大須は萌えているか?

gooブログからこっちに移動しました

ネットの「狂気」とはなんなのか

先日、「ヤマカンさんの言う「アニメ・イズ・デッド」とはなんだったのか」という記事を書いたところ、気がついたらTwitterでヤマカンさんにブロックされていました。頻繁にエゴサしたりしてるのかな……。ヤマカンさんをフォローしていたワケでも無いので特に実害があるワケでもありませんが、せっかくなので(?)もう少しヤマカンさんのブログを肴にした話を書いてみたいと思います。

前回ネタにした記事以降、ヤマカンさんは2つほど記事を新たに公開されていますが、どちらも「オタク」に対する強い敵意を剥き出しにする内容となっております。京アニを襲撃した犯人のみならず、そのような犯罪を行う人間が生まれた原因を『オタクの狂暴化した「空気」』に求め、さらには『「オタクというテロリズム」との戦争』だ、とまで言っています。一応リンク貼っときますけど、正直読まなくてもいいです。

オタクがネットで「狂気」を暴走させ、それがアニメ作品に対する炎上騒ぎを引き起こし、ついにはアニメ作品のあり方そのものまでも変容させてしまった(京アニはその狂気を受け入れたために襲撃された)、というのは以前からヤマカンさんが主張されているコトですが、さてこの「狂気」の正体とはなんなのか?という話。

たとえば、アニメにおける「作画崩壊」とか、ナナメ上を行くストーリーの展開とか、制作スタッフの迂闊なSNS書き込みがトリガーになって起きる炎上騒動っていうのは、その多くは「正義感」によるものだと思っています。つまり、「プロとしてこんな仕事をしていてはダメだろう」と指摘をしてやらねばダメだ、という気持ち。

それが「冷静な批判」であればまだ良いんですが、こういうのは容易に揶揄や嘲笑、あるいは罵倒にエスカレートしていきます。「相手はプロとしてあるまじき仕事をしているんだから、どんなにヒドいコトを言ってもいい」となりやすいんですね。これは「周りも散々言っているから、自分も言っていいだろう」という、他人の尻馬に乗る心理もあるでしょう。

特に、同じ嗜好の人間が集まりやすいネットでは、こうした「正義の暴走」が顕在化しやすい。

しかし、前回の記事でも少し言及しましたが、こうした心理はオタク特有のものではありません。ネットの炎上騒ぎはアニメ以外でも毎日のように起きていますし、例えば不祥事を起こした企業、失言をした政治家、「表現の自由」を巡るアレ、某ドラクエ映画……これはかなり時事ネタですが、こうした話題では真っ当な批判もあるものの、それ以上に見るに堪えないような罵詈雑言が飛び交うことが日常茶飯事です。なんら事実に基づかないデマも多い。そういう発言をしている人たちは皆オタクか?違いますよね。

相手の欠点を殊更にあげつらい、集団で攻撃するのは「いじめ」の心理にも繋がるものがあるように思います。そして、以前読んだ中野信子氏の本なんかにもありましたが、こうした心理というのは人間から無くせないものだと思うんですね。自分の気に入らないものを排除したいという気持ち、あるいは集団の基準・規範から逸脱する存在を「共通の敵」とすることで、仲間内の結束を高めようとする気持ち。

ヒトは「いじめ」をやめられない (小学館新書)
中野 信子
小学館

こういう心理はオタクだろうとそうでなかろうと、ネットがあろうとなかろうと、人間に備わっているものだということ。誰もが加害者にも被害者にも成り得る、ということ。

これを「狂気」と呼び、それと戦うことを決意したとしても、そんなもん勝ち目はありません。だってそれ、「オタク」と戦うワケではなくて、自分も含めた人間そのものと戦うことになるんだから。自分自身だって、その「狂気」を内包しているのです。あとは、それをどこまで押さえ込めるかの違いです。正直私も偉そうなコト言えません。

また、ネットではYesかNoか、極端で過激な意見がバズりやすく、バランスの取れた意見が塗りつぶされやすいという側面もあります。それゆえ、人気を得たい人やメディアが、わざと煽る様に極端な意見を展開することが多いのも、ネットの正義が暴走しやすい一因ですね。

もちろん、これは人間の性なんだから仕方が無い、というつもりもありません。ただ、こうした事象が「オタクの狂気である」とか言っているうちは、状況は良くなるどころか悪化の一途を辿るだけだと思うワケです。

これらはもっと大きなフレームで考える必要があるし、そのためにはネットでオタク相手に宣戦布告しててもしゃーないワケです。また、ネットを飛び出して現実で実力行使に及んでしまうような人は、得てして社会的なコミュニティから疎外されているコトが多く、そうした人たちが事件を起こさない様にするために必要なのは、戦争ではなく社会的孤立者に対するケアのハズです。

もちろん、言うほど簡単な話ではないでしょうし、どれだけ対策をしたとしてもネットで罵詈雑言を吐きまくったり、現実で犯罪を犯す人を無くすコトはできないでしょう。それを前提とした上での自衛は必要でしょうし、各々がネットとの適切な距離感を考える必要があるでしょうね。

……世の中のプロのクリエイターや役者の方々の多くは、ネットとの距離感を適切に保つ方法を心得ていらっしゃるように見受けられますし、むしろ今やそれは仕事でネットに接する人にとっての必須スキルとなっている感じはありますね。それは「狂気に屈した」ことにはならんと思います。