大須は萌えているか?

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九州縦断ツアー再び その2:ギリギリのバランスを保つ島・池島

この記事は九州縦断ツアー再び その1:佐世保バーガーリターンズ の続きです。

池島へ

佐世保で1泊したあとは、佐世保から南へクルマで1時間くらい行ったところにある、西海市の瀬戸港にある小さなフェリーターミナルへと向かいます。

なぜこんなとこに来たかというと、 かの『ブラタモリ』でも紹介されていた海底炭鉱の島・池島へ行くため。言うなれば軍艦島の親戚のような島ですが、炭鉱の島としての歴史はこちらの方が新しく、半ば廃墟化しているものの今でも住んでいる人も居り、軍艦島とはまた違った趣を楽しめる島。

勝手に散策するのも楽しそうなんですが、炭鉱体験ツアーに申し込むと通常では入れない炭鉱内なども見学できるというコトだったので、予め申し込んでおきました。この日は午後から雨の予報、そしてツアーは雨天中止とのコトだったので、結構ヒヤヒヤしてたんですが。

池島へは佐世保港と神浦港(瀬戸港のもうちょっと南にあるとこ、一応長崎市内)からも船が出ているようなんですが(⇒ 池島への交通手段)、佐世保からは1日1往復のみ、また神浦の場合はメインで使われている船が小さいようで、波の影響を受けやすく欠航しやすい……というコトで、瀬戸港が一番現実的な選択のようです。

あと、瀬戸港にクルマを置いて行く場合、敷地内に駐めておける場所がありません。 港のちょい北に有料パーキングがあるので、そこを使います。ていうか、港の敷地内にクルマを置いて乗船したお客さんが、出港直前に注意されて慌ててクルマを移動する羽目になり、そのため出港が数分遅れたっていう……。

池島到着

瀬戸港から池島までは30分。今回の旅行は陸海空すべての乗り物に乗ってるな……。なおフェリーの名前は「かしま」でした。

港にはツアーガイドの人がスタンバっており、そこで受付をしたあと近くの施設に移動、そこで島の概要を説明するビデオを見たあと昼食をとり(午前集合の場合のみ)、その後炭鉱内へと入っていくという流れ。

大型の石炭運搬船を入港させるために、元々島に存在していた大きな池(池島という名前の由来)の端を爆破して作ったという港。なんでも、軍艦島ならこの港の中にすっぽり収まるんだそうな。

昼食は持参するか、予め弁当を注文しておくかの二択なんですが、せっかくなので弁当を注文しました。このアルミの無機質な弁当箱が実に炭鉱の雰囲気を醸し出している感。

炭鉱内へ

私が参加した回では2~30人くらいの人が居て、2グループに分かれて時間差で炭鉱内に入る形になりました。予めライト付きのヘルメットを被らされ、実際使われていたトロッコに乗って坑内に入るという凝りよう。……トロッコもちゃんと踏切あるんだな。

坑内では、実際に過去炭鉱で働いていた方がガイドをしてくれます。おかげで非常に詳細な、かつ生々しい、一部ぶっちゃけた話なども聞けて、普通の観光ツアーとはまた違った面白さがありますね。

ブラタモリでも紹介されていたロードヘッダーもありました。こいつで坑内のトンネルをゴリゴリ掘り進めていくと。掘った土や岩盤はこいつの胴体を経由してベルトコンベアで輩出されていくという優れもの。

ただ、ロードヘッダ-でも削りきれない固い岩盤にぶち当たったときは、細い穴を何カ所も開けてダイナマイトを詰め込み、いざ発破(「炭鉱の人間は爆破大好きですからね」とはガイドさんの談)。

数人限定で、採掘機械の操作も体験できたりしてました。これ、タモリもやってたやつや。

こちら↓が池島最初の坑道だそうで。ここから先は進めないんですが。

池島炭鉱は営業出炭が開始されたのが戦後からという新しい炭鉱であり、平成13年まで稼働していたっていうから驚き。さらにその後7年くらい、インドネシアベトナムから石炭採掘の技術を学びに来た人たちを対象に、この炭鉱で実習を行っていたとのこと。だから今でもそれなりに設備が残っており、こうして坑内の観光にも耐えうる状態になっているというコトなんですね。

実は池島の隣にある松島という島で先に石炭の採掘が行われていたそうなんですが、その時に海底すぐ近くを掘り進めてしまい、落盤により数十名が死亡するという事故が起き、松島炭鉱は閉鎖され池島で改めて採掘が行われるようになったそうな。……こういう採掘仕事に危険はつきものとは言え、それはさすがにヒドい話では……。

比較的新しい鉱山だけあって、次第に機械化・効率化も推し進められていったそうで、炭鉱マンの輸送用に最高時速50kmまで出る坑内列車を導入したり、採掘した石炭をベルトコンベアで絶え間なく輸送したり、坑内の状況を各所に取り付けたモニターカメラでチェックしたりと、軍艦島と比べると非常にハイテクな感じ(そりゃ平成まで稼働してたワケだし)。

島内観光

坑内から出てきたあとは、引き続き坑内を案内してくれた元炭鉱マンガイドさんによる島内観光へ(ツアー申し込み時に島内観光オプション付きにしておくと参加可能)。坑内から出てきたときには雨がパラつき始めていたんですが、そこは構わず決行してくれました。傘持ってきてて良かった。

