WEBで見かけたこんな記事がありまして。
「こち亀」を無断改変、ツイッターに投稿 水戸芸術館:朝日新聞デジタル
ここんとこ、Twitterでよく見かけたこち亀のコマ(141巻「あこがれライターの巻」)を利用したクソコラ祭りに水戸芸術館という施設の公式アカウントが便乗したところ、外部からツッコミが入って該当tweetを削除した、というもの。正直この記事自体は「ふーん」って感じなんですが。
が、この記事のはてなブックマークコメントで、
コラはいいはずなんだがなあ。争う余地は十分にあると思うが。
via: コラはいいはずなんだがなあ。争う余地は十分にあると思うが。コラといえばマッドアマノ - giyo381 のコメント / はてなブックマーク
というコメントを見かけてちょっとびっくりしちゃったワケです。私もMAD動画とかコラ画像で笑わせてもらうこともあるので、そういうのを一概に否定したいとは思いませんが、さすがにこれが合法的なものであると主張するのは無理がある、というか無茶だろうと思うワケです。
試しに、コラージュの著作権に関する判例をググってみたところ、以下の事例がヒットしました。
≪コラージュと著作権侵害、テナントの著作権侵害と賃貸人の責任≫ | 知財弁護士.COM 内田・鮫島法律事務所
これはコラージュに使われた元写真の翻案権 を巡って争われた事例のようですが、「翻案権の侵害はしていない」という判決が出たようです。ひょっとしたら、この判例を見て「コラはいいはず」という認識が生まれたのかもしれません。……が、この判旨を見てみると、コラージュ作品が無条件で著作権的にセーフと見なされていないコトがわかります。
全体として一個の創作的な表現となっていると認められる一方,これに使用された原告写真又はそのコピーのそれぞれは本件看板の全体からすればごく一部であるにとどまり,本件看板を構成する素材の一つとなっているということができる。そうすると,本件看板に接する者が,原告写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるといえないと解すべきである。
要は、コラ作品そのものに創作性があり、一方で元ネタ画像はごく一部のみで、元ネタ画像の作品的特徴がわからないレベルになっているからセーフ、という話。どう見ても「コラ=セーフ」って話ではありません。
あのこち亀のクソコラ画像群は、いずれもその大部分をこち亀のページをそのまま使っており、上記の要件には該当しないでしょう。
もちろん、そうした権利侵害をしている疑いが濃い画像であっても、権利者である秋本治なり集英社なりが訴えたりしない限りは「違法」とはならないワケです。こういう「黙認」のグレーゾーンが、好きな作品で盛り上がりたいファンと権利者のクッションとして機能していることを考えると、私自身は「権利者が黙認しているなら良いんじゃね」とは思いますし、いちいち「それ著作権侵害してるで」ってツッコミを入れようとは思いません(それがファン活動の一環であり、非営利であれば)。私自身、厳密に言えばアウトっぽい画像は上げてるしね!
……が、実際に「それ著作権侵害やで」って外部からのツッコミがあったときに、「黙認されてるんだからいいだろ」とか「空気読め」みたいなコトを言うのもいかがなものか、と思うワケです。だって「訴えられたらアウト」っていうボーダーライン上にあるのは間違いないんだからさ。少なくとも、その自覚と覚悟は持っておくべきだろう、と。
今回ニュース記事になった水戸芸術館はコンサートホールや美術館で構成された文化施設のようで、そうした施設の、本来「作品の権利」に敏感であるはずのスタッフがクソコラ上げてたら、そりゃツッコミ入れられても仕方ないと思いますよ(サイトに画像では無い謝罪記事がアップされてるのは好感度アップ)。
最近Twitterで妙にこち亀のクソコラ画像が増えたのは、どうやらフキダシや画像の一部を白抜きにした「素材」をアップした人物が居るようで、そこから一気に広まったっぽいですね。
よく見ても分からない! こち亀「全部同じじゃないですかクソコラグランプリ」が全部同じじゃないですか - ねとらぼ
ねとらぼはめっちゃ好意的な記事ね。
こうなってくると何がマズいって、「みんなやってることだから」とカジュアルに投稿するユーザーがどんどん増えていくんですよね。著作権的にリスクのある行為だという認識は薄くなるし、そうなるとますます外部からのツッコミに対しては「うるせえ空気読め」みたいなコト言ったり、「コラは合法」みたな謎理論を展開する人も増えていくワケです。そうした波及効果を考えると、この「素材」をアップしている人物に対しては警告出してもいいんじゃないか、って気はしてしまう。
今回のケース、集英社は静観の構えのようですが、あくまで「今回のケースは」という点は意識しておくべきかと。もしこれが行き過ぎて、こち亀の作品イメージを著しく損なうようなものが出てきたりしたら、集英社も黙ってはいないでしょう。こういうケースに対して、相変わらず宣伝になるんだからいいだろ的なコトを言う人も居るんですが、それはあくまでそのコンテンツの利用形態が集英社のコントロール下にある場合の話でしょう。権利者が制御できない宣伝ってなんなの。
まーこの状態で日本にもフェアユースを導入、なんて言ったら、さらにカオスな状況になりそう。