大須は萌えているか?

gooブログからこっちに移動しました

F1[21] サウジアラビアGP 予選

カタールに引き続きF1初開催となるサウジアラビアですが、まー確かにめっちゃ個性的なコースではあるもののおっかねえサーキットだなあ……大きな事故が起きなければ良いんですが。そんな不安を抱えつつも、予選は大きな混乱なく過ぎていったのは幸いでしたが、しかし最後にシビれる展開が待ってましたね。そんなワケで、F1サウジアラビアGP予選の話。

速さのマックス、経験値のルイス

「このサーキットではこっちが有利」みたいな定説がコロコロ覆されている今シーズンですが、サウジアラビアのコースレイアウトはあからさまに高速志向で、こりゃあメルセデス有利だろうと思われるのも致し方のないところではありましたし、私もそう思っていました。しかしフタを開けてみると、メルセデスがソフトタイヤの発熱に思いの外苦慮する一方、レッドブルが一発のタイムでは好調なところを見せて「おや?」という雰囲気に。FP3ではフェルスタッペンがトップタイムで締めくくったもんだから、予選の流れが俄然わからなくなってしまいました。

予選セッションが始まっても、路面の改善が引き続き進んでいるもんだから後から走ったクルマがどんどんタイムを更新し、その一方でタイヤの熱入れをミスるとタイムが伸びないので、極めて読みづらい展開になってましたね。それでも、Q2までの流れを見ている限りではレッドブルが有利に事を進めている感じではありました……が、Q3でひっくり返ってしまいましたね。一番の問題はもちろん、フェルスタッペンの最終アタックなんですが。

あのアタックの映像を見ていたとき、もうこれでもかっていう位にリスクを取りまくった攻め方をしており、それでもセクター2までガンガンタイムを削り取っていったもんだから、比喩抜きで「鳥肌モノ」のアタックだなあと画面に見入っていたんですが、最終コーナーにアプローチしたときにカメラアングル的には左フロントのロックアップは見えなかったものの、クリップから離れているように見えたので「あれ、ターンインミスってる?」と思ったら次の瞬間にはコーナー出口で右リヤタイヤがウォールに接触。最初から最後まで綱渡りのようなアタックでしたが、ホントに最後の最後で綱が切れてしまった感じ。これ、もしも最終コーナーミスらずに走りきれていたら伝説級のアタックになっただろうなあ……と思う一方、ある意味フェルスタッペンらしいアタックだったなあと思ったりもして。

2021 Saudi Arabian GP Qualifying: Verstappen loses pole position with crash on final corner(動画)

フェルスタッペン自身は「なにが起きたのかわからない」みたいなコメントしてますけど、まあこれマシントラブルとかっていうよりはオーバースピードだよなあ……という風に見えます。セクター2までのリードがかなり大きかったはずなので、最終コーナーは安全に入るだけで良かったのに……と思ってしまいますが、集中して気持ちが入っている状態だと最後まで最大限のスピードを乗せてってやろう、と思っちゃうんでしょうね。フェルスタッペンは特にそういう傾向が強い。

先にアタックを終えていたハミルトンは、純粋な速さではフェルスタッペンに及んでいませんでしたが、このリスクの高いサーキットで、ミスを犯さずに攻められるギリギリのラインを通していった感じでしょうか。予選中、タイヤに思うように熱が入っておらずにコースアウトしてアタックをダメにしてしまうシーンもありましたが、短いセッションの間にそういった様々なファクターを織り込んで学習して、最後の最後にまとめあげる、という力はさすが。今回の予選の主役は間違いなくフェルスタッペンでしたが、フロントロウを独占したのはメルセデス。これは今季を象徴するシーンになるのかもしれない……なんてことを思いつつも、しかし決勝はどう転ぶかまたわかりませんからね。

決勝に向けて懸念される要素として、そもそもフェルスタッペンのギヤボックスは無事なのかっていう問題がありますが、この記事を書いてる現在はまだどうなるかという情報は出ていません。レッドブルはもし少しでも懸念があれば躊躇なく交換する(フェラーリのようなヘマはしない)と言っていますが、もしグリッドダウンペナルティとなった場合はどこまで挽回できるかが最大の焦点になります。フェルスタッペンにしてみれば「最低2位」を取りたいレースでしょうが、このサーキットでリスクを取りすぎるとリタイヤの危険性が一気に高まりますしね。

もしギヤボックス交換なしでスタートできるのであれば、スタートで2番手もしくはトップを狙いたい形にはなります。ただ、このコースはどう考えてもレース中に最低1回以上のセーフティカーが出動することになるでしょうから、そういう意味ではメルセデスレッドブル双方とも運の要素も絡みますよね。もちろんハミルトンがクラッシュする可能性だって無いとは言えないワケですから、ホントに始まってみないとわからないですねこれは……。時間帯的にライブで見られないのが残念です。

