※念のため:艦これアニメ 第3話までのネタバレを含みます。
アニメ版艦これの話なんですが、私もラバウル基地に着任してかれこれ1年半近くが経とうとしている提督の端くれの隅っこの出涸らしとして、アニメはチェックしております。
ただ、個人的にはそこまでアニメに多大な期待はしていなかったんですね。なんせ大ヒットしたゲームのアニメ化なので、良くも悪くも最大公約数的な内容にならざるを得ないだろうなぁ、と思っていたので。もう少し具体的に言うとアレですよ、観た人の7割くらいが「まぁ悪くないね」と思うくらいの出来ですよ。
んで、そのためにアニメ版艦これが押さえるべきポイントというと
- 艦娘たちのコミュニケーションを多めに描く
⇒ ゲームでは艦娘同士のコミュニケーションは表現できないので、アニメの最大のウリはここ。 - 可能な限り多くの艦娘を登場させる
⇒ 戦艦から駆逐艦まで、どの艦娘にも熱心なファンが居るゲームゆえ、可能な限りいろんな艦娘にスポットを当てる - 適度な史実ネタと二次創作ネタの反映
⇒ マニアックな史実ネタがウケた&そこから派生した二次創作ネタが大量にあるゲームなので、それらのネタを入れ込む
といった辺りかなぁ、と。
史実ネタはあんまりこだわっちゃうとマニアックになりすぎちゃいそう&雰囲気暗くなっちゃいそうですし、二次創作ネタも人によって好き嫌いがあったりするので、この辺は上手いことバランス取る必要がありそうかな、と。
そして実際にアニメを観てみると……、どうやら最大公約数的な路線のようですが、なんかスベってる感が。
まず各艦娘の原作ゲーム中のセリフを半ば強引に詰め込んでいるもんだから、なんとなく会話がぎこちない。また、男に飢えた狼と化した足柄や、好意を拗らせて北上の番犬と化した大井など、その艦娘を嫁にしている提督の反感を買いそうな二次創作ネタのピックアップをしている。一方で、なぜか北上は駆逐艦をウザがらない。
1~2話を見る限り、そこはかとなく原作ゲームや二次創作ネタの拾い方に失敗しているような印象を受けました。ていうか、ゲーム内のセリフはだいたい毎日のように聞いているから、無理に入れてくれなくていいのよ?ただまー、ここまではやっぱり無難な「ファンアニメ」路線かな、という印象でした。
んが、3話「W島攻略作戦!」において、まさかの如月轟沈。史実におけるウェーク島の戦いでも如月が沈んでいるので、そこに引っかけているんでしょうけども……。
しかも吹雪のミスをかばって被弾したワケでもなく、強力な敵に対し身を挺した攻撃を仕掛けてやられたワケでもなく、勝敗が決した後にたまたま生き残っていた敵艦載機に背後から爆撃されて沈むという、ドラマ的には「え?なんで死ななあかんの?」という状態。
事件解決後、いきなりシャブ中に背中を撃たれて殉職した「太陽にほえろ!」のゴリさんを彷彿とさせるモノがありますが、しかしゴリさんは10年間出演を続けてからの殉職ですからね、1~2話で顔見せ程度にしか出ていなかった如月とは重みが違います。
じゃあなんで如月を沈めたのかといえば、端的に言えば原作ゲームにある「轟沈」というシステムを拾い上げた結果、というコトなんでしょう。仮に原作ゲームに轟沈というシステムが無ければ(艦娘をロストするコトが有り得ないならば)、アニメでもこの描写は無かったと思いますし。つまり、あれは如月ありきのシーンではなくて、艦娘が「轟沈」する様を見せることが主眼であって、そこで沈む艦娘は別に如月じゃない誰かでも良かったというコト。
ただ、原作ゲームに於いて艦娘が轟沈する可能性があるのは「大破進軍」した場合のみ。あまり被弾していない艦娘がワンパンで沈むコトは、システム上「絶対に」無いワケです。そういう意味では、このアニメの描写は原作ゲームよりハード、というかむしろ史実に近いような描写とも言えそう(史実の如月はF4F戦闘機の爆弾1発によって魚雷が誘爆し、爆沈したとのこと ⇒ 如月 (睦月型駆逐艦) - Wikipedia)。
このあたり、なんというかゲームネタと史実ネタを最も残酷な形で拾っているように見えます。ていうか、「当たり所が悪ければ小破未満でも一発轟沈が有り得る艦これ」なんて地獄以外の何者でもありません。実際の戦争ではそれが有り得るのだ、といえばそうなんですが、私が観ているのは艦これのアニメなのであって、『フルメタルジャケット』とかではありません。ホント戦争は地獄だぜフゥハハーハァー。
もちろん、その辺りがすべて原作ゲーム準拠になってないのは気に入らない……とまで言うつもりはありませんが、セリフとかその辺は散々原作ゲームを意識しておきながら、この如月轟沈のくだりでは如月を当て馬のように扱ったり、原作ゲームの最も重要な原則を無視しているコトに違和感を持っちゃうんですよね。
しかも、エンディングパートの利根と神通のやりとりを見るに、轟沈した艦娘は過去にもそれなりに居る様子。そういう設定を持ち出すというコトは、アニメ版艦これは今後ハードなストーリーを展開していく、という宣言と受け取るコトもできます。割とあっさり艦娘が轟沈する世界、と言われてしまうと、今後ほんわかした日常パートを描かれても「いつ死んでもおかしくない艦娘たちが、わずかな自由を謳歌している」みたいな悲壮感溢れるシーンに見えちゃいますし。間宮さんのあんみつが過剰に大盛りなのも、もしかしたらこれが最後の食事になるかもしれないからという心遣いからだったりしてうわああああああああ。
敢えてハードな世界観で戦いの悲壮感と理不尽さを描くというなら、それはそれでひとつの方向性だとは思います。ただ、次回予告で金剛のひどく明るい声が響き渡っていたあたり、シリアスにもコミカルにもなりきれない、酷く中途半端な作品になってしまう気もしちゃうんだよなぁ。金剛が空気読めない残念なコみたいな扱いにならなきゃ良いんですが……。
少なくとも、この如月の轟沈によって艦娘たちのキャッキャウフフアニメ路線は消えてしまったので、あとはシリアスで骨太なストーリーを期待するしかありません。ていうか、もし次の話で何事も無かったかのようにキャッキャウフフしてたりしたら、それこそ如月は沈み損です。
しかし、シリアス路線でいくならば、アニメ独自の解釈でも良いので艦これ世界に対する説明がもう少し必要でしょう。艦娘が兵器そのものだとしても、感情を持っている以上は「戦う理由」が必要ですし。誰のために、なんのために戦うのか。ゲームでは各プレイヤーが脳内補完している部分を、どこまで描ききれるか。コメディ路線ならその辺は適当に誤魔化せても、シリアス路線ではその辺もちゃんと描いていかないと、物語に説得力が出ないと思うんですよね。
ただそうなると、「提督」が直接描かれない構造は不自由だよなぁ、とも思ったり。正直、このままだとすごく残念なアニメになってしまう気が……。ビビオペくらい突き抜けたおバカアニメだったら何の問題も無いのに!