やっぱりレッドブルが圧倒的なんだよなあ……という感じのF1サウジアラビアGP決勝のお話。
- 決勝結果: FORMULA 1 STC SAUDI ARABIAN GRAND PRIX 2023 - RACE RESULT
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- 決勝後各チームコメント: What the teams said - Race day at the 2023 Saudi Arabia Grand Prix | Formula 1®
レッドブル完勝
なんやかんやでレッドブルが1-2フィニッシュ。フェルスタッペンがどこまで追い上げてくるかと思ったら、あっさり2位まで上げてきてしまいましたね。そのまま優勝するんじゃないかとまで思ってしまいましたが、そこはペレスが粘った形。ていうか、今回のペレスはなんかかなり勝利を意識していた感じがしますね。後ろからフェルスタッペンが追いかけてくる状況下で、絶対に首位は明け渡さないという意思を感じました。最終的にフェルスタッペンがファステストラップを取ってランキング首位を守りましたが、ペレスはチームの指示に従った結果ファステストラップを失ったと考えているようで、そのコメントを見るとポイントランキング自体もかなり意識しているようにも見えます。
ペレス自身、今年は本気でフェルスタッペンにチャンピオン争いを仕掛けたいと言うことなんでしょうね。まあ正直傍から見ているとフェルスタッペンに勝つのはさすがに厳しいのでは……とは思いますが、しかしまずは挑戦してみないことには始まらない、ということでしょう。特にこうした序盤戦でいかにフェルスタッペンに食らいつき、あわよくばポイントでリードを稼ぐかと言うのは重要でしょうね。
フェルスタッペンもそうしたペレスの意識というのは十分に感じ取っているのだと思われ、だからこそ最後の最後にファステストラップをもぎ取りに言ったんでしょう。今年はレッドブルのタイトルはほぼ決まりとしか思えない感じなので、だからこそチームはこの2人のドライバーの心理的なケアに腐心することになりそうな気がします。クリスチャン・ホーナーの本音としては、早いとこフェルスタッペンがポイントでぶっちぎって欲しいと考えているんじゃないかと勘ぐってしまうのですがいかがなもんでしょうか。
アロンソのタイムペナルティを巡るゴタゴタ
今回もレッドブルの後ろに続いたのはアストンマーチンのアロンソ。レッドブルに太刀打ちするだけの速さはありませんでしたが、やはりロングランで堅実な速さを見せつける格好になりましたね。スタート位置をミスってペナルティを食らったのはちょっと解せない感じでしたが……。
そしてそのペナルティの消化を巡っても一悶着ありましたね。アロンソはセーフティカーラン中荷ピットに入り、そこで5秒ペナルティを消化したわけですが、その際5秒経過前にリアジャッキがマシンに触れていたとして、レース後に追加の10秒ペナルティが課される格好に。こうなるとアロンソの表彰台が消える格好になってしまいますが、しかしチーム側がこれに抗議をした結果、ペナルティが取り消されてアロンソの表彰台が確定するというドタバタが発生していたようで。
これ、なんで抗議が認められたかというと「ジャッキがマシンに触れてはいなかった」というワケではなく、「規則に『ジャッキがマシンに触れてはダメ』とは書かれていない」ということだったようです。レギュレーションには、タイムペナルティを受けている最中は『車両に作業を行うことは禁止と書かれており、ジャッキがマシンに触れることが「作業を行っている」と見做されるべきなのか、という点が争点となったワケですね。
これについて、
チームと諮問委員会との間では、ペナルティ実行の間はチームはマシンに触れてはならないという点で合意しているというのがスチュワードの認識だった。つまりマシンに触れた場合は、マシンへの作業を行っているとみなされるという合意が成立しているとスチュワードは考えていた。そして映像を見ると、アロンソ車にはリヤジャッキが触れていたため、スチュワードはペナルティを科すことを決めた。
これに対してアストンマーティンは、再調査を要求。ジャッキがマシンに触れていることが“作業中”に当たるという事前の合意があったというスチュワードの見解は誤りであると主張。過去に、ペナルティ実行中にジャッキがマシンに接触しながらそれによるペナルティが出なかった例を7つ挙げた。
via: アロンソが3位に復帰。スチュワードが再調査の結果、認識の誤りを認め、ペナルティを撤回/F1第2戦 | F1 | autosport web
という流れで抗議が認められたようです。ていうか、ここで咄嗟に過去の事例を持ち出して抗議できたのはチームのファインプレーですね。よく7つも例を出せたもんですが……。
あと、フジテレビNEXTの中継で川井ちゃんが「セーフティカーランの最中にタイムペナルティを消化したことが審議対象になったのでは」といったような指摘をしていましたが、これは間違いなんですよね。私もよくわかっていなかったので改めてレギュレーションを確認してみると、5秒と10秒のタイムペナルティに関しては以下の様に書かれています(JAFのサイトに掲載されている日本語訳版)。