こちら↓は第一立坑。人と石炭とを運搬するでかいエレベーターという感じでしょうか。残念ながら近寄るコトはできません。

軍艦島と同様、最盛期の島内には多くの人が住んでいた(住民の数は軍艦島より多い、ただ島の面積が軍艦島より広いので、建物の密度はそんなでもない)ため、娯楽施設もいろいろあったみたいです。下の写真の右奥の三角屋根の建物は元ボーリング場だったそう。

ただし、倒したピンの数とスコアはプレイヤー自身が紙にメモして計算しなければならなかったそうで……。

島内にはもう誰も住んでいないアパートが大量に残っていますが、そのうちの1部屋に入るコトもできました(ツアー以外は立ち入り禁止)。

室内は最盛期の生活風景が再現されている感じでしたが、なんというかザ・昭和の社宅という感じ。

ただ、驚愕すべきは家賃で、最初の頃は完全に無料だったそう。ただ、さすがに無料はよくないって話になり、数百円の家賃を取るようになったそうな。

さらには、社宅の部屋から屋上へと。

居並ぶアパートと工場群、ただツアーの参加者以外周囲に人気は無し……なんだこのリアル『少女終末旅行』みたいな世界は。

島内には水道と蒸気を運ぶ管が剥き出しの状態で張り巡らされており、これがまた独特の景観を形成してますね。これめっちゃそそる風景だわ……。

なんと今でも営業している公衆浴場も。実は島内に宿泊施設もあるようで、その気になれば島で1泊するコトも可能らしい。……それもアリかも……。

こういうツタだらけになったアパートも良いですな……。

そして事故で亡くなった方の慰霊碑も。

慰霊碑の奥にはちょっとした展望台があり、『ブラタモリ』でも紹介されていた第二立坑の建物が見えます。

実は池島、イノシシが結構たくさん居るようで、島内のあちこちにイノシシ用の罠が仕掛けてあるようで。ウカツに茂みの中とかに入ると大変。

そしてこれも『ブラタモリ』で見た気がする、8階建てのアパート群と、斜面を利用して5階部分にアクセスできる渡り通路。

この渡り通路、崩落の危険性があるため立ち入り禁止となってます。

ていうか、アパートの中とかも基本的に立ち入り禁止エリアなワケですが、どうもそれを華麗にスルーして中に入り込んでは写真撮っている人が結構居るようで。実際、WEBで検索してみると、個人ブログで立ち入り禁止エリアの写真をしれっとアップしているところがヒットしたりします。ガイドさん曰く、「無断で入りこんでるところ見つけたらナックルパンチをお見舞いするんですけどね」だそうです。元炭鉱マンのナックルパンチ、痛そう。

こちら↓が8階建てアパート群の正面。この要塞感たるや。

そしてツアーでは第二立坑の建物のとこまで入るコトができます(通常は立ち入り禁止エリア)。「シェー」のポーズをしている像も見るコトができます。

立坑の建物内は崩落が激しくて危険、とのコトで入れません。残念。隙間からちょっとだけ中を覗くコトはできますが。

そして最後に、池島小中学校。在籍児童はなんと2人。この校舎を……2人で?

校庭にナイター設備まであるのは、かつて炭鉱マンが野球チームを作って、夜ここで野球やっていたんだそう。どんだけタフなの炭鉱マン。なお、ガイドの方も雨が降る中傘も差さず、「これぐらい私は大丈夫ですから、ハハハ」と仰っておりました。すげえ。

このあと、帰りの瀬戸港行きの船が出るまでの1時間半くらいは自由時間となったんですが、結構な勢いで雨が降ってしまっていたので、これ以上島内をほっつき歩くのも厳しい状況でした。ただ、1時間半ぼーっとしているのもアレだったので、近くにあった発電所だった建物の写真を撮ったりして。

池島には本土からも送電されていたようですが、非常用として発電施設が備えられていたそうな。とにかく炭鉱の操業が止まることが無いように考えられていたようで、坑道も予備の坑道を用意しておき、普段採掘している坑道が何らかのトラブルでしばらく使えなくなった場合、予備の坑道での採掘に切り替え、復旧したらまた元の坑道で……というコトもしていたんだとか。

にしても、この建物の崩れ方も味があるな……っていうか、よく形を留めているな……。

雨に煙る池島もなんとも言えない風情がありますが、晴れているときにもう一度来たいなぁ……そのときは、ツアーじゃなくて自由行動で歩き回ってみるのもアリかも。

あと、島で見かけて気になったのがコレ↓。

どっかで見たコトあるような……と思ったら、以前三重県渡鹿野島で見たの↓と同じようなヤツだ。

コレ、素材は港で使ってる浮きか何かかな?コレを使ってこういうキャラクターを作るの、日本全国の離島で流行ってるんだろうか……。どなたか事情に明るい方がおられましたら、情報いただけると有難いです。

ともあれ、非常に面白かったです、池島。遠巻きに廃墟を眺めるしかない軍艦島とは違って、まだギリギリ生活の場として残っている島ならではの面白さと言いますか。でも、遠からず島の住民が完全に居なくなってしまう日は来るんでしょうし、そうなったら島の廃墟化はどんどん進んでいきそう。そうなれば、ここもやがて軍艦島のようになっていくんでしょうね。

それだけに、まだ炭鉱が生きていたときの面影を色濃く残す今の状態を見るコトができたのは、非常に興味深い体験でした。ホントに、またもう一回来たいくらい。できれば晴れてるときに。

……つづく。