ヒマだったので以前録画した『天空の城ラピュタ』をぼへーっと眺めていたところ、あの有名なくだりのところでふと「なんでムスカは3分間待ってやったんだろうなぁ……」という疑問が湧いてしまいまして。試しに「ムスカ 3分間待ってやる理由」でググってみたところ、「なぜムスカ大佐は三分間待ったのか」という2chのログが引っ掛かりました。
1 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2006/12/12(火) 22:06:57 発信元:219.31.34.125
まずムスカの射撃能力は一流だ。
相当な距離からシータの結んだ髪のみを狙うことが出来る
また、「その大砲で私と勝負するかね?」と言えるところからも自信があることは間違いない。
(しかし実際は、パズーが持っていた大砲にはもう弾は入っていなかった。)つまり、力ではムスカの方が上だったわけだ。いざというときにも負けはない
じゃあなぜパズーの提案「シータと二人っきりで話がしたい」という要求を飲んだのだろうムスカほどの知能ならシータを人質にすればパズーがすぐ石の在り処を明かすことは分かるはず
またその射撃能力を持ってすれば人質にするくらい訳はないはずどう考えてもおかしい
via: なぜムスカ大佐は三分間待ったのか
これに対して、以下のような回答が。
5 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2006/12/13(水) 10:58:46 発信元:219.127.85.34
>>1 マジレスするとピストルの弾が尽きたから。
パズーが大砲撃つ前に弾を装填し直さなければ戦えないから。
また弾が無いのを相手に悟られてはマズいので、わざと余裕かまして時間稼ぎした
あのシーン見て宮崎駿はつくづく細部まで気を使ってると感心させられたものだvia: なぜムスカ大佐は三分間待ったのか
なるほど。確かに、映像を見てみると3分間待ってやっている間にムスカが弾を装填し直しているシーンが映っています。
ただね、あのシーンまでにムスカが撃った弾の数を数えると、5発のよーな気もするんですよね(壁の隙間からパズーを撃った1発、パズーが壁をブチ抜いて追いかけるシーンで銃声が1発、玉座の間に逃げ込んだシータを転ばせた1発、シータの左右のおさげを打ち抜いた2発)。ムスカの腕ならば、1発残っていればパズーを無力化するコトは容易い気がします。
仮にムスカの銃の残弾がゼロだったとしても、パズーを無力化するコトは十分可能であるように思えます。ムスカとて制服組ではないにしろ特務機関所属の軍人なワケで、体術の心得はあると思われます(要塞でも暴れるパズーを片腕で押さえていた)し、パズーの武器を一目見てそれが近接戦闘に適さない武器であること、1発撃ったら再装填に時間が掛かる武器であるコトは見抜いていたでしょうし。
なので、「リロードの時間を稼ぐために3分間待ってやった」というのはやや違和感が残るのです。
じゃあどういう理由で3分間待ってやったのか、というのをもう少し考えてみると、やはり特務機関所属の軍人なりの判断なのかなぁ、という気がします。
3分間待ってやった理由
素人からすると、戦闘行為というのは相手をぶちのめす、相手を屈服させるモノと捉えがちですが、プロの軍人というのは戦闘行為そのものはあくまで手段であるコトをよく理解している。また、ムスカは特務機関所属というコトを考えると、恐らく交渉や駆け引きのエキスパートであると考えられます。
んで、この時点でムスカの最大の目的は、「飛行石を奪い返す」コト。その目的達成のためには、有無を言わさずにパズーを無力化するよりも、3分間待ってやった方が得策であると判断したのではないでしょうか。
>>1は「シータを人質にすればパズーがすぐ石の在り処を明かす」と断じていますが、果てしてそうでしょうか?パズーも状況判断力には優れた子供ですし、ムスカが冷酷な性格の持ち主で、石を取り戻した途端に攻撃してくるコトは理解しているでしょう。ムスカは人を見る目にも長けているハズなので、2人を追跡している間にそうしたパズーの頭の回転の良さも見抜いていた。
そうしたパズーの性格を考慮すると、シータを人質にしても「先にシータを離せ」「いや先に石の在処を言え」の平行線を辿り、交渉が長引くコトが予想されます。
かといって、パズーを力でねじ伏せたところで意固地になって余計口を割らなくなる可能性が考えられるワケで。そこでムスカは、あえてパズーの要求をのむ形で譲歩してみせた方が良いと判断した。