上記の両方の場合とも、当該ドライバーは、次にピットレーンに進入した時にペナルティを実施しなければならない。疑義を避けるために、これにはVSCあるいはセーフティカー手順が使用されている間にドライバーが行う一切の停止が含まれる。
『上記の両方の場合』というのは5秒と10秒のタイムペナルティのことを指しており、これを解釈するとVSCやセーフティカーランの最中であっても、タイムペナルティを課されている状態でピットストップをした場合、ペナルティを消化しなければならない、ということになります。逆に、ペナルティを消化せずにピットアウトしてしまうのがNGなんですね。
VSCやセーフティカーの最中に消化してはいけない、という話は、ドライブスルーペナルティもしくは10秒間のストップ&ゴーペナルティの場合なんですね。
上記第54条3項a)および第54条3項b)の場合を除き、競技審査委員会の決定が公式メッセージ送信システムを使用し当該競技参加者に通告された時刻から、当該ドライバーはピットレーンへ進入する前に2回まで走路上のコントロールラインを通過でき、また第54条3項d)に従ったペナルティの場合は自己のガレージ向かい、タイムペナルティとして課せられた時間の間、自己の ピットストップ位置に留まらなければならない。
しかしながら、当該ドライバーがペナルティを受ける目的で、すでにピット入口に居ない限り、VSC手順が使用されている場合あるいはセーフティカーが出動した後にペナルティを実施することはできない。 セーフティカーの後方でまたはVSC手順の間でコントロールラインを通過した回数は、走路上でコントロールラインを通過できる最大数に追加される。
ここでいう『第54条3項a)および第54条3項b)』というのは5秒もしくは10秒のタイムペナルティを指しています。つまり、この5秒・10秒のタイムペナルティはVSC・セーフティカー下であろうと関係ないんですね。あと、ドライブスルー・ストップ&ゴーペナルティを課された場合はその後3回コントロールラインを通過する前にピットに入ってペナルティを消化せねばならないとされていますが、VSC・SCが入った場合はその分コントロールラインの通過可能回数をカウントアップしてくれるワケですね。
そんなワケで、今回アストンマーチンはレギュレーションの解釈を巡っても大勝利だったわけですね。お見事でした。
意外とメルセデス頑張れた
レッドブルがあまりにもブッチギリだったことを除けば、意外とその後ろは意外といい勝負だったのかな、という気もします。アロンソとラッセルの差も5秒程度のところに収まっていますし。まあトータルのパフォーマンスはアストンマーチンが一歩抜きん出ている感じもしますし、ジェッダは特殊なコースなので一概にパフォーマンスの良し悪しを言うこともできないんでしょうけど、思っていたよりメルセデス頑張ったな、という印象ではあります。ていうか、フェラーリが悪すぎたのかもしれませんけど。
予選のルクレールのパフォーマンスを見ている限り、予選一発の速さはそれなりにあるのは間違いないものの、レースペースが本当に良くないですね。もしストロールがトラブル無く走れていたら、おそらく2台ともストロールにも負けていたでしょうし。予選は速いけど決勝が……という傾向は去年から全然変わっていない、というか去年よりも悪化している模様。アストンマーチンはアロンソが乗ればレッドブルに次ぐ速さを見せますが、ストロールとの組み合わせで見るとメルセデスの2台と同じかちょっと劣るかな……という感じでしょうか。まあメルセデスのマシンに乗っているのが7度のワールドチャンピオンと、昨年優勝を飾った俊英であることを考えると、マシンの出来はアストンマーチンのが上だと言わざるをえないワケですが……。
メルセデスにしてみれば、いかにアロンソとストロールの間に割り込んでいけるかというのがポイントになるでしょうか。そして大型アップデートでアストンに並ぶくらいのマシンパフォーマンスまで持っていければ御の字……という感じ。アストンのマシンは緑色のレッドブルとかなんとか言われてますけど、成り立ちを考えればメルセデスの兄弟車と言ってもいい様な立ち位置でもあるワケで、それならメルセデスがアストンと同等の速さに到達できないワケがない……と思いたい。
角田も頑張った
今回角田もめちゃくちゃ頑張ってましたよね。うまいことセーフティカーのタイミングでピットに入れたもんだから、これは大チャンス……と期待していたんですが、やはり今のアルファタウリのマシンでは入賞圏内にマシンを留めておくことができませんでした。それでも、再三に渡るマグヌッセンのアタックをブロックしてみせていたので、「もしかしたら……」という期待もあったんですが、なんか今回のマグヌッセンはしつこかったですねえ。
ただ、角田は開幕戦も今回もマシンの力を十二分に引き出しているように見えました。今年は明らかに安定感が増しているし、チームを牽引するんだという意識が出ているようにも感じます。だからこそ、走らないアルファタウリのマシンにはガッカリしてしまうワケですが……。2戦連続の11位という結果は悔しいかと思いますが、とにかく今はチームメイトにしっかり勝って実力をアピールし続けるしかないですね。角田はF1に来て以降着実に力をつけてきているので、なんとかもっとコンスタントに上位に食い込めるマシンを手にしてほしいものです。