大須は萌えているか?

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今のAIを見ていると、『BEATLESS』みたいな未来は想像できない

最近、テレビアニメきっかけで『BEATLESS』の原作小説を読んだりしてます(まだちょろっとしか読めてないけど)。

BEATLESS 上 (角川文庫)
リエーター情報なし
KADOKAWA

アニメではトヨタプリウスやミライそっくりのクルマが登場するもんだから、てっきり今とそんなに年代の離れていない時代の話なのかと思いきや、22世紀の話らしいですね。hIEと呼ばれる人型AIロボットが普及した時代、主人公の少年とヒロインのhIEの関係を通してヒトとモノの境界線はどこにあるのか?を問うようなSFとしてはわりかし古典的なテーマのお話。

個人的には、「喋るコンピュータ」といえば『ナイトライダー』のK.I.T.Tを思い出す世代であり、子供の頃はそういう「コンピュータとの会話」が出来る時代の到来を心待ちにしていたりもしたワケですが、今改めてこういうストーリーを読むと、「人と自然な会話ができるAI」ってホントに登場するんだろうか……?と疑問に思ってしまったりするのです。仮に100年後の未来であっても。

いやもちろん、私は私立文系のコンピュータの中身なんてロクに知らない人間なので、単なる素人の戯れ言ではあるんですが。

コンピュータ単体の性能向上、並列・分散処理の発達、クラウド環境の普及などが相まってディープラーニングと呼ばれるAIの画期的な学習技術が編み出され、AIが世界を認識する力が日進月歩の勢いで進化している、って話はそれとなく耳にしますし、AppleのSiriやGoogle HomeAmazonのAlexaといった「AI」が世の中に公開されてたりもしますが、今のとこそれらのAIと普通に会話できるか、といえば出来ないじゃないですか。

もちろん、こちらの呼びかけに対して応答は返してくれるんですけど、AIが認識できる呼びかけの種類はそんなべらぼうに多いものではなく、また会話のキャッチボールが出来るようなものでも無い。これは会話というよりは、人が音声によってAIにコマンドを伝え、それに対する応答をAIが返してるだけ、とも言えるワケで。

ディープラーニングの更なる発展によって、AIが認識できる音声のパターンは飛躍的に増えていくかもしれませんが、結局AIは認識できるキーワードの組み合わせから、最も妥当と思われる反応を類推して返しているワケですよね?人が話す言葉の文脈を理解しているワケではなくて。

そうして完成したモデルを検証していると、例えば「モーツァルトの曲を答えなさい」という質問文に対し「モーツァルト」と解答するように、人名か曲名(作品名)かなど解答の“型”を見誤るエラーが起きた。このことから、このAIは質問の文脈を理解できていないことが分かる。

そこで山田さんらは、もう1つのモデルとして、解答の“型”を予測するモデルを開発した。「モーツァルト」の場合は「作曲家」というように、あらかじめWikipediaの各エントリに対して型をタグ付けする方法を用いた。「型が一致している/していない」ことから解答の候補を絞り、質問文の早い段階で正解にたどり着けるようになったという。

via: 強すぎて「会場がシーンと……」 クイズ王を圧倒した“早押しAI”の衝撃 (2/2) - ITmedia NEWS

「クイズに答える」というだけならば最も回答に近いと思われる「単語」を返せばいいですが、人間との会話となるとそうもいかないじゃないですか。オマケに、人の会話の場合、同じ単語や言い回しでも文脈によって意味が違ってしまう場合もあるワケで、それをちゃんとAIが聞き分けられるようになるものなのか。

「結構です」と言われてもそれが「OK」の意味の時もあれば「NO」の意味の時もあるし、おっさんが部下に向かって言う「馬鹿!」と女の子が彼氏に向かって言う「ばか♥」は全然意味が違うし、今や「やべえ」なんていろんな意味がありすぎてカオスなレベル。

それでも人間同士なら、前後の文脈やお互いの関係性、相手の表情や仕草などから意味を判別できるワケなんですが、果たしてAIにそれが可能なのか。少なくとも、今のAI技術の延長線上では難しいんじゃないか、と思えてしまうのでした。Google翻訳だって未だそんなに精度が向上してる感じしないじゃないですか。「ごくごく短い会話ならそれっぽく振る舞える」レベルなら実現可能なのかもしれませんが。

下手にAIと呼ばれるモノが世間に進出してきた時代だからこそ、なんとなくその限界を想像してしまって「自然に会話できるAI」という存在に疑問を感じやすくなっている気はします。まだコンピュータ自体が身近なモノではなかった時代のほうがむしろ信じやすかったなぁ。

2045年技術的特異点 が発生して、以降AI自身がさらにスゴイAIを生み出すようになる……というのも、正直かなり眉唾な感じがしちゃってるんですけどいかがなもんでしょうか。もちろん、AI自体は今後大きく発展して、人間社会に必要不可欠なモノになるのは間違いないと思うんですけどね。ただ、自然に会話できるようなAIは出てこないんじゃないの?って思えてしまうだけで。

もちろん、今から100年前にはコンピュータの「コ」の字も無かったコトを考えると、これから100年経つ間にスゲエ技術が編み出されて、ホントに技術的特異点を迎える世界が来ちゃうのかもしれませんけど。そういう時代が来るのであれば、自分が生きてる間にその片鱗だけでも見たいもんですけどね?