こちらが譲歩するコトで相手の譲歩を引き出す「返報性の原理」というのがありますが、ただまぁムスカは譲歩するコトよってパズーが大人しく飛行石の在処を言うとは思っていないでしょう。
なぜなら、ここでのパズーのミッションは「飛行石をムスカに渡さずにシータを取り返す」というものであるハズだからです。ムスカが再びラピュタを自在にコントロールできるようになってしまっては、2人がラピュタから逃げ出すコトは不可能。だから、パズーにしてみればいくらシータが人質になっていても、飛行石と交換するワケにはいかない。
一方で、ムスカもパズーが大人しく飛行石を返すつもりが無いコトを理解している。シータを人質にパズーを脅しても、パズーを直接ぶちのめしても埒があかないだろうと。
そこで、パズーとシータで話をさせた方が良いと考えた。ここで話す内容といえば、大抵は逃げる算段でしょう。あの大砲でムスカに対抗するのは馬鹿げているし、そうなるとあと考えられる選択肢は逃げるコトくらいです。
そして、恐らく逃げる途中で飛行石を回収する(ラピュタ内に飛行石を残し、万一ムスカに発見されるとやっかいなので)ので、ムスカは逃げる2人をつけていき、飛行石の所在を確認した段階でパズーを始末すれば良いワケです。走って逃げるシータを徒歩で追い詰めるコトが可能なムスカなら、巻かれる心配もありません。
ムスカのミス
しかし結果的にはパズーが実は飛行石を隠し持っており、シータと共にバルスってしまったコトで「目がー目がー」となってしまったワケですが、ムスカはおそらくパズーが飛行石を隠し持っているという可能性を考慮していなかったんじゃないでしょうか。
パズーの立場で考えてみると、飛行石をムスカに奪い返されてしまったらその時点でゲームオーバーなワケです。なので、玉座の間に飛行石を持っていくのは極めてリスクが高い。「シータと2人で話がしたい」という要求を突っぱねられたらアウトなワケですから。ムスカは、パズーにそこまでのリスクを冒す度胸は無いと考えた。
それに、事前にあそこまでラピュタのコトを詳細を調べ上げていたムスカなら、当然「滅びの言葉」の存在も知っていたと考えるべきでしょう。「ここはお墓よ、あなたと私の」なんて言い放っちゃうシータなら、飛行石を手にしたあと「滅びの言葉」を言っちゃう可能性も当然考えられます。
もしパズーが飛行石を隠し持っている可能性を考慮するならば、3分間待ってやるのはとても危険なワケです。シータの手に飛行石が渡ってしまっては、仮に「滅びの言葉」を使わないとしても、要塞で発動した「我を助けよ」みたいな呪文を使われただけでも戦況が覆る可能性大。
ムスカはその可能性は無いと判断したから、3分間待ってやったんだろうなと。ムスカの想定では、大砲を手にしたまま2人で逃げるハズだった。パズーが石を隠し持っていて、シータが呪文を使う可能性を少しでもムスカが考慮していたならば、パズーが大砲を投げ捨てたときにあそこまで意外そうな顔をしないハズです。
そういう意味では、結果論的に言えばムスカは考えすぎてしまったというコトになります。シンプルにパズーをぶちのめして身体検査してれば、飛行石取り返せたハズなんですから。こういうのを「策士策におぼれる」というのでしょう、きっと。
3分間の理由
最後に、ムスカが待ってやったのは良いとして、なぜその時間が3分間なのか?という話。
これは正直その根拠がようわからんのですが、3分間待つといえばカップラーメンだろというコトで(?)、日清食品のWEBサイトを見てみるとこんな記述がありました。
心理的にも人間がお湯をかけて食べられるまでの待てる時間は 「3分前後」だと言われており、「3分間」は短くもなく、長くもなくちょうどよい時間として定着しているようです。
心理的に短くもなく長くもないちょうど良い時間。そうなのか。
つまり「1分間待ってやる!」だとパズーが短いと言ってゴネる危険性があるし、「5分間待ってやる!」だとムスカの方が待ちくたびれちゃいそうだから「3分間待ってやる!」ってコトですかね。
そう考えると、その場での判断を求める際に「即断即決で」と言うのでは無く、「3分間待ってやる!」のは案外有効なのかも。上司に緊急の判断を仰ぐ際、「時間がありませんので即決でお願いします」ではなく、「3分間待ってやる!」と言った方が心証が良いかもしれません。なお、試す際は自己責任でお願い致します。