大須は萌えているか?

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F1[21] トルコGP 決勝

ずっとインターミディエイトで走るコンディションとなったコトで、我慢比べのようなレースになっちゃった感。そのおかげで、タイヤ無交換完走という今のF1では珍しい記録も生まれたりしましたが……F1トルコGP決勝。

ボタス完勝

ポールポジションからスタートしたボタスがそのまま優勝。タイヤ交換直後のタイミングで一時的にルクレールにトップを明け渡す場面はありましたが、まあ完勝といって良いのではないでしょうか。ファステストラップも取ったし。記者会見で本人も言及していますが、昨年は接触の影響もあったりして本人も数え切れないくらいスピンしまくった挙げ句に14位に沈んでいたことを思うと雲泥の差というか、これ同じドライバーなんだろうかと思ってしまうくらいの違いです。

非常に力強いレースだったんですが、しかしボタスってこれが今シーズン初優勝なんですねえ。ボタスって、ツボにはまると非常に強い勝ち方をするもんだから、これまで勝ててなかったというのがちょっと信じられないような気分になっちゃうというか。本人も非常に満足げでしたが、やはり今年ようやく勝てたというのと、10勝目という節目の勝利だったコトもあるのかもしれません。これがキャリア最後の勝利とならないコトを祈りますが(余計な一言)。

ボタスにとって幸いだったのは、メルセデスがドライでもウェットでも非常に速かったコトと、ハミルトンが追い上げきれなかったという点でしょうね。フェルスタッペンはメルセデスのペースに追随できないと見るや、ポジションキープの走りに切り替えてリスクを犯さないスタイルを徹底してましたし、ハミルトンは非常に速かったものの上位をキャッチアップするところまではたどり着けませんでしたし。ボタスにしてみれば、自分のペースに集中できる環境が整っていたワケですね。

フェルスタッペンもこういう状況では無理をしない、とスパッと頭を切り替えられるんだよなあ。でもメルセデスと接戦状態になると一気にオラオラ状態になるワケですけど。まあレーシングドライバーなんだから仕方ないか。

タイヤを変えるタイミングでひと悶着

11番手からの追い上げを図ったハミルトンですが、最終的には5位どまり。昨年はあのヌルヌルなウェットコンディションで6位スタートからインターミディエイトを50周履きっぱなしで優勝してみせただけに、今年も優勝争いに絡むところまで来るんじゃないかと思ったんですが、序盤に角田にしばらく抑え込まれて上位勢との差が開いてしまったことと、中盤に追いついたペレスにもオーバーテイクをやり返されたりしてるうちにフェルスタッペンにタイヤ交換できるだけのセーフティマージンを与えてしまう形になり、そのままタイヤ無交換で引っ張ってなんとか表彰台を……と考えたりもしたようですが、結局58周レースの50周目にタイヤ交換をすることとなり万事休す。

ハミルトンはステイアウトしたまま走り続けるコトを主張していたので、当然このチームの判断には不満だったでしょうね。後ろにいたルクレールやペレスとの差は10秒ちょいあったので、上手く行けば最後まで粘れたのかもしれませんが、しかし新品インターに履き替えて少し周回を重ねた面々がかなりペースを上げてきていたので、ステイアウトしていた場合コース上でオーバーテイクされていた可能性も高そうでしたしねえ。

レース終盤は路面がだいぶ乾きかけてきていたけどドライでは無理、というコンディションだったので、インターに交換した場合最初はそれなりに速いんだけど少し走るとグレイニングが起きてペースが落ち、そしてもうしばらく周回するとグレイニングの凸凹が均されてきて再びペースが上がる、という状態になっていたようで。このため、タイヤ交換後3〜7周目ぐらいはペースが伸びない感じになっていたので、ハミルトンはタイヤ交換後追い上げもできない状態だったと。なので、タイヤを換えるならもっと早いタイミングで換えておくべきだった……とはいうもののこれは結果論。インターがどれだけもつかわからなかったコトを思えば、最後まで引っ張るギャンブルに打って出るのも不合理ではないとは思いますし、ギャンブルに失敗したと悟った時点でダメージを最小限にした、と考えれば残り8週でのピットストップもまあ理解はできるところ。ここで「損切り」できずに引っ張っていた場合、ハミルトンのペースが一気に落ちてさらにポジションを失っていた可能性だってありますからね。

メルセデスにしてみれば、終盤にドライタイヤにスイッチできる可能性にも賭けていたみたいですが、この賭けもうまくは行きませんでした。どちらにせよ、正攻法では上位を狙えなかったという言い方もできますね。

タイヤ無交換作戦という珍事

一方で、アルピーヌのオコンは最後までタイヤを交換しないまま走り続けて10位入賞を果たしてしまいました。通常のドライコンディションでは最低一回のタイヤ交換が義務付けられている現在のF1では非常に珍しい記録ですが、インターミディエイトで最後まで走り切るというのもなかなかですよねえ。オコンいわくかなりギリギリの状態だったみたいなので、こちらもかなりギャンブルめいた作戦だったワケですね。

驚異の”タイヤ無交換”作戦で10位入賞。オコン「もう1周あったら、パンクしていただろうね」

タイトル争いをしているハミルトンに比べれば、オコンにとってはギャンブルに負けたところで失うものは無いワケですからやる価値はあったんでしょうね。タイヤ交換に動いていたらどのみちノーポイントで終わっていただけでしょうし。ピレリのマリオ・イゾラはもしハミルトンがタイヤ無交換のまま走り続けた場合、最後までタイヤが無事だった可能性については懐疑的だったようで、そういう意味ではオコンもギリギリの状態だったのは間違いないでしょう。ピレリにしてみたら、やってほしくない作戦だったでしょうね。

Pirelli doubts Hamilton could have finished without late Turkey F1 pitstop

タイヤ無交換でフルディスタンスのレースを最後まで走りきったっていうケースはいつ以来なんだろう、と少しググってみたところ、1997年のモナコGPで5位入賞したミカ・サロ以来であるとする記事がありました。ただ、これは厳密にいうと「フルディスタンスのレースをピットレーンに入ることなく走りきったレース」ということになります。

Ocon Broke A 24-Year-Old F1 Record At The Turkish GP – WTF1

なぜこんな言い方になるかというと、2005年に一年間だけ「タイヤは原則無交換」という今思えばイカれたレギュレーションが存在していたため、タイヤ交換せずに決勝を走り切るのが当たり前という事象が発生していたんですね。ただこのときはレース中の燃料給油が認められていたため、ピットには入っていたっていう。

上記の記事では1961年のオランダGPで誰一人としてピットに入らなかった(そして史上初の全車完走レースになった)、なんて記録も紹介されていますが、まあ当時は戦略的にタイヤ交換をするなんていう発想すらなかった時代ですからね……ただ、当時のマシンが一台もトラブルに見舞われるコトなく完走したっていうのは、それはそれで驚異的な出来事なんじゃないかとは思いますが。記録を見てみると、15台が出走していたみたいですね(勝ったのはフェラーリのウォルフガング・フォン・トリップス)。

昔のF1はレース中にタイヤを交換するというのはトラブルがあったときに限られていたワケですが、レース中に意図的にタイヤ交換・燃料給油を行いだしたのは1982年のブラバムとされています。それが効果を発揮してきたために、翌年からは他のチームも真似て定着していったそうな。そういう意味では意外とタイヤ交換の歴史って新しい……つってももう40年前か……。