大須は萌えているか?

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望遠レンズとメディアリテラシー

この辺の記事を読んで。

報道は「密」を演出したのか カメラマンから見た「圧縮効果」批判と撮る側の悩み - 毎日新聞

しばらく前に、緊急事態宣言後の東京の人出が減ってないという趣旨の朝日新聞の記事で、品川駅の通勤風景を望遠レンズで撮影することにより、実際の人混みよりも人が密集しているように見える写真が掲載され、実際の見た目とずいぶん違うという指摘がSNSから挙がったコトによりちょっとした炎上騒ぎになってたりしたんですよね。

宣言から一夜、通勤風景ほぼ変わらず 遠い出勤7割減:朝日新聞デジタル

私もこのニュース記事はちらっと見ていたんですけど、この写真自体はあんまし気にしてませんでした。というのも、こういう「群衆」を表現するために望遠レンズ使って人が寄り集まっているように見せる手法は今に始まったコトでは無いので。こういう言い方をすると「マスコミを擁護している」と取る人も居るかもしれませんが、そうではなく「新聞はそれくらいの『演出』はやるよね」って思っているだけの話です。もちろん、そんな『演出』はけしからん、という批判はあっても良いと思うんですが、今になって言う話か?という気はしてしまいました。まあ、コロナ禍でこういう人出の話題にピリピリしている人が多いんだろなあ、とは思いますが。

結局のところ、写真というのは焦点距離・構図・シャッタースピード被写界深度といった要素で映る画はどうとでも変わるワケで、人間の主観と無縁ではいられないんですよね。文章に筆者の主観が入るのと同様、写真にもカメラマンの主観が入っており、そこには何らかの意図が必ず介在する。だからウソついても良いよねって話ではもちろん無く、デタラメな内容ならば当然批判されて然るべきです。ただ、「緊急事態制限が前回発出されたときより人出の減少幅が少ない」というのは事実だったので、デタラメっていうほどでも無いかなーと思ったので。反ワクチンの記事はもっと叩かれていいと思いますけど。あれはダイレクトに人の命に直結するんで。

ただ、結局新聞社も人に読まれてナンボの商売なので(新聞より不動産で利益上げているところもあるようですが)、人の目に留まるように記事の見出しや写真を「盛る」コトは今後も無くならんだろうなあ、と思ったりもするワケです。事実をありのまま提示してもなかなか人の目に留まらないってのは、WEBで文章や動画を公開したコトある人ならなんとなく理解できるかと思います。やっぱりなんかフックがいる。それを露骨なまでにやっちゃうメディアもあれば、なるべく分かりづらいように仕込むメディアもあって、そういったメディアの性格を嗅ぎ分けて、情報を取捨選択していくのが「メディアリテラシー」なんだろうな、と思っています。

マスコミの不手際が報じられるたびに「マスゴミ」と連呼して新聞やテレビを全否定するようなコト言う人も居ますけど、そういう人は日々のニュースとかには一切触れてないのか、触れたとしても全部信じないのか、ちょっと不思議に思ったりもします。SNS経由で流れてくる話題も、元を辿ればその「マスゴミ」が報じてる話だったりするワケなんですけども。結局日々の情報を追いかけるのにマスコミの情報は必要だし、100%信用できるメディアなんてのは無いけど、1%も信用できないメディアなんてのもそうそう無いワケです。その辺は、いろんなメディアの性格を知って行き、また複数のメディアの情報をかけ合わせることで自分の中で物事の全体像を考えていくべきなんだろな、と。

そういや、昨日見かけたねとらぼの記事に紹介されていた、小5向けの光村図書の動画は良い内容でしたね。

「想像力のスイッチを入れよう」 応用編| 下村 健一(ジャーナリスト) | 作者・筆者インタビュー | 小学校 国語 | 光村図書出版

 

 

即座に判断しない、じっくりと複数の情報を見比べるまで判断を保留する、というのは大事な姿勢ですよね。同じような話、以前読んだ森博嗣の本にも書いてあった記憶が。

WEB中心の情報収集について考えさせられる2冊 『集中力はいらない』と『わかりやすさの罠』 - 大須は萌えているか?

あと、件の朝日新聞の記事は一般人のインタビューで構成された記事であり、具体的なデータが示されていない「印象」中心の記事なんですよね。そういう意味では、あんまりアテにならない記事とも言える。NHK新型コロナウイルス特設サイトなんかを見ると、具体的な数字を元にグラフが作られていて、情報としての確度が高そうです。これ見ると、ある程度減ってはいるじゃん、というのはわかる。むしろ、名古屋駅付近が大して減ってねえな……。

新型コロナウイルス 街の人出は? 全国18地点グラフ|NHK特設サイト|NHK

人生、決断を迫られるときというのもありますが、別に自分が結論を出さなくていいコトには結論を出さず、自分の中でいろいろ考えてみる……というのは、SNSで情報が間断無く垂れ流されてくる現代だからこそ重要な態度なのでしょう、きっと。