大須は萌えているか?

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『シン・仮面ライダー』を観てきた話

先週末、映画館で『シン・仮面ライダー』を見てきました。

私は子供の頃、ウルトラマンシリーズは結構熱心に観ていた記憶があるのですが(再放送も結構やっていたし)、仮面ライダーシリーズはあんまし記憶にありません。平成ライダーシリーズもほとんど観ておらず、例外は知り合いに勧められて見始めたら思いの外面白かった『仮面ライダーW』を最後まで観たくらいでしょうか。初代仮面ライダーは配信でちょっと観たことがある程度で、藤岡弘が怪我をして途中降板したけどまた復帰したエピソードや、物語の途中でショッカーがゲルショッカーに生まれ変わったりしたのはなんとなく知っています。

その程度の知識しかないものの、庵野秀明監督の仮面ライダーが劇場公開されるとあってはとりあえず観に行くべきだろうな、と思ってしまった次第。もうちょっと予備知識はあったほうが良いかな思い、YouTube東映特撮チャンネルで公開されていた仮面ライダー TVシリーズの1話と2話を改めて観て、

それから原作者である石ノ森章太郎の漫画版を読み、

加えてシン・仮面ライダーのショッカー側の視点が描かれているコミック『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』の1巻を予め読んでおきました。

結果的にこの予習は正解だったなと思います。特に石ノ森章太郎版のコミックはTVシリーズともまた違った世界観で描かれており、かつ『シン・仮面ライダー』劇中でもこの石ノ森章太郎版の要素があちこちに見受けられるので、読んだことない方は『シン』を観たあとでも良いので読んでみることをオススメします。コミック版はより「人間であって人間ではない」改造人間の苦しみが描かれており、大人向けな印象ありますね。ライダーのスーツを着たまま仮面だけ外すという描写があるのがコミック版の特徴で、これは『シン・仮面ライダー』にも継承されていますね。『真の安らぎはこの世になく』にも登場する「ジェイ」及び「ケイ」も石ノ森章太郎作品からのオマージュですよね。

『シン・仮面ライダー』のストーリー自体は映画単体としてみるとそこまでメチャクチャ面白かった……という感じでもありませんでした。『シン・ウルトラマン』のときにも感じたんですが、TVシリーズやコミックのエッセンスをあれこれ取り入れようとしている結果、かなり早回しのダイジェスト的な感じになっている印象が否めず、舌足らずな感じがしてしまうんですよね。『シン・ウルトラマン』の場合はウルトラマンという作品自体に馴染みがあったのでかなり脳内補完も効いたんですが、仮面ライダーの場合はウルトラマンほどの馴染みがなかったので余計にそう感じたのかもしれません。

ただ、パンフレットに書いてある庵野監督の言葉を見るとちょっと腹落ちするところもあるんですよね。ちょっと引用させていただくと

完成まで7年強の間、自分を支えた最大のモチベーションは「僕の考えた仮面ライダーを作りたい」ではなく「仮面ライダーという作品に恩返しをしたい」でした。

自分に出来る恩返しは、ATAC等での過去作の資料保存と啓蒙活動に加えて、「新作」を作ることでオリジナル作品を自作で越えるのではなくオリジナルの魅力を社会に拡げ、オリジナルの面白さを世間に再認識して貰う事でした。

つまり、この映画は新作の仮面ライダー映画であると同時に、旧作のプロモーション映像の様な役割も兼ねているということなんでしょう。これは『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』も同様なんでしょうね。事実として、私もこの映画を観るために旧作の1~2話を見返したり、石ノ森章太郎のコミック版を読んだりしているので、そういう意味では庵野監督の意図にまんまと乗せられている感じもします。映画としては、ストーリーそのものよりも映像の美しさだとかカット割り、テンポの良さを楽しむことで『仮面ライダー』世界の面白さを(考えるのではなく)感じる内容になっていると考えるべきなのかもしれません。

もちろん、今の時代に作られる仮面ライダーとしての新しさもあり、その代表が本郷猛のバディとして活躍する緑川ルリ子かなと。TVシリーズや漫画版では本郷猛に守られる存在として描かれていますが、今作ではその立ち位置が大きく変わっていますよね。TVシリーズだとクモ男を倒したあと、気を失っていたルリ子を本郷が抱きかかえておやっさんのクルマに乗せるシーンがありますが、今作だと ルリ子が自力で立ち上がるように改変されており、これって結構象徴的なシーンだなと思ったり。

あと、長澤まさみは『シン・ウルトラマン』以上にぶっ飛んだ役柄でしたね……(最初長澤まさみと気づかなかったレベル)。

こうした路線もアリっちゃアリなんですが、ウルトラマンにせよ仮面ライダーにせよ、庵野監督が思う「俺の考える最高のウルトラマン(ライダー)」というコンセプトでも作品を作ってくれないかな……と期待しちゃったりもするんですけど、それは難しいでしょうか。……まあそれ作ろうと思ったら、作品が完成するまでにまたすんごい時間を要してしまうのかもしれませんけども。