新世代だが原点回帰～TNGパトレイバー

現在第2章まで公開されているTHE NEXT GENERATION パトレイバー（以下、TNG パトレイバー）ですが、これ視聴するのに映画館まで足を運ぶかBD買うかそれともBSのスターチャンネル加入するかで悩んでいたらずるずる時間が経ってしまい、結局スターチャンネルに加入してしまいました。

パトレイバーのために加入するというのもやや勿体ないような気がしないでもありませんが、毎回映画館まで足を運ぶのめんどくさいし（愛知だと上映館が2つだけだし）、スターチャンネルの料金のがBD買うより安いし、というコトで。

んで、第1章と2章をまとめて観たんですけども、個人的には割と良い意味で裏切られました。以前予想していたのは、押井守の小説『番狂わせ』で書いていたテーマを下敷きに、映像作品としてアクションシーンなど画面映えするような場面も盛り込む……程度のものだったんですよ。つまりは、小説ほどではないにせよ、やや「固め」の作品。押井守の実写作品だし。

が、フタを開けてみるとかなーりエンタメ路線に振ってるんですねコレ。ていうか、現在公開されている範囲ではアニメ版パトレイバーの原点とも言うべき初期OVAシリーズ（アーリーデイズ）のテイストを色濃く出しており、表題で「THE NEXT GENERATION」を謳いながらも、その実原点回帰と言うべき内容になっている感じ。

私生活がほとんど存在しない勤務シフト、上海亭に依存せざるを得ない二課の食料事情、隊員・整備班総出で行われる草刈りといった生活感溢れる描写はもちろんのこと、「常日頃は高い弾を浪費せず実射訓練を可能な限り避け、一丁事あらば一撃必中！日本の兵隊とお巡りさんはそういうコトになっとんの」という後藤田隊長のセリフはアーリーデイズ第1話の後藤隊長のセリフそのまんまだし、イントロダクションで流れるBGMもアーリーデイズのそれを踏襲したもの。

エピソード1で泉野明（いずみのあきら）が酔っ払いレイバーにリボルバーカノンぶっ放した直後に場面転換するシーンは、アーリーデイズ第1話で泉野明（いずみのあ）が逃走レイバーに「ロケットパンチ」を喰らわせるシーンを彷彿とさせますし、現在予告編が公開されているエピソード5『大怪獣現わる前編』なんてアーリーデイズ第3話『4億5千万年の罠』を連想せずにはいられない。

エピソード2『98式再起動せよ』に至ってはアーリーデイズを上回るコメディ路線ぶりで、オチの付け方はほとんどドリフのコント。ガンダムのパロディまで入ってるし。いやまさかここまで振り切ってくるとは意外でした。ただ、アーリーデイズ路線の延長線上にあると考えればアリですね、これは。あと、コメディ色を強くしたコトで旧作を知らない人でも楽しめる内容になっており、間口を広くする効果はあるのかも。グリフォン編とかが好きなファンにしてみると悶絶級のシナリオかもしれませんが。

ただ、アーリーデイズも後半になると一転してシリアス路線の『二課の一番長い日』なんてエピソードも用意されてたりするので、TNG パトレイバーも後半はこのコメディ路線とは異なるストーリーになるのかも。シリーズ前半はアニメ版パトレイバーを意識した作りでファンを掴んで、後半は「THE NEXT GENERATION」の名にふさわしい、新しいパトレイバーが……という展開を期待したいところ。

にしても、アニメやマンガの実写化って大抵は微妙な感じになっちゃうワケですが、TNG パトレイバーについては思いの外違和感がありません。これは主要キャラクターをほとんど入れ替えたというのと、その一方でシバシゲオだけは実写版にも登場させたというのが大きいような気がします。

アニメ版のキャラがそのまま実写でも登場すると、どうしてもアニメと比較してしまい多かれ少なかれ違和感を持ってしまうワケですが、シバシゲオは元々声を演じる千葉繁本人をモチーフにしたキャラクターであり、それを実写で千葉繁自身が演じれば違和感なんて出るハズが無い。このシバシゲオの存在がアニメ版と実写版をうまく繋いでいるなぁと。やはり千葉繁は偉大だった。

押井守のパトレイバーが好きな人は絶対楽しめるし、エンタメ要素が強いのでパトレイバーまったく知らない人にも面白い作品になっているかと思います。ゆうきまさみ版パトレイバーが好きな人は拒否反応出るかも。ただ、これ観る方法が期間限定の劇場上映・BD購入・スターチャンネルに限定されているのが些か残念ではあります。ニコニコなんかでも有料配信できれば、もっと観る人増えるんじゃないかと思うんですけど。