大須は萌えているか?

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F1[20] ロシアGP 予選

怒濤の3連戦×3の前半戦が終わり、ここから後半戦……とは言ってもチャンピオンシップの行方はほぼ見えてしまってますが……の始まり。F1ロシアGP予選。

メルセデスPUの意外な弱点(?)

今回のレースで一番注目されるのは、ハミルトンがミハエル・シューマッハの持つ最多勝利記録である91勝に並ぶかどうか、という点かと思いますが、予選ではいつものようにハミルトンが圧倒的な速さでポールポジションを獲得。2番手との差は0.56秒。これは決勝もそのまま勝っちゃいそう……とも言い切れない雰囲気が漂っておりますね。

ソチのコースは最初のブレーキングゾーンであるターン2までの距離が非常に長いため、ポールポジションからスタートしても後ろのクルマにトウを使われて前に出られてしまう可能性が非常に高く、必ずしもポールスタートが有利では無いというのが一点。3番手になってしまったボタスも、2017年にキャリア初優勝をここソチで飾った際には3番手スタートだったワケで、そういう意味では3番手になってしまったコトにもあまりガッカリしてない様子。2017年の再現を狙う、というワケです。

I’ve started third here before and look what happened, so I’ll try and do the same. It’s still all to play for.

via: Valtteri Bottas : What the teams said - Qualifying in Russia | Formula 1®

2018年と19年はハミルトンが勝利しておりますが、ハミルトンはどちらもポールからでは無く2番手からのスタートなんですよね。

それから、2番手のフェルスタッペンとボタスがミディアムタイヤでのスタートであるのに対して、ハミルトンはソフトタイヤスタートであるというのも注目ポイント。ハミルトン自身もスタートタイヤはミディアムが最適だと考えていたものの、Q2最初のアタックでトラックリミットを超えてしまいタイム抹消。ハミルトンはそのままバンカータイムを出すためにアタックの継続をしたがっていたようですが、連続アタックするだけの燃料が無かったようでピットに呼び戻される格好に。

そして2度目のアタックを確実に決めようと思ったら、今度はベッテルがクラッシュして赤旗が出てしまい、最終的にソフトタイヤに履き替えて出るしか無くなってしまったというワケです。ハミルトンは再度ミディアムでアタックするコトを望んだようですが、ピット出口で待たされる間にもタイヤの温度がどんどん下がってしまうので履かせて貰えなかった、と。

“I wanted to go back out on the medium, because of course I don’t want to start on the soft tyre,” Hamilton said when asked by Autosport about the tyre choice.

"But we had to wait at the end of the pit lane for two minutes, and the tyre temperatures would have dropped down massively.

"It definitely wasn’t great, and I did plead to have the medium tyre but they weren’t having it.

via: Mercedes: Soft tyres ‘necessary’ for Hamilton in Sochi Q2 despite plea - F1 - Autosport

にしても、赤旗再開後のタイミングがギリギリすぎて、ハミルトンはアタックに入れないかと思いましたよ。残り1秒くらいのタイミングでアタックに入るって、なんかのドラマみたいな流れでした。

ONBOARD: Hamilton beats the clock in Russian GP qualifying drama

しかし、ソフトを履くという決断を下してもなお、メルセデスはピットからなかなかマシンを出しませんでしたよね。レッドブルはさっさとピットアウトして、出口でずっと待っていたのに。これ、メルセデスはMGU-KでPUを始動できないという理由があったんですよね。つまり、長時間ピット出口でスタンバイするとなると、オーバーヒート防止のために1度PUを停止した方が無難なワケですが、ホンダPUなどはMGU-Kを使ってドライバーがPUを再始動できるのに対し、メルセデスPUはそんな機能が無いもんだから長時間ピット出口で待つわけにはいかないワケです。

そして、そうなるとアウトラップでハミルトンの前に他のクルマがたくさんいる状況になり、十分なタイヤの熱入れができなくなる可能性があると踏んでソフトを履かせた、というのがトト・ウォルフの言い分。

“We couldn’t really send him out early, because you need to switch off the car and restart it on the MGU-K, which is something we can’t do,” Wolff said.

"We felt that if he was at the back of the train, and not do the outlap that he would need to do, we could be caught out because the medium is simply not there yet.

via: Mercedes: Soft tyres ‘necessary’ for Hamilton in Sochi Q2 despite plea - F1 - Autosport

メルセデスにしてみれば、ドライバー自身がPUを再始動する必要があるシチュエーションなんて例外的な場合しか無いんだから、そんな余分な機能を付けなくてよろしい……という合理的な考えでスターター機能を省いているんだと思いますが、今回はその例外的なシチュエーションが現実のものになってしまったのでした。

そういや、早めにピットレーン出口に並んでいたストロールはPUのオーバーヒートが発生して、慌ててクルーがピットに引っ込めてしまいましたよね。これもドライバーがPUを1度止めて、自分で再始動できるようになっていれば避けるコトができたんでしょうね。