アルファタウリがどこまでいけるか

カタールでは決勝で散々な結果に終わったアルファタウリですが、今回も予選は絶好調。ていうか、角田が本当にいい感じですね。ミディアムでQ3に進出できたのは彼のキャリア初だと思いますし、ガスリーに比べても遜色の無いタイムをコンスタントに出していた一方でマシンを壊すようなミスもしていなかったので、本当に高い次元でバランスの取れた仕事できている印象。予選は8番手という結果ですが、それでも悔しそうなコメントしているあたり本当に調子が良いんですね。

I’ve got some mixed feelings about today. I think my performance in Q1 and Q2 was great and I’m really pleased with that, but unfortunately on my final lap in Q3 I had traffic and I lost a lot of time. I think I could’ve been starting further up the grid tomorrow, so it’s frustrating right now.

via: Yuki Tsunoda : What the teams said - Qualifying for the 2021 Saudi Arabian Grand Prix | Formula 1®

ここが比較的オーバーテイクの難しいサーキットなんだとすると、前戦よりかはポジションを守りやすいんじゃないかとは思うんですが、あとはピットストラテジー次第でしょうね。思わぬ混乱が発生しても不思議じゃないコースなだけに、最後までコンスタントに走ってくれることを期待。

今回、Q3に2台と進んでいるチームはメルセデスレッドブルの他にはアルファタウリだけなので、チームとしてもいい状態なんでしょうね。ホンダPUがいい仕事してるってのもあるんでしょう。

コースレイアウト的にはマクラーレンがもっと上に来るかな、と思っていましたが、ノリスがなんとか7番手に食い込んだ一方でリカルドは11番手止まり。Q2でフロアを破損して、その影響があったようですが、決勝でどこまで伸びてくるかが気になるところ。フェラーリマクラーレンより好調そうですが、サインツがやらかしてしまって15番手に終わってしまったのが痛いですね。逆に、金曜に大きなクラッシュをしたルクレールが4番手というのはびっくり。

あと、アルファロメオも調子が良さそうで、ジョビナッツィが久しぶりにQ3進出。ライコネンも12番手につけているので、もしかするとダブル入賞も狙えそうなポジション。やはり中団は混戦模様で、それだけにこのウォールに囲まれたサーキットではクラッシュ起きそうだよなあ、という予感がしまくっています。

その他

ストリートサーキットなのにモンツァに次ぐハイスピード、そして全開区間は結構長いけどコーナーが多くコース幅も思ったより広くない、というコトで、ドライバーにとっては体力的にもそうですが精神的にも相当厳しそうなサーキット。ちょっと油断するとあっという間にウォールの餌食になりそうな気がしてしまいますが、ハミルトンなんかは「我々は皆ナイフのエッジの上に居るんだよ。そして至るところに『ウォール・オブ・チャンピオンズ(歴代チャンピオンを何度もリタイヤに追い込んだモントリオール最終コーナー外側のウォール)』があるんだ!」みたいなコメントしてますね。

It’s where you do and don’t attack and trying to find the right balance of just being on that knife-edge,” he continued. “As you could see for Max, obviously, we’re all on the edge. And there’s the Wall of Champions everywhere here! So, a really complex track, and incredibly quick. It was enjoyable though. Intense, but enjoyable.

via: ‘Max would have been ahead’ says Hamilton, as title rival’s qualifying crash hands him crucial Jeddah pole | Formula 1®

それでも最後に「でも楽しい」って言っちゃうあたりがF1ドライバーの凄みでしょうか。アクセル開度が高いのにブラインドになっているコーナーが多いので、事故とかが発生した場合はピットからのインフォメーションが極めて重要になるでしょうし、これ各ドライバーの担当エンジニアも気の休まる暇が無いでしょうね。レースが終わる頃にはチームクルー含めて全員が燃え尽きてしまっているんじゃないかと思うんですが、さてどんなレースになるのか……。

また、先月終わりにフランク・ウィリアムズの訃報が伝えられましたが、それを受けて今回のレースでは全車がフランク・ウィリアムズのステッカーを貼っていたり、レース前にはFW07のデモランが行われたりもするみたいですね。FW07は投入された1979年にチームにとっての初優勝を記録し、Bスペックが投入された翌年には初のタイトルをもたらしたというウィリアムズにとっては記念碑的なマシンですが、この頃のウィリアムズってサウジアラビアの国営航空会社や、サウジアラビア人であるマンスール・オジェ率いるTAGグループの支援を受けており、サウジアラビアとの結びつきが強かったんですよね。

F1の第一線から退いて間もなく亡くなったというのもレース一筋だったフランクさんらしいのかな、という気もしましたが、チーム最初の黄金期に結びつきが強かったサウジアラビアでの初レース前だったというのもなんだか印象的ではありますね。私がF1を見始めた頃にはまさに黄金時代を築いていたチームだけに、時代の流れというのも強く感じます。ご冥福をお祈りいたします。