シーズン後半に向けて、潮目がまた変わるのかも?という感じもする、F1ハンガリーGP予選でした。
- 予選結果: FORMULA 1 ROLEX MAGYAR NAGYDÍJ 2021 - QUALIFYING
- 予選ダイジェスト: 2021 Hungarian Grand Prix qualifying report and highlights: Hamilton roars to Hungary pole, as Bottas denies Verstappen front-row start | Formula 1
- 予選後各チームコメント: What the teams said - Qualifying at the 2021 Hungarian Grand Prix | Formula 1®
引きずられるイギリスGPの遺恨
メルセデスが久しぶりのフロントロウ独占。第3戦のポルトガル以来かな?イギリスGPでもスプリント予選ではフェルスタッペンに出し抜かれたものの金曜日の予選ではハミルトンが最速タイムをマークしていたワケで、メルセデスの予選ペースが上向いてきてますね。ハミルトンはハンガリーを得意としているってのもあるかもしれませんが、ボタスもフェルスタッペンの前に出られたというのはメルセデスにとって明るいニュース。
ただ、予選後のインタビューではスタンドからハミルトンに対してのブーイングが飛んだりして、なんだかなーな雰囲気になってました。Q3最後のアタックでメルセデスの2台がフェルスタッペンの前に陣取って、わざとゆっくり走ってレッドブルの邪魔をした、なんて話が出ていたのも一因なのかなって気がしますが、あれ別にメルセデスが違反行為しているワケでもなんでもないですからね。
Why Hamilton’s Verstappen ‘gamesmanship’ wasn’t an F1 rules breach
上記AUTOSPORTの解説記事によると、ハミルトンのアウトラップが予選セッション中に定められているラップタイムの最低ライン(これ以上遅く走ってはいけないというボーダー)を超えているコトはなく、なんならQ1の2回目のアウトラップの方がさらにタイムはゆっくりだった、というワケです。そもそもが路面温度が非常に高い状態になっていたため、そうでなくともアウトラップはゆっくりめに走るクルマが多かったですしね。ハミルトンの前を走っていたボタスも、さらにその前に居たオコンのペースに合わせざるを得なかった状況ですし。
フェルスタッペンはハミルトンをかわして前に出るという選択肢もあったワケですが、そうはしなかったワケです。なので、クリスチャン・ホーナーもハミルトンのアウトラップを直接批判するようなコトはせず、「駆け引きの一部」だ、とコメントしているんでしょうね。ただ、ハミルトンがレッドブルに揺さぶりをかけるためにゆっくり走った、という点は確信しているようです。
“It’s a bit of gamesmanship,” said the Red Bull chief. “I mean, Lewis got a hell of a lap in the bank and obviously he’s just backing things up because he doesn’t want to give our cars a clean run, but it’s his right to do that; he’s got track position, so we haven’t got a major issue, so it’s all about tomorrow now.”
レッドブルにしてみれば、この渋滞の影響でペレスが2度目のアタックに入れなかったというのもあって文句のひとつも言いたいのかもしれませんが、それを言うならギリギリまでピットアウトさせなかったチームの判断ミスでしょう。このホーナーのコメントを見るにイギリスGPの遺恨を引きずっているんだろうなあ、なんて想像しちゃうんですけど。レッドブルから出された事故の再審理請求も却下されちゃったしね。
レッドブルF1の主張通らず。ハミルトンのペナルティに関する再審請求は棄却。提出証拠は無効との判断 | F1 | autosport web
これに付随して、メルセデスがレッドブルの対応を批判する声明を出したもんだから、メディアもその2チームの対立を報じて泥仕合化しつつあったワケですよね。クリスチャン・ホーナーもトト・ウォルフもこういう場外乱闘を意図的に仕掛けるところがあったりしますし、メディアを巻き込んだこうした駆け引きはよくあるF1しぐさではあるんですが、しかしSNS時代となった昨今ではこうした話題があっという間にファンの間にも広がり、建設的な議論とは程遠い悪口雑言の投げつけ合いになってしまったりするワケです。
こうなると、当事者たちが「そろそろ矛を収めよう」と思っても周りがヒートアップしちゃって、事態がなかなか収束しなくなっちゃったりするところがコワい。イギリスGPのあと、ハミルトンを人種差別的な文脈で中傷するようなコメントがSNSに溢れかえってF1・FIA・メルセデスが共同声明を出すような事態にもなっていましたが、今のこの状況ではちょっとしたコトが火に油を注ぎかねない危うさがあるんですよね。
予選後の記者会見でもイギリスGPのクラッシュに関する質問が飛んだようで、フェルスタッペンもさすがにウンザリしてしまった様子。
“Honestly, the whole Thursday, we’ve been answering this stupid ******* all the time, so can we just stop about it, please? We are racers, we will race but of course we are going to race hard but fair, so we are just going to keep pushing each other,” he concluded.