Lance Stroll explains pit lane problem that robbed him of final Q2 run on ‘tough day’ in Sochi | Formula 1®

そんなこんなでソフトスタートを強いられる格好になったハミルトンですが、もしスタートでトップを奪われて、ミディアムの2人に前を行かれる格好になると、さすがのハミルトンでも少々苦しい展開になりそうです。問題はソフトタイヤがどれくらい持つか、という点でしょうね。ウォルフやハミルトンはソフトタイヤは早々にデグラデーションが始まると見ており、戦略にかなりの妥協を強いられると見ているようですが、同じくソフトでスタートするルノーなんかは15〜20周くらい走れると見ているようで。

But other teams who have qualified on the soft tyres are less concerned. Renault’s sporting director Alan Permane predicted those starting on the soft rubber will be able to do “15, 20 or so laps” at the start, which is hardly a drama in a 53-lap race.

via: Will Hamilton really miss the medium tyres he ‘pleaded’ for? · RaceFans

レース序盤、ハミルトンがどのくらいソフトタイヤをマネージメントできるか、がカギになりそうですね。

フェラーリ危機一髪

PUの性能がモノを言うコースであり、伝統的にメルセデスが強いこのソチでフェルスタッペンが2番手を獲得してみせたのは結構な驚きでした。ちょうどアタックラップを終えようとしていたボタスのトウを使うというフェルスタッペンの機転が見事でしたねえ。

レッドブル・ホンダ分析:ボッタスのスリップを有効活用。セクター1で0.3秒縮めたフェルスタッペンのラストアタック | F1 | autosport web

ただ、アルボンは10番手に沈み、アルファタウリはガスリーが9番手に入ったものの地元のクビアトは12番手と、少々厳しい予選となった感じ。しかし、フェラーリのヤバさはその比ではありません。フェラーリPU勢トップであるルクレールのタイムを見てみると、昨年自身が出したポールタイムの実に1.6秒落ちです。今年はQ2ノックアウトしちゃったので、Q2同士のタイムで見比べても0.8秒落ち。なかなか衝撃的な数字。しかもフェラーリPU勢全体で見ても、誰も昨年の自身のベストタイムを更新できていません。

Ferrari make their biggest step backwards of 2020 so far in Sochi · RaceFans

スパの予選でフェラーリだけが前年のタイムを更新できなかった、というのもなかなか衝撃的でしたが、ここでの数字もなかなか……フェラーリPUのヤバさが如実に表れておりますね。スパでは昨年対比のタイムの上げ幅が全体的に大きかった(全チーム平均で1.25秒程度のゲイン)のに対し、このソチでは上げ幅が少なかった(全チーム平均で0.3秒程度のゲイン)ので、余計にフェラーリPUのタイムの下がり方が大きく見えるというのはあるんでしょうが、しかしまあ毎年進化しているハズのF1の世界で、それも巨額の予算を注ぎ込んでいるハズのフェラーリが、昨年より1秒遅いクルマしか用意できていないってクッソウケる……いやさもの悲しい話ですね。

今回はQ2でベッテルがクラッシュ、危うくそこにルクレールが突っ込みそうになるというヒヤッとするシーンもありましたが……最悪の形は回避できたものの、マシンの絶対的な性能の低さはどうしようもないですね。

そのほか

そういや、F1のボスがチェイス・ケアリーから元フェラーリステファノ・ドメニカリに交替するみたいですね。以前はトト・ウォルフなんかも候補の一人として名前が挙がっていたように思いますが、ウォルフはもしその話が実現に向けて動こうとしても、フェラーリが認めなかっただろうとコメントしているようで……。

フェラーリは自分のF1代表就任を認めなかっただろうとウォルフ | Mercedes | F1ニュース | ESPN F1

それがウォルフの想像なのかどうなのかはわかりませんが、FIA会長にジャン・トッド、F1のマネージングディレクターを務めるロス・ブラウンらも含めると、F1を統括する側にフェラーリOBがどんどん増えていってるのは確か。だからといってさすがに露骨なフェラーリびいきはしないと思いたいですが(っていうかもう既にフェラーリは十分な依怙贔屓をされているハズなので)、PUを巡るなにかをこっそり裏で手打ちにするような事案もあったばかりなコトを考えると、ちゃんとその辺は透明性を確保してやっていただきたいと願うばかりです。

あと、このロシアGPに向けて行われたCOVID–19の検査で、過去最も多い7人の陽性反応が出たと報じられてますね。

F1 reached its biggest spike of COVID–19 cases - F1technical.net

この中には、F1のデジタル・プレゼンターとして公式動画なんかにも登場しているウィル・バクストンも含まれていたようで……。(本人はなぜか画像でTweetしている)

これはF1の厳格な検査態勢が機能している証拠だ、というワケですが、しかしロシアでは3万人くらいお客さん入れているんでしたっけ?因果関係がある話ではないにせよ、ちょっと不安になる話ではあります。イギリスでもまたかなり再流行しちゃっているみたいですしね、まだまだ油断できない……。