でも良い勝負できるんじゃないかと期待が膨らむところ。ハミルトンとの差はありますが。パワーがモノを言うセクター1・3を重視するか、それともテクニカルなセクター2を重視するかでセットアップの方向性が変わってくるこのサーキットですが、メルセデスダウンフォース付け気味でセクター2重視な感じ。セクタータイムからするとレッドブルも似たような感じですが、セクター1・3はメルセデスと同じかやや速いくらいで、セクター2で少し遅れている分がタイム差になっている感じ。メルセデスよりは少しダウンフォース削っている方向性でしょうか。

今回はアルボンも予選5番手と悪く無い位置に付けており、レッドブルは全体的に好調ムードですね。アルボンは最終アタックでタイム更新できずに5番手だったので、もし最後も決められていればリカルドの上に行けていたかもしれません。レースペースも好調なようなので、場合によってはアルボンも表彰台争いに加わるくらいのパフォーマンスを見せてくれる……かな?あと、メルセデスの2台とフェルスタッペンはミディアムタイヤでのスタートとなりますが、予選ではミディアムとソフトのタイム差がかなり大きかったようなので、レース序盤にミディアムスタート勢が後方に対してどれくらいのレースペースで走れるのかっていうのも興味深いところ。

土曜日はうさん臭い雨雲がコース上空にいましたが、決勝も降水確率は五分五分な感じみたいですね。もしスパウェザーがレースを引っ掻き回すようなコトになれば、思わぬ結果になったりするのかも。

躍進のルノーと停滞気味のレーシングポイント

今回の予選で目立っていたのは、ルノーのリカルドが4番手に食い込んできたコトでしょうか。オコンも6番手。リカルドはシルバーストーンでの2連戦でも予選で好調なところを見せており、高速サーキットとの相性が良いんですかね?ハンガリーやスペインではQ2ノックアウトされており、得意・不得意がハッキリしているクルマとも言えるのかもしれませんが。

そんなルノーは露骨なまでにストレートライン重視なセットアップになっており、セクター1・3は速いけどセクター2はやたら遅いという塩梅。ただ、それだけに後ろにつっかえたクルマはバスストップシケインやケメルストレートエンドでオーバーテイクしようとしても逃げられてしまう展開も有り得るワケで、レッドブルは如何にルノーを前に出さずにレース出来るかがカギになりそう。

ストーレトライン重視の傾向はレーシングポイントも同じで、しかしこちらは8・9番手と期待していたほどのポジションを得られなかったようで。Q2ではミディアムタイヤでの通過を目論むくらいでしたが、それだけの速さはありませんでしたね。ダウンフォースが少ないというコトはテクニカルセクターでタイヤの横滑りが発生しやすくなり、結果としてデグラデーションが早まる可能性もあるワケですが、そうなるとレースペースが伸びないのにストレートだけは速いもんだから後ろのクルマはなかなか抜けない、というドライビングスクール状態になる展開も多いに考えられたりもして。あと、レース途中で雨が降ってきたりした場合、ダウンフォース削り気味のチームは苦労しそうな……。

そういや、レーシングポイントのブレーキダクトコピー問題についてはルノーが上訴を取り下げらしいですね。

ルノーがレーシング・ポイントの裁定に対する控訴を取り下げ | Lotus F1 | F1ニュース | ESPN F1

マクラーレンもすでに上訴を取り下げていたので、これで事態は収束していくのかな……と思いきや、フェラーリと当のレーシングポイント自身が上訴を取り下げたっていうニュースは見てないような……。まだ尾を引くんでしょうかこれは。フェラーリの場合、レーシングポイントのマシンが違法だと主張するコトで、コンストラクターズでレーシングポイントに負けている言い訳をしたがっているように見えなくもない。この上訴は、実のところフェラーリフィアットの経営陣に向けてのアピールだったりして(?)。

どん底フェラーリ

このスパではフェラーリのパフォーマンスがより一層低迷してしまっているようで、FP3ではルクレール17番手、ベッテルに至っては最下位(!)という順位に沈み、Q1通過も危ぶまれたほど。実際はなんとかQ1は通過したものの、13・14番手がやっとという結果に。フェラーリPUのカスタマーチームに負けるという屈辱は回避しましたが、パワーサーキットでここまで露骨に弱いというのは重症ですねえ……。

F1公式サイトの記事で指摘されているのは、フェラーリはこのスパで前年よりタイムを落とした唯一のチームであるという事実。

they are the only team on the grid to have a car that is slower at Spa than it was last year – and by quite some way – based on FP2 comparisons. The red cars were a massive 1.317s slower. At the other end of the spectrum, Williams were an impressive 2.424s quicker than they were in 2020.

(中略)

Leclerc’s final time of 1m 42.996s was 0.477s slower than his 2019 pole lap of 1m 42.519s. That might not sound awful, but consider that every other team improved their 2019 time - six of them by more than 2s.

via: ANALYSIS: How and why are Ferrari so far off the pace in Belgium? | Formula 1®

予選ベースで見ると、ルクレールは前年から0.477秒タイムを落としている格好になります。1周100秒以上掛かるサーキットであるコトを考えると、「まあその程度なら……」って気がしないでもないですが、問題は他のチームが軒並み大幅なタイムアップを果たしているというコトなんですね。記事で指摘されているように、10チーム中6チームが2秒以上上げてきていると。そうした周りとの相対的なパフォーマンスを考えると、0.5秒ダウンって壊滅的な結果なんですよね。これまた低迷しているハースやアルファロメオですらタイムを上げてきている状況を考えると、フェラーリの特異な状況は明らか。そうなると、パワーユニットだけの問題でもないんでしょうか。

これがパワーサーキットに付いて回る問題だとすると、このあとにやってくるフェラーリの地元であるモンツァやムジェロのレースでも醜態をさらすことになりかねず、フェラーリ首脳陣は頭の痛いところでしょうね。いやしかしホント、なんでここまで酷いんだろう……。昨年のタイムが疑惑のPUで下駄を履かされたモノだったとしても、ここまで悪くなるのはちょっと解せない感じもします。シャシー自体も失敗作ではあるんでしょうけど、曲がりなりにも今までシーズン6戦戦ってきてこの有様というのは、チームの開発能力そのものに大きな疑問符が付いてしまうコトに……。

私がF1を見始めた90年代前半も、アラン・プロストが抜けたフェラーリは酷い低迷期に入っており、新進気鋭のジャン・アレジをもってしてもなかなか勝てなかったんですよね。それを抜本的に立て直したのはジャン・トッドロス・ブラウンという強力なマネジメントチームと、ミハエル・シューマッハというカリスマを持ったドライバーの力だったワケです。今のフェラーリにも、マネジメントとドライバー双方に経験値と実績豊富な人材が必要なんじゃないかと思うんですが、来季はさらにドライバーが若返っちゃうしなあ……。せめてマネジメントのほうをなんとかしないと……。

マクラーレンがポルシェからアンドレアス・ザイドルを連れてきて息を吹き返しつつあるように、F1チームにおいてチームを統率するマネージャーの力って大きいと思うんですけどね。メルセデスも、トト・ウォルフが大きな人望を集めてチームをまとめ上げているからこそ、あの強さがあるワケで。今のビノットさんにその力があるかと言うと……。