大須は萌えているか?

gooブログからこっちに移動しました

行き過ぎたマナー違反をしてしまうカメラマンの心理を想像してみる

ネットでちょいちょい見かける話題で、「撮り鉄(鉄道写真愛好家)はマナーが悪い」っていうのあるじゃないですか。

撮り鉄「うーん、水面に電車が反射してる写真を撮りたいな・・・ せや!」 - Togetter

上記のはかなりぶっ飛んだ例ですが、線路の敷地内に入り込んで鉄道を止めてしまった、なんて話もたまに聞きますね。ただ、これ「撮り鉄」だけの問題なのかというと、決してそうではないんですよね。風景写真なんかでも、たとえば雲海の竹田城とかダイヤモンド富士とか、そういう「特定条件下でのみ撮れる風景」は、有名な撮影スポットの場所取りを巡ってトラブルになることも少なくないようですし。

あと思い出すのは、去年の12月に滋賀県の白鬚神社(琵琶湖の中に立つ鳥居で有名なとこ)に行ったんですけど、あそこって神社の前を通っている道路を横切らないと鳥居に近づくことができないんですが、神社の近くには横断歩道が無いんですね。しかし、その道路の交通量はかなり多くて、しかも神社の前で緩いカーブを描いているもんだから見通しが悪い。そのため、鳥居の近くには「横断禁止」という看板まで立っていたんですね。

それでも、カメラを持って道路を横断しようとする人が後を絶たない。誰かがカーブの向こうから来るクルマに気づかずに渡ろうとして、クルマが慌ててブレーキを踏むようなシーンもありました。これ、状況としては「線路に立ち入る撮り鉄」と似たり寄ったりなんじゃないか、って気もするんですよね。まあ、クルマを止めるより鉄道を止める方が大事ですが。この神社、昔は訪れる人もそこまで多くなかったようですが、近年はSNSでこの鳥居のエモい写真が有名になったりして、撮影に訪れる人がかなり多くなっているようです。

そしてちょっと話が逸れるんですが、たまたま読んでいた雑誌『CAR GRAPHIC』2020年7月号の連載記事で、F1フォトグラファーの原富治雄さんが「そもそも写真家なんて撮ったものを集める、いわばコレクターみたいなもの」って言ってたんですね。あー、写真家がコレクター、というのは確かにそうなのかもな、と。

これがプロやセミプロレベルの写真家さんならば、自分自身のセンスと根気強さで撮影地や構図を独自に見つけたり作り出していくコトができるんだと思うんですが、アマチュアカメラマンにありがちなのは、SNSや雑誌で見かけた「カッコイイ写真」と同じような写真を撮りたい、っていうのがあると思うんですよ。んで、それを「自分の写真」としてコレクションしたい。

たまに余所からパクった写真をちょろっとだけ加工して「自分の写真です」ってSNSに上げる人も居るようですが、それは承認欲求だけ満たしたいタイプの人ですね。一方、撮影地や構図は有名な写真のマネだけど、自分で撮ることに意味を見いだすのがアマチュアカメラマンのコレクター心理だと思うんです。

ここでカメラマンのマナーの話に戻るんですが、カメラマンが往々にしてマナー違反(場合によっては法令違反)を犯してしまいがちなケースを改めて考えてみると、「撮影可能な場所とタイミングが限られているもの」が多いのかな、って気がします。鉄道なんかは一度目の前を通り過ぎてしまうと、再び同じ構図で撮影できるのはずいぶん待たないとダメだったりするでしょうし、それが特別編成の列車だったり、ラストランの列車だったりすると「それを逃すと次はない」という状況だったりするワケです。山城の周辺に雲海が出る日もかなり限られますし、ダイヤモンド富士もその条件を満たすのはごくわずかな時間です。白鬚神社のように、湖面に立ってる鳥居というのも全国にそんなにあるモノではありません。

有名な写真と同じような写真が撮りたい、でもそれを撮るにはかなり条件が限られる。こういうのってガチャゲーでいうところのスーパーレアだとかウルトラレアみたいな感じだと思うんですよ。レアリティが高い分、ちょっと無理してでもコレクションに加えたくなる。んで、引き出しの少ないアマチュアカメラマンほど、有名な写真と同じ条件・構図に固執してしまい、それを実現するためになりふり構わなくなった結果、違反行為のあれこれが発生するのではないかなーと想像するワケです。引き出しの多いカメラマンならば、現場の状況が想定と違っていた場合に「プランB」・「プランC」を用意して、臨機応変に撮り方を変えたりもできると思うんですけどね。

また、鉄道や飛行機みたいな乗り物系は、よりコレクター要素が強くなるのも確かでしょうね。被写体のレアリティを格付けしやすいという意味で。近所を走っているいつでも撮影可能な列車はノーマル、本数が少なめなのはレア、遠くまで行かないと撮影できないのはハイパーレア、期間限定でしか撮影できないのはスーパーレア、みたいな。

そういう意味では、クルマやモータースポーツ系の写真もコレクター要素は強そうですが、サーキット走行しているクルマだと、何周もグルグル走ってくれるから「この一瞬を逃したら終了」というコトがあんまり無いので、まだ平和な部類なんでしょう(アクシデントやオーバーテイクの瞬間を撮ろうと思ったらまた話は別ですが)。

あと、有名になった撮影地だと、マナー違反を「みんなやっているコトだから」と考えて軽視するようになる集団心理もありそう。本来ならば立ち入り禁止区域である廃墟内に入り込んで撮影する人も結構いますが、ああいう人もそれを指摘されたらきっと「だって他の人も中に入って撮影した写真をSNSにアップしていたから」って言いますよ。ええ。

そんなコトを考えると、こうしたカメラマンのマナー問題というのは、人間のコレクター心理の問題でもあり、そしてレアリティの高い写真をSNSに公開してちやほやされたい承認欲求の問題も絡んでたりするんだろなあ、と想像したりするワケです。ただ、この心理自体は人間に普遍的なモノであり、「撮り鉄だから」みたいな捉え方をするのは違うと思いますし、ともすれば自分もそういう心理に絡め取られる可能性だってあるのだ、と自覚したいものです。