大須は萌えているか?

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「SmartNews」問題の主題はたぶん著作権とかアプリの仕様じゃない

iPhone向けアプリの『SmartNews』というヤツがちょっとした炎上状態になってて興味深かったりします。

SmartNews(スマートニュース)| 話題の記事がサクサク読めるiPhone用ニュースアプリ

このアプリ今まで使ったコト無かったんですけど、Twitterで多くリンクされているWEBページを解析し、話題のニュースページを集めてカテゴリごとにニュース一覧を自動生成、それをユーザーが指定した時間にiPhoneに対してプッシュ通知するというモノ。データを事前に取得するのでページがサクサク表示できる、圏外でも大丈夫という点をウリにしているみたいです。

アプリ自体は無料なので試しに自分のiPhoneにも入れてみたんですが、一覧から記事をタップするとWEBページの読み込みが開始されるので、まずはオリジナルのページを読みに行っているみたいですね。ただ、その際画面には「すぐ読む」というボタンが中央に表示され、これをタップすると記事全文が読みやすく成形されたページ(複数ページに分割されている場合、結合までしてくれる)が一瞬で開く仕組み。こちらはほぼ待ち時間無しで開くので、コレが事前にダウンロードされたページというコトなんでしょうね。スマートモードと言うらしいですが。

記事一覧からタイトルをダブルタップすれば、最初からスマートモードで開くコトも可能です。あら便利。

で、このスマートモードが問題視されているワケですね。どうも仕組みとしてはサーバ側で話題になっているニュース一覧ページを作成し、その際にスマートモード用ページも併せて作成。それを各ユーザー端末に配信している……という形みたいで。んで、少し前に岡田有花さんの呟きがきっかけとなって、火が付いたようなんですけど。

ニュースアプリリーダー「SmartNews」をめぐる議論 - Togetter

ここでちょっと気になったのは、岡田有花さんが一番懸念しているのが「普及数」であるというコト。

普及数を気にしてます。ごく一部の人しか使わないもしくはアングラなツールであればそれほど気にならないですが、元のメディアのリーチを大きく超えるほど普及しそうなこと(それだけ良いサービスである/発信元をつぶしかねない)に危機感をおぼたかんじ

via: Twitter / yukatan: @naoya_ito @fladdict ...

著作権云々というより、オリジナルの掲載媒体を潰しかねないところが問題だと。

スマートモードだと、オリジナルのページに広告が掲載されていてもそれは自動的にカットするし、分割ページも繋げて表示するのでオリジナルページのPVは伸び悩むコトになります。そもそもそうやってPV稼ぎしなきゃいいんだろが説もあるんですが、商業サイトにとってはPV数というのは広告主を探す上で重要な指標になりますしねぇ。

でもこうした広告消去やページ結合は、私も愛用しているInstapaper等の「あとで読む」系のサービスでも同じことをやっています。

ただ、InstapaperがSmartNewsと違うのは、ページを読みやすく加工して端末にダウンロードさせるのはユーザーの意思が介在しているというコト。まずユーザーが「あ、この記事読みたい」と思って、Instapaperに送るという操作をして、その後端末にダウンロードするというプロセスがある。一方SmartNewsは、自動的に記事がチョイスされ自動的に端末にダウンロードされる。ユーザーの意思が介在しないワケです。だからこそ、書き手としては「勝手に記事を持って行かれた」という思いが強くなってしまうのかもしれません。

それでも一応、SmartNewsはスマートモードでページを開いた場合でも、バックグラウンドでオリジナルページも開いています。スマートモードから記事一覧に戻ろうとすると、必ず一度はオリジナルページが表示される仕組みにはなっています。ただまー、そのとき既にユーザーは記事を読み終えているのだし、オリジナルページに改めて目を通すコトは無いでしょうけどね。あと、この動きって予め文句言われた時のコトを想定して言い訳として仕込んでるっぽくて、なんかイヤらしい感じもしますが。

一方で、RSSリーダーからアプリやブックマークレットを使ってInstapaperに記事を送り、そのキャッシュページを読むっていう流れだと、オリジナルのページをまったく開かずに完結しちゃうんですよ。そういう意味では、SmartNewsよりタチが悪いという見方もできる。でも、この件について言及されている発言をいくつか見てもどうやら「あとで読む」系のサービスは問題視されていない。そう考えると、この辺のアプリの挙動というのも本質的な問題では無いのかな、と。

んで、個人的に感じるこのSmartNewsの一番の問題点は、一番広告をクリックしてくれそうなユーザー層をこのアプリがかっさらっていってしまいそうなところじゃないかと。

いやね、WEBでニュース読む人にも大きく二通りのタイプがあるよーな気がしてて。まず一つはRSSリーダーで大量のフィードを購読したりして、自分の好きな情報を自分で見つけてくる人。もう一つは、新聞と同じように「これさえ目を通しておけば今ホットな話題を網羅できますよ」と誰かがまとめてくれた情報を読む人。

前者はGoogle ReaderのようなRSSリーダーと「あとで読む」系サービスとの相性が良く、そして後者は主要なトピックがまとめられている「Yahoo!ニュース」なんかと相性が良いワケです。でね、このうち広告をクリックするのは圧倒的に後者だと思うんですよ。前者は自分の気になった情報のみをピックアップしていくタイプなので、広告記事は時間の無駄と最初から相手にしない。でも後者は、「オススメされた記事を読む」という習性を持っているため、広告のコピーにも釣られやすい。

んでもって、数が多いのは圧倒的に後者です。日本でのRSSリーダー利用者とYahoo!ニュース閲覧者の数を考えればすぐわかります。私は前者のタイプなので広告なぞまずクリックしませんが、それでもWEBの広告モデルが成り立っているのは後者のユーザーがたくさん居るからです。

んで、SmartNewsがターゲットにしているのは明らかに後者のユーザーですわな。「あとで読む」系のサービスは大して気にならないけど、SmartNewsおめーはダメだとなる一番大きな部分ってそこじゃないかと思うんですよね。母数が大きく、広告をクリックしてくれそうなユーザーが狙われているんですから。まさに「普及数の問題」というワケです。

そしてその先にあるのはWEB広告モデルの崩壊……おお、なんたる下克上!インガオホー!