大須は萌えているか?

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片山被告が自供した今もあんまり叩かれないのって

ヘタすりゃこのまま泥沼の展開になだれこんで行くのか(もう十分過ぎるほど泥沼だったという説もありますが)と思ったPC遠隔操作事件ですが、真犯人を名乗るメールが再びばら撒かれたかと思ったら、警察がメール送信したスマホ掘り起こしちゃって片山被告が自供という、急転直下すぎる展開となっちゃいましたね。

以前書いたんですが個人的な心証としては片山被告って限りなくクロに見えてたんで、「やっぱりお前か!」って感じではあるんですが。

片山被告はえん罪であると主張していた人たちにしてみればシンジ君に助け出された綾波レイばりにどんな顔すれば良いのかわからない案件ではないかと思うんですが、とりあえず「それでも今回の事件における警察・検察のやり方が許されて良いハズが無い」という拳の振り下ろし場所があるので、きっと今後も警察・検察はネット世論にタコ殴りにされるんだろうし、結果として「警察・検察を嵌めてやりたかった、醜態を晒させたかった」という犯行動機も満たされたという意味では片山被告も満足だろう……と思ったら、

主任弁護人の佐藤博史弁護士によると、動機について片山被告は「最初は恨みが理由ではなかった」と述べたという。「どこかで引き返せなくなった」と話しているといい、真相は明らかになっていない。

via: 時事ドットコム:動機解明が焦点=訴因変更の可能性も-PC遠隔操作公判・東京地裁

というコトで犯行動機すらウソだったようですね。しかも佐藤弁護士の会見によると

警察への恨みなどを口にすることはなかった。解離性人格障害という前の事件時の診断だが、刑務所でコミュニケーションをとる必要があり、コミュニケーションがとれるようになったと。前の事件について警察・検察を恨むようないと言っていた。

 収監の際、検事は優しい態度で接していた。法定では検察が間違っていると言っていたことについてすいませんでしたと謝っていた。そういうことはいいんだよと検事は言っていたが、そういう意味では素直なところがある。言い逃れをするようなそぶりは全くなく、聞かれたことは答えていた。

via: 詳報・遠隔操作事件・佐藤弁護士会見その2:「サイコパスは自分」 有罪なら送信タイマーでメールを送るつもりだった 河川敷では見られていないと思っていた (1/3) - ITmedia ニュース

と自供後一気に大人しくなってしまったようで。私もてっきり警察に恨みがあるという犯行動機は本当なのかなと思っていたので、まんまと釣られました。会見記事にある

ラストメッセージに警察・検察の恨みが書いてあるが、最初はそういうものではなく、横浜CSRF事件はやってみたら簡単にできてしまったと。「iesys」を作って4人が誤認逮捕され、不謹慎だが「やった」という気持ちになったと言っていた。

via: 詳報・遠隔操作事件・佐藤弁護士会見その2:「サイコパスは自分」 有罪なら送信タイマーでメールを送るつもりだった 河川敷では見られていないと思っていた (1/3) - ITmedia ニュース

なんてくだりを見ると、単なる愉快犯のようにも見えます。ていうか、サイコパスを自称する人って初めて見た。もう頭にサロンパスでも貼って寝ろとか思わなくもないですが、そもそもサイコパスって母親の言葉に涙を流したりするんでしょうか。

母親に合わせる顔がないと言っていたが、意を決して電話をさせた。そうしたら、母親は私には分かっていたというようなことを、うそをつき通すことはできなかったんですねというようなことを言っていた。ちゃんと出てくるの待ってるというようなことを言い、片山さんも悪かった、悪かったと言っていた。お母さんと電話していた時、受け入れると言われていた時に涙ぐんでいたような記憶ある。

via: 詳報・遠隔操作事件・佐藤弁護士会見その2:「サイコパスは自分」 有罪なら送信タイマーでメールを送るつもりだった 河川敷では見られていないと思っていた (1/3) - ITmedia ニュース

ただまー結果として誤認逮捕された人たちはもちろん、警察も弁護士もニュースを見ていた大量のネット住民(私含む)たちをも見事に「釣った」ワケで、そこはホントに大したモンです。現役のプログラマーの人でさえ、「片山被告にiesysが作れるとは思えない」なんて言ってたりしましたし。

「警察に恨みがある」というストーリーで犯行を展開していったのは、そうした方がネット住民の食いつきが良いという判断もあったんじゃないかと思うんですよね。「力を持っている大きな組織の不祥事」って好きな人多そうですし。あと、片山被告自身が前科持ちで、警察のコトをそれなりに分かっていたからストーリーを展開しやすいってのもあったんじゃないかと。結果として、リテラシー高めのネット住民すらホイホイ釣れた。

もちろん、誤認逮捕から始まる警察・検察のマズいところが実際アレコレあった、というのも大いにあるんですけど。私も警察・検察の肩を持つつもりは無いんですが、たとえウソの犯行動機であっても片山被告のシナリオに乗って警察叩きに参加するのもシャクなので、その辺は割愛したいと思います。

それに誤認逮捕はもちろんダメなんですが、その誤認逮捕を誘発するよう仕向けたやり口はもっとダメでしょう。愉快犯的な動機で、まったく自分と関係のない赤の他人を踏み台にするってのはちょっとね。『「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!』と空条承太郎も言ってますし。なんの義も無い、ただの悪。

でも、一方で片山被告がこういうコトやらかした心理も少しだけ分かるような気がしちゃうんですよね。ホントにきっかけは、腕試しみたいなモンだったんじゃないかと。自分の技術でどこまで人を騙せるか。ある程度昔からネットやってる人だと、自己責任論っていうか、「ウイルス踏んだり騙されたりするのはリテラシーが足りないソイツが悪い」みたいな価値観ってあるじゃないですか。だから他人を踏み台にする際にも、「引っかかるコイツが悪い」と良心の呵責を感じにくいってのはあるような。

あとはもう「世間の耳目を集めたい」っていう感覚ですよね。ブログの記事、Twitterのつぶやき、掲示板への書き込み、なんでもいいんですけど、自分の言動に注目が集まるというのは良い気分になりますわな。片山被告はかつての「のまネコ」騒動の際に殺害予告をした前歴があり、「世間に注目される」というのはどんな気分かってのは経験済み。その時をも上回る注目を集めてやりたい、なんて思っても不思議じゃ無い。

適当なハンドルネーム使ってさ、ちょっと自分と解離した人格で適当なウソ交えながら周りが注目するような書き込みしてやろうって思うのは、そんなに珍しい感情じゃないと思うんですよね。もし騙されるヤツが居ても、そんなの真に受ける方が悪い。そういう、ネット住民にありがちな感情の延長線上にこの犯罪はあるような気がするのです。片山被告が自供した今も、彼を思いきり批難するような書き込みがあんまり見られないは、ある種の「共感」があるからじゃないのかな、と。もちろん、片山被告のレベルはかなり極端ですけどね。

まー平たくいえば、このPC遠隔操作事件ていうのはネットでいろいろ拗らせすぎたおっさんの末路、という話だったのかなぁと。