昨年に引き続いての同一サーキットでの連続開催、ただしタイヤアロケーションは一段柔らかめ。それがどのような変化をもたらすか……というわけで、F1オーストリアGP予選。
- 予選結果: FORMULA 1 BWT GROSSER PREIS VON ÖSTERREICH 2021 - QUALIFYING
- 予選ダイジェスト: 2021 Austrian Grand Prix qualifying report and highlights: Max Verstappen edges out sensational Lando Norris to take pole | Formula 1
- 予選後各チームコメント: What the teams said - Qualifying in Austria | Formula 1®
- 予選後記者会見: FIA post-qualifying press conference - Austria | Formula 1®
ノリス絶好調
再びフェルスタッペンがポールを押さえたのはある意味順当な結果であり、そこまでのサプライズはないのですが、フロントロウにマクラーレンのノリスが並んできたっていうのは驚きですね。しかも他車のペナルティによる繰り上げとかでもなくて、実力での2番手ゲットなんだからホントにすごい。フェルスタッペンとの差はわずかに0.048秒差で、2人のオンボードを見比べた映像を見るとラスト2つのコーナーまではノリスが勝ってるんですよね。
SIDE-BY-SIDE: How Verstappen edged Norris for Austrian GP pole position | Formula 1®(動画)
メルセデスはレッドブルのストレートラインスピードが速い、って言ってますけど、マクラーレンの直線番長ぶりはそのレッドブルも上回っていたりして。そのぶんコーナーでのロスが大きくなるワケですが、ノリスはそこをギリギリまで攻めてレッドブルとの差をほぼトントンまで持っていってしまったと。前回のレースでも予選4番手(スタートは3番手)、昨年のオーストリアでの開幕戦でも同じく予選4番手(スタート3番手)と、ノリスはこのサーキット自体得意としてるんですね。
昨年の開幕戦オーストリアGPでは3位表彰台に上りましたが、昨年と今年のシュタイアーマルクGPではどちらも5位フィニッシュ。ていうか、今年の直近3戦でも3連続5位フィニッシュとなっているノリスですが、記者会見で「明日の目標はなんでしょう。この調子をレースでも維持出来ますか?もしやまた5位になったりしないですよね?」みたいな質問をされたりして、「そうだね、たぶん5位だよ!」と返しているあたりはさすがです。ただ、そのあとに「マックスと1位を争うチャンスがあるなら狙っていくよ」みたいなコトも言っており、血気盛んなところも見せております。
I don’t want to be too negative, I want to be optimistic as I should be – but I’m also realistic and know it’s going to be a very tough race. We’re in the best position possible to maximise everything but if I have a chance to go for P1, a chance to race Max and go for it, then I will.
via: FIA post-qualifying press conference - Austria: Lando Norris | Formula 1®
マクラーレンのレースペースも悪くはないと思いますが、さすがにフェルスタッペンとタイマン張れるだけの速さがあるとは思わない……ですが、この勢いを決勝にどこまで持ち込めるのかは注目ですね。後ろに居るペレスやメルセデスの2台も当然ノリスの上には出たいと思っているハズで、ここらへんのバトルがどうなるか。
ハミルトンはもうフェルスタッペンと戦えるとは思っておらず、ダメージリミテーションのレースになると認めちゃってますね。
“Those guys have got two cars to get through in front, and they’ve got three-tenths on us – I think they’ve improved their car again for this weekend – so I would say that’s an easy cruise [to a] win for Max. I think for us it’s to try and see if we can get ahead of Perez and try to limit the damage this weekend,” he explained.
