大須は萌えているか?

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『小林さんちのメイドラゴン』の対人(対竜)関係の描かれ方が好き

先日見かけた、山本弘氏のTweetを見てふと思ったこと。元Tweetに対する意見とかではなく、そこからふと思ったコトです。

けものフレンズ』は観てないのでなんとも言えないんですが、『小林さんちのメイドラゴン』の好きなところって、「異なる種族同士の共存」なんて大げさなところまで話を広げずに、あくまで「個人と個人の共存」というスケールで話を進めているところだったりします。裏を返すと、「わかり合えない相手とはわかり合えない」という部分も込みで描かれている、というコトです。

『メイドラゴン』はついつい原作マンガの単行本も読んでしまったのでそれも踏まえて書かせていただきますが、『メイドラゴン』作中には無数の「わかり合えない相手」が登場します。ドラゴンから見た多くの人間がそうですし、多くの人間から見たドラゴンもそうです。また、ドラゴンという同じ種族の中でも派閥が存在し、トールとエルマなんかはお互い対立する存在なワケです。人間同士でも同じコトで、例えばカンナと才川と一悶着起こしたドッジボール好きな中学生とか、職場で小林さんにやたら突っかかってきたハゲ上司なんかは「わかり合えない相手」の典型例ですね。

で、この「わかり合えない相手」ともその後すったもんだの挙げ句仲良くなりました……なんてコトにもあんまりならないワケです。種族としてのドラゴンと人間の溝は埋められそうに無いですし、ドラゴン内部の派閥対立は解消しそうにありません。才川が挑発してドッジボールした中学生たちはドラゴン軍団によりボコボコにされてしまいましたし、小林さんに突っかかってきたハゲ上司は小林さんがパワハラで密告して職場を追われてしまいます。

こういう描写があった上での、「でも種族や文化が違う相手でも、個々に見ていけば、中にはわかりあえる相手も居るよね」という話なんですよね。小林さんとトールがまさにそれですし、また滝谷と同居を始めたファフニールが「お前は当たりだ」とボソっと言うシーン、あれも象徴的でした。

あと、カンナちゃんが初登場したときに小林さんが「友達になろうなんて言わないよ。一緒にいよう、そんだけ」と言うシーンありましたね。他人を信じるというのは簡単なコトじゃない、だったら相手を見極めるまで時間を掛けたらいいじゃない、という小林さんの、ひいてはこの作品の価値観が端的に現れている気がするセリフ。それで友達になれたならラッキーだし、もしわかり合えなくてもそれはそれで仕方ないよね、っていう。トールとエルマの仲が良いんだか悪いんだか良く分からん間柄も、この作品の空気をよく表している気がします。

皆が皆と仲良くなれるワケじゃない、どうしてもわかり合えない嫌な相手もいる。だからといってすべてを否定するのではなく、一人一人、相手をよく見てみよう……というこの作品の空気は、なんか非常に「しっくりくる」んですよね。いやこれがさ、「種族を超えてみんな仲良しー!」みたいにやられると興が冷めるというか、「それはご都合主義すぎるやろー」と思ってしまいそうで。

そういう意味では、同じくマイノリティな種族を描いた作品で、今期アニメやってる『亜人ちゃんは語りたい』なんかは、そういう軋轢の描写が少ないのがちょいと不満だったりします。ここまでアニメ観た中だと、雪がクラスメートに陰口言われる話くらいでしょうか。あれも最後は打ち解けてましたしね。まぁ、そういう描写も入れすぎると視聴者のストレスを増加させてしまいかねないので難しいところですが……。それだけに、『メイドラゴン』は対人(対竜?)関係の描き方のさじ加減が絶妙だなぁ、なんて思ったりするのでした。