マスコミの性質や大衆心理って、世界どこでも大して変わらない気がする。
ソフトスタートのレッドブル
予選の話からだいぶ離れてしまいましたが、予選セッションで一番意外だったのはレッドブルがソフトスタートを選んだコトですね。フェルスタッペンの説明によれば、他チームがソフトタイヤでタイムを上げてきており、自分のタイムがカットライン上になってしまうコトを懸念してソフトでタイムを出しちゃうコトにしたと。
“It’s just because the others were on the softs and they were improving their lap times,” he said. “My lap time on the medium would really have been on the edge for a top-10 and that’s why we decided to finish the lap [on soft tyres in Q2].
フェルスタッペンがQ2の1回目のランでミディアムタイヤで出したタイムが1:16.769、一応これならQ3進出はできたタイムなんですよね。ただ、あまり余裕がないタイムだったのは確かで、しかもフェルスタッペンはQ2の2回目のランをアルピーヌ、マクラーレン、アストンマーティン勢より前で走っていたので、様子を見てアタックを止めるコトもできなかったワケです。
加えて、クリスチャン・ホーナーのコメントを見ると「メルセデスの逆をやった」というコトでもあるようで。
We couldn’t do the same time as Lewis did on the medium and we felt that maybe tactically it was better to take a different route. We prefer the soft tyre for the start and we’ve got to drive an attacking race as we know how hard it is to overtake around here which means strategy is going to be crucial.
via: Christian Horner : What the teams said - Qualifying at the 2021 Hungarian Grand Prix | Formula 1®
メディアムのタイムでメルセデスに追随できないとわかった時点で、真っ向勝負を避けたというコトですね。ただ、これでフェルスタッペンがフロントロウからスタートできていればまだ良かったんですが、3番手となったコトでレッドブルは結構苦しい立場になってしまった感はあります。フェルスタッペンにとってはダメージリミテーションのレースになる公算が高そうですが、ボタスをかわして2位フィニッシュというのが目指すラインかなと。ここでのハミルトン速いし。
しかし、ハミルトン1位でフェルスタッペン2位だと想定した場合、チャンピオンシップは1ポイント差に……。もしハミルトンがファステストも獲った場合は同ポイント、しかも優勝回数は2人とも5勝ずつとなり、フェルスタッペンが2位ならば2位の回数がハミルトン3に対してフェルスタッペン4となるので、ランキング上は辛うじてフェルスタッペンが首位というコトになります。そんな状態で夏休み入ったら、それはそれでめっちゃスリリングですね。
そのほか
レッドブルとメルセデスの話に終始してしまいましたが、あとはやはり5番手に食い込んだガスリーですかね。イギリスではちょっとアレでしたが、これだけ一貫して予選で高パフォーマンス出し続けるのスゴイですねえ。いやホント、もう一回レッドブル乗せてみたほうが良いのではって気がしちゃいますけど、ホーナーも一回降格させた手前そうはしないんだろうなあ。
ガスリー曰く、予選前にフランツ・トストとちょっとした賭けをしていたみたいで、ガスリーは自身の予選順位を8番手と予想したのに対してトストは7番手と予想し、もし8番手だったらホテルまで歩いて帰るように、と。そう言われたガスリーは「わかった、じゃあもし6番手だったら、ホテルまで乗って帰れるフェラーリを用意してよ」と返してトストはそれを承諾したんだとか。
“Basically before the quali, we had a small prediction game with the team,” said Gasly. “I thought we would qualify eighth, Franz said seventh and if I would qualify eighth, I’d need to go back to the hotel walking, he said – I wouldn’t be allowed to take our Honda car.
“And I said, okay, so if I do sixth, I get a Ferrari – you find a Ferrari for me to drive back to the hotel, and he said okay. But now I’m fifth, so maybe I get two Ferraris…”
結局、予選5番手だったガスリーはどうやってホテルに戻ったのか。ちょっと気になります。
ガスリーはそんなジョークも飛び出すくらいの絶好調ぶりなのに対し、角田はFP1でのクラッシュも響いたか振るわない予選に。ていうか、1周76秒のサーキットでチームメイトに1秒の差をつけられるのはデカいよね……。そもそも角田自身が満足できる状態にマシンが仕上がっていないのが問題なんだろうとは思いますし、ガスリーと角田がマシンから感じるフィーリングが全然違っていてチームが対応しきれていないってのもあるんでしょう。
ただ、目下ガスリーがここまで好調なので、チームとしてはガスリーを中心に動かざるを得ないでしょうし、角田としてはこの状況で最善を尽くすしかないというのが辛いところではあります。ただ、それゆえにFP1からクラッシュするなんてのは絶対避けなきゃいけない。今回が11戦目でそろそろ結果を求められる時期でもありますし、11戦のうち6戦がQ1ノックアウトで終わっているというのは正直厳しい結果。今のガスリーに勝つのは至難のわざとは思いますが、せめてもう少し可能性を感じさせる結果を出せないと、生き残りは厳しいかもしれません。
そういう意味では、ルーキーコンビで走っているハースの方が、ある意味走りやすい環境ではあるんだよな……。ミックも今回FP3で大きなクラッシュをして予選をフイにしてしまいましたが、マゼピンにはだいたい勝ってるし、ハースの戦闘力にしてみたらかなり善戦しているっていうんで評価は悪くないですし。マシンは結構壊すけど。むしろ最近はマゼピンのがマシン壊してない気がする。