大須は萌えているか?

gooブログからこっちに移動しました

F1[20] トルコGP 決勝

王者の王者たる所以というか……いやスゴイですね、ルイス・ハミルトン。F1トルコGP決勝。

こんな状況でも勝っちゃうハミルトン

今回はハミルトンの優勝は無いと思ってたんですよねえ……予選で出遅れていたし、オマケにレース序盤はコースアウトして順位を落とす場面もありましたしね。雨が止まずに降り続いていたなら、ハミルトンの勝利は無かったとも思います。ウェットコンディションだと、メルセデスはタイヤのワーキングレンジに入れるのに相当苦労していた感じでしたからね。

しかし、路面は濡れていたものの雨は止み、少しずつ水が減っていくコンディションだったのが幸いしました。ウェットタイヤで手こずっていたハミルトンでしたが、8周目にインターミディエイトに交換してから息を吹き返しましたね。そこからしばらくの間ベッテルの後ろを追走してく形になるワケですが、後ろに張り付きながらもブレーキの温度が上がらずブレーキング勝負に持ちこめないため、そのままずっと後ろを追走する格好に。ただ、これが結果的には正解だった感じしますね。

結局、前に居たベッテルは33周目にピットイン、そして翌周にはアルボンがスピンしたことで労せずして3位浮上、アンダーステアに苦しんでいたトップのストロールも36周目にピットイン。これで2位に浮上したハミルトン、その翌周にはDRSを使ってペレスをオーバーテイク。結局、自力でオーバーテイクしたのはペレスだけなんですよね、ハミルトン。

ただハミルトンの真骨頂はここからで、8周目に交換したインターのままどんどん後続を突き放していっちゃうっていう。ちょい乾きの路面がメルセデスにマッチしていたのもあるかもしれませんが、それにしてもハミルトンのペースは驚異的。ハミルトンと同じ1ストップ作戦を取ったペレスも2位表彰台を獲得しましたが、ハミルトンはそのペレスよりも2周早く交換している上に、ペレスは新品タイヤだったのに対しハミルトンは3周オールドだったんだからもう。

正直運も味方した展開だったとは思うんですが、しかし1ストップ作戦でここまでのハイペースを維持した走りは圧巻。7度のワールドチャンピオンの貫禄ですねえ、これは。メルセデスのマシンとハミルトンのコンビネーションの成せるワザなんでしょうね。2度目のタイヤ交換をしたドライバーでも、その後ハミルトンとの差を詰めていけたドライバーってほとんど居ないんじゃないですかね。

文句無しの7度目のワールドチャンピオン、恐れ入りました。

一方、ボタスがなんでここまでクソミソな状態だったのかって話なんですけど、どうもスタート後のターン1でつられてスピンしたあと、ターン9でも接触があったみたいですね。それでマシンのバランスが狂ってしまい、まともに走れなくなったと。オンボード見ると、右フロントタイヤぶつけちゃってますね。これでアライメント狂っちゃったんでしょうね。

Then I had contact in Turn 9 and then the car wasn’t the same anymore. I struggled to stay on track. I couldn’t stay on track, the steering wheel was like this, and there was a piece missing from the front wing.

via: Valtteri Bottas : What the teams said - Race day at the 2020 Turkish Grand Prix | Formula 1®

てか、レース中に実に6度のスピンをしていたようで……。

WATCH: Six spins and not much fun - Valtteri Bottas has a day to forget in Turkey | Formula 1®(動画)

このコンディションだと、1度スピンしてしまうとタイヤの熱が失われてしまい、余計にマシンが不安定になってまたスピン……という負のスパイラルにハマってしまうのが怖いところ。メルセデスのマシンはタイヤに熱が入るのに時間が掛かっていたようなので尚更。コンスタントにペースを維持して好循環に乗れたハミルトンとは対照的に、ボタスは悪循環の罠にハマってしまったというワケです。……なんか、これまでの2人を象徴しているかのようなレースでしたね……。ボタスはちょっと運にも恵まれなさすぎな感はあります。なんなんだろうねコレ。

ベッテルが表彰台に!

今回のDRIVER OF THE DAYにも選ばれたベッテル、久しぶりの表彰台ですねえ。序盤から上位で粘り強い走りを見せていただけに、今回はルクレールに勝てるか……と思いきやレース後半にオーバーテイクされてしまいガックリ……と思いきや最後の最後にルクレールがペレスに仕掛けてミス、表彰台ゲットという怒濤の展開。ペレスもビックリしてましたね。最後にルクレールをかわせたのは運もありますけど、その時点でルクレールとペレスの後ろにぴったり忍び寄っていたからこその3位ですからね。こういうトリッキーなコンディションで速さを見せられたというところを見ると、ベッテルもまだまだ錆び付いてはいないハズ。

今回はマッティア・ビノットが現場には居なかったというコトで、記者会見でベッテルに「ローレン・メキーズ(フェラーリのスポーティングディレクター)の指揮下での今週末はどうだった?」という質問が飛んだりもしてますが、ベッテルは「まずいことに僕らはおそらく今年最大の得点を挙げたんだよね、マッティアが居ないときに!もし次のレースでたくさんのポイントが取れなかったら、彼には再び家に居て貰うようにしよう」みたいなコトを言ったりして。まあビノットが不在のレースでベッテルが久々の好成績を上げたとあっては、またフェラーリ陰謀論が盛り上がりそうな気がしないでもありません(ベッテルはあくまで冗談として言ってます)。

Well, I think the team is well aware of all the motions it needs to go through so yeah, I think it’s quite bad… I think we scored probably the most points this year for us and Mattia wasn’t here! Yeah, if the next race we don’t score as many points we try again to leave him at home! No, I don’t think it’s related to that. I don’t believe in this kind of stuff.

