昨年のF1日本GP決勝においてコース外の重機に激突し、以後昏睡状態が続いていたジュール・ビアンキが亡くなった、とのこと。
ビアンキが永眠、享年25 | Manor Marussia | F1ニュース | ESPN F1
事故が起きた日本GPから9ヶ月ちょっと。レース中の事故が原因でF1ドライバーが亡くなるのは、94年のアイルトン・セナ以来となります。
セナの事故以来F1の安全性は飛躍的に高まり、2007年カナダGPのロバート・クビサのような大クラッシュでもドライバーの生命が脅かされるようなコトはありませんでした。たくさんの安全対策の積み重ねによって、セナ以来20年間という長い間、ドライバーの死亡事故は起きていなかった。
ビアンキの事故は、それでもやはりモータースポーツに絶対の安全は無いというコトを思い起こさせるものでした。とても不幸な偶然が重なった事故でしたが、やはりそういうコトは起きうるのだと。
昏睡状態ではあるものの、辛うじて一命を取り留めたビアンキに世界中からエールが送られ、私もどうか回復して欲しいと願っていました。が、数ヶ月が経過しても容態に変化は無く、つい先日もビアンキの父親がかなり悲観的な状況をコメントしていましたね。
「時間がたち、事故の2、3カ月後に比べると希望を持ちづらくなっている。当時はもっと状況が改善すると期待することができた」
「いずれは現実的に物事を考え、事態の重大さを理解しなければならない時が来る」
ビアンキの一家は祖父などもプロレーサーとして活躍しており、ビアンキ自身も5歳の頃からカートレースを始めていたという、生粋のレーサー。仮に意識を取り戻しても、二度とレースができない状況となる可能性が高く、それがビアンキにとって幸福なのだろうか、という思いも家族にはあったようです。
「彼は以前こう言っていた。自分がミハエル・シューマッハーのような事故に遭い、障害が残ったとして、その障害が運転する能力に限定されたとしても、生きていくのは相当辛くなるだろうと。車を走らせることが彼の人生そのものだったからね」
そうした葛藤を抱える中で、世界中から寄せられるビアンキへのエールは、ひょっとすると彼の家族にとっては大きな重圧となっていたんじゃないだろうか……という気もしちゃってたんですよね。そういう意味では、ビアンキに家族にとってはもちろん彼が亡くなった悲しみは消えないでしょうが、とにかく区切りを付けるコトはできたのではないでしょうか。
ジュール・ビアンキという才能あるF1ドライバーのご冥福をお祈りすると共に、彼の家族の皆さんが思いを新たにできることを願います。
そして彼の事故以降、F1ではバーチャルセーフティーカーといった新たな安全への取り組みが行われていますが、今後さらに、より安全、かつ迫力のあるF1の姿が追求され続けるコトを望みます。レースを愛したビアンキの命を無駄にしないためにも。