フェルスタッペンはQ3のアタックが不本意だったと言っていますがタイム自体は前回から0.12秒くらい上げてはきている一方、ハミルトンは0.05秒程度の上昇に留まっている状態。つまり前回からさらに差が広がってしまっていると。そりゃハミルトンも弱気な発言になろうというものですが、一方で今週末メルセデスと2年の契約延長を発表しているのでメルセデスの将来性自体には疑いはもっていないようです。今の苦戦も、言うなれば2022年のパフォーマンスを盤石にするための代償ともいえるワケですからねえ。
ただ、ハミルトン自身は今シーズンのタイトル争いへの意欲は全然衰えていないようですし、チームも今シーズンの新たなアップデートをするつもりはあるみたいなので、またどこかで潮目が変わるタイミングがあるかどうか、というところでしょうか。
ラッセル絶好調
ノリスと共に今回の予選のヒーローとなったのがウィリアムズのラッセル。ウィリアムズのマシンでQ3に進出してみせたコトだけでもスゴイんですが、しかもQ2をミディアムで突破したんだから尚更スゴイ。Q3でもストロールを上回る9番手につけてみせましたしね(ベッテルがペナルティを喰らうので、スタートは8番手)。なんかここまでのパフォーマンスを見せられてしまうと、来季のメルセデスのシートはラッセルでほぼ決まりかしらと思ってしまうんですが、そうなったらなったでハミルトンとの間に新たなバトルが勃発するのかもしれない。今度こそポイントの期待がかかるところですが、とりあえず前回のようなマシントラブルで戦線離脱……というのだけは勘弁してもらいたいところ。
フェラーリは今回2台ともQ3進出はならず、オマケにサインツはQ2で0.006秒差でラッセルに競り負けての11番手というコトで、少なからずショックはあるみたいですね。
"It was kind of the plan to not go to Q3 to be honest because we wanted to have a free choice for tomorrow, but on the other hand I’m a bit disappointed; obviously the best would be to go to Q3 on the medium [tyre], which Williams managed to do with George which is very impressive, and that’s what leaves me a bit disappointed today.
タイヤに厳しいフェラーリにしてみたら、タイヤが先週より柔らかい今回のレースではQ3進出にこだわるつもりは最初から無かったみたいですが、ウィリアムズがミディアムでのQ2突破を果たしちゃったもんだからフェラーリとしては少々格好がつかない感じ。
アルファタウリはなんか不安定な印象もありましたが、結果的には6・7番手を固める非常に堅実な結果。前戦に続き角田が予選でコンスタントにタイム刻めたのは良かったですねえ。ただ、ガスリーのコメントとかを見ているとマシンの挙動とセットアップの関係性を正確に理解しきれていない面もあるようで、結果オーライではあるもののなにかしっくりこない部分もあるようで。あと、以前から出ていた話ではありますが、ガスリーと角田のマシンの挙動に対するフィードバックがものの見事に真逆なようです。
“I was really happy because in FP3 we had completely opposite feedback and that makes the team a little bit confused because it was really the complete opposite,” Tsunoda said. “For example in Turn 1 he [Gasly] had a lot of oversteer but I had a lot of understeer. I don’t know where that came from, and every single corner we had different issues which is a little bit unusual.
結果としてはタイムが出ているので良いっちゃ良いんですが、このあたりの原因がクリアになればさらにタイムを伸ばせるんでしょうか。
そのほか
Q2のアタック最後にベッテルにアタックを妨害される格好になったアロンソですが、なんか相当怒ってましたねえ。「あれが無ければ多分5番手か6番手はイケた」とまで言ってますが、いやさすがにそれはどうだろうな……Q3へは進出できていたと思われますが(アロンソはQ2ラストアタックの最終セクターで自己ベストから0.54秒失っていて、Q2で10番手だったラッセルとのタイム差は0.303秒)。アロンソにしてみたらそれだけマシンに自信を持って乗れていたってコトでしょうし、いよいよ本調子になってきた感がありますね。やはりドライバーとしてのセンスは抜群だなあ。
一方でオコンは今回も低迷しているのが引っ掛かりますねえ。シーズン序盤の好調さはどこへ行ったのか……。ちなみに17番手という予選順位は前戦と同じ。
そういや、マクラーレンのリカルドも前戦と同じ13番手で予選を終えてますね。リカルド自身のマシンの感触は悪く無いみたいで、それがタイムに反映されない理由がわからない、みたいな状態みたいですね。彼ほどの経験者でもそういう状態に陥ってしまうというのがF1の怖さか……。レースペースは予選ほど悪く無い感じがしまうが、スタートポジションが悪いと追い抜きが難しいコースでは中団に埋もれてしまい、思うように結果が出ない……という悪循環になりがち。案外、リカルドにしてみたらイギリスGPで予定されているスプリントレース形式の予選のほうが向いていたりして?