via: Sebastian VETTEL : FIA post-race press conference – Turkey | Formula 1®

なお、最後の最後にミスで表彰台を逃したルクレールは、チェッカー後チームに「P4、良い仕事だったよ」と無線で言われた直後に放送禁止用語を連発しながら自分を罵っていたようです。バクーの予選でクラッシュしたときもそうですけど、ミスしたときに怒濤の自虐モードに入るよね、ルクレール……。

Inconsolable Leclerc says he was ‘**** when it mattered’ after last-lap mistake loses him podium spot | Formula 1®

クールなようで、レースモードに入ると激しい感情も露わにするところもルクレールの魅力だったりはするんですけどね。若いっていいよねウフフ(?)。

レースの内容としてはルクレールも非常に良い仕事しましたからねえ。そもそもスタートポジションを考えれば、フェラーリの2台が3-4フィニッシュって上出来過ぎるでしょ。

レース前半は勝利すら予感させたストロール

今週末、このトリッキーなコンディションにもっとも振り回されたのはストロールだったのかもしれません。良いときと悪いときの振れ幅が一番大きかったドライバーなので。予選でポールポジションを獲り、序盤の間はペレスとの間にギャップをつくり、3番手のベッテルが後続にフタをする格好になったので、下手すりゃこのまま優勝も有り得るんじゃね?とすら思いました。実際、58周レースの35周目まではレースをリードしていたワケですよ彼。しかし、タイヤをダメにしてしまいピットイン、しかしその後もペースが上がらずあれよあれよと9位まで転落してフィニッシュ。

「なんでか知らないけどグレイニングがヒドかった」とストロールはコメントしてますが、ペレスが1ストップ作戦で2位表彰台を仕留めたところを見ると、そりゃータイヤマネジメントのスキルが……という話になっちゃいませんかねコレ。

‘It was pretty terrible’ – Polesitter Stroll perplexed by tyre struggles that left him P9 in Turkish GP | Formula 1®

タイヤマネジメントに定評のあるペレスに対して、ストロールはどうしてもその辺が荒っぽい印象ありますし。ペレスは、ストロールが2回目のタイヤ交換をしたあともすぐグレイニングを訴えたりしてペースが伸び悩んでいると無線で知らされて1ストップで行くコトを決めたようですが、とはいえ結果論的に言えばペレスも交換する手もあったんですよね。ペレスもペースが落ちててハミルトンにオーバーテイクされてしまったワケで、その時点でピットに飛び込めばフェルスタッペンに対してポジションは失うものの再度勝負はできたハズですし、終盤フェラーリの猛追に遭うことも避けられていたと思われるので。

水の量が減っていっているコンディションでのストロールのドライビングがよろしくなかった(タイヤ的な意味で)ため、ペレスも惑わされたような気がしないでもありません。逆に、もしストロールもピットに入らずステイアウトしていてとしても、ペースを大幅に落としてレース終盤にDRSで面白いように抜かれていたよーな気がします。しかし、1つのレースウィークでここまで落差の大きいドライバーもなかなか居ないんじゃないかな……。

そのほか

今週末の優勝候補筆頭はレッドブルだと思っていたんですけど、まさかフェルスタッペンもアルボンもスピンでチャンスをフイにしてしまうとはねえ……。極めて滑りやすい路面であるがゆえに、オーバーテイクのリスクが大きすぎましたね。アグレッシブなドライバーほど足下を掬われやすいコンディション。まーフェルスタッペンがペレスに仕掛けたくなる気持ちもわかるんですけどね……。タラレバを言うなら、奇数列スタートで蹴り出しがもっとマトモだったら、優勝できていたかもしれませんね。アルボンももし表彰台に食い込めていたら評価が見直されていたかもしれないのに……と思うと残念感が半端無い。

あと、フェラーリの後ろ5位フィニッシュしたサインツは良い仕事しましたねえ。15番手スタートからの5位フィニッシュ、順位の上げ幅は一番大きかったワケですし。スタートで6台抜いたってのが大きかったですが、レースペースもかなり良かったんですよね。特に後半から終盤にかけて。こういうコンディションでこそ、レースの組み立ての上手さが光りました。

今回もハミルトンの強さが際立つレースではありましたが、かつてのミハエル・シューマッハアロンソに敗れて引退したように(そのあと復活したけど)、そろそろハミルトンを倒す存在にも期待したいところですね。ぜひ、ハミルトンが現役のうちにそういうドライバーが登場してほしい。

F1公式のTwitterで2008年のミハエルのインタビュー動画が紹介されてましたが、「今日のF1ドライバーが7度のワールドタイトルを超えるようなところまで到達できるか?」と質問されたミハエルが「それは間違い無いだろう」と答えてるのが印象的ですね。ファンジオの達成した5度のワールドタイトルを超えるなんて自分自身思いもしなかったのにそれを成し遂げた、記録は塗り替えられるものなんだと。

ミハエルの記録ももはや塗り替えられないだろうと思ったのにこうしてハミルトンが続々と塗り替え、ワールドチャンピオン獲得数でも並んでみせた。だとしたら、ハミルトンの記録だっていつかは塗り替えられるハズである、と言えるワケですね。まあ、あんまり1人のドライバーが勝ちまくるのも観ている方としてはアレなので、群雄割拠になるのが望ましくはあるのですが、ここまでの高みに到達したアスリートを観られるというのも悪く無いんじゃないかとも思います。

おそらくハミルトンは100勝を超える記録を打ち立てるでしょうけど、まあ年間レース数がズンドコ増えている昨今だったらイケるイケる(?)。