大須は萌えているか?

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F1[23] オーストラリアGP 決勝

まさかここまでカオスな展開になるとは思っても見ませんでしたが、こういう展開のレースを日本時間の昼間にやってくれたのは助かりました(夜だと眠気に勝てなくなってくるため)。そんなワケで、F1オーストラリアGP決勝のお話。

赤旗3回

スタート後早々にルクレールがコースアウトしてセーフティカーが入るという展開でしたが、7周目にはアルボンが大きなクラッシュをして再びセーフティカー。しかしデブリがかなり散乱していたため、セーフティカー出動後に改めて赤旗が出ることに。このとき、セーフティカーのタイミングに合わせてタイヤ交換に飛び込んでいたドライバーたちは丸損する格好になってしまいました。

レース再開後は落ち着きを取り戻しましたが、レース終盤の53周目になってハースのマグヌッセンが突如ウォールに右リヤタイヤを激突させてタイヤを脱落させながらマシンストップ、ここでもまたセーフティカー出動後に赤旗。残り2周という状態でレースが再開されることになりましたが、ここでもレース再開はスタンディングスタートとされたことでさらなる混乱のフラグが立つことに。

当然皆少しでもポジションを上げたいものだから、スタート直後の1コーナーで当然のように混乱が起きてマルチクラッシュが発生。結局またしても赤旗が出ることになり、1レースで3回の赤旗中断になるというF1新記録が樹立されてしまう有様。まあ観ている側にしてみれば終盤の展開に退屈はしなかったのは確かですが、ぐちゃぐちゃの混乱になった挙げ句に最後はセーフティカーランのままフィニッシュするというオチにはさすがに「なんだこれは」と言わざるを得ませんでした。

挙げ句、実はチェッカーフラッグが振られたあとに「4度目の赤旗」が出ていた、なんて話も飛び出していて、開いた口が塞がりません。

F1オーストラリアGPはチェッカー後も大混乱。レース進行中にも関わらず観客がコースに進入し、4回目の赤旗掲出……プロモーターに”是正計画”提出命令

最後の赤旗を振り返る

今回のレースでちょっと物議を醸しそうだな、と思ったのは最後の赤旗が出された際、リスタート直後に赤旗となったため、このあとの順位ってどうなるの?という点。これってスポーティングレギュレーションとしてはどのように定められているんだっけ?と思い、例によってJAFのサイトに公開されている日本語版のF1競技規則を見てみると、57条「スプリントセッションまたは決勝レースの中断」の3項には以下のように書かれていました。

いかなる場合にも、順序は、すべての車両の位置を決定することが可能な最終時点のものを採用する。す べてのそのような車両は、その後スプリントセッションまたは決勝レースを再開することを許される。

via: 2022年競技規則_日本語版_20220429 57条3項

「すべての車両の位置を決定することが可能な最終時点のものを採用」とされているだけで、厳密に決められている感じではないんですね。2度めの赤旗からのレース再開時、先頭がセクター1を走り終える前には再び赤旗掲示されていたので、結果的にリスタート前の順位に巻き戻されて、そこからリタイヤしたドライバーを除外した順位になった感じ。

ただ、この順位に対してハースは抗議を提出したみたいですね。

Haas protest provisional results of 2023 Australian Grand Prix | Formula 1®

ハースのヒュルケンベルグは、赤旗が出る直前に4番手まで順位を上げていたワケですが、リスタート時の順位に巻き戻された結果7番手に下がる格好になってしまったワケですね。なのでハースとしては少しでもポイントを稼ぐために抗議してみた、という感じなのかもしれませんが、どういう理屈で抗議したのかがちょっと気になるところ。まあハースの理屈が通るならば、角田も5位入賞ということになるのでそれはそれで結構な話ではあるんですが(?)。

……と、この記事を書いている間にハースの抗議は却下されていたみたいで。

Stewards dismiss Haas protest over provisional results of 2023 Australian Grand Prix | Formula 1®

やっぱり争点は57条3項の「車両の位置を決定することが可能な最終時点」がどこか、という点だったみたいですが、ハースとしては赤旗で中断される寸前のタイミングデータを用いて最後のクルマの並び順を決めるべきだった、と主張している感じでしょうか。これがもし各車がセクター2に入っている状態であったなら、セクター1を走りきったタイミングでの順位とすることも可能だったのでは、と思うんですが、今回みたく全車がまだセクター1も走り終わっていない状態で、どこか任意の場所に線を引いてここの通過順序で順位を決める……とかやり始めると、余計に混乱を招くであろうことは想像できます。そう考えると、抗議の却下は仕方ないかなあ、という気はします。

そもそも2度めの赤旗は不要だった、という意見もドライバーから出てますね。フェルスタッペンとかラッセルとか。デブリが散乱していたといってもセーフティーカーが入れば十分なレベルで、それならばリスタートもローリングで安全に行えた、というワケです。確かに、感覚的には赤旗ってコース上が相当ひどい状態になっている場合に出るものであって、クラッシュのデブリ除去であれば基本的にはセーフティーカーで対処するもの、というふうには思います。そういう意味では、アルボンのクラッシュも赤旗が必要だったのか、という話になるんですけど。

現状のレギュレーションでは、レース中に赤旗を出す場合の規定としては57条1項に定められています。

競技参加者あるいは競技役員の身体に、走路上を走行する車両による危険が差し迫っている場合、セーフティカー後方であっても競技長が安全を確保できる余地がないと判断する場合、スプリントセッションまたは決勝レースは中断される。

via: 2022年競技規則_日本語版_20220429 57条1項

赤旗にするかどうかの判断は競技長に一任される格好になっていますが、まあ確かにこの書き方だと個人の判断による揺れがあっても致し方なし、という感じにはなっちゃいますね。ただ、確かにセーフティーカーなのか赤旗なのかというのはチームやドライバーにとっては相当に大きな違いになってしまう(赤旗ならタイヤ交換を自由に出来てしまう)ワケで、そこがレースによって基準が大きく変わってくるようだと、チームのストラテジストは頭を抱えることになってしまいます。

ついでに、赤旗からの再開時、スタンディングスタートにするのかローリングスタートにするのか、という判断については、58条11項と12項に記載されていますね。

走路の状態がスタンディングスタートからスプリントセッションまたはレースを再開するのに適していると判断される場合、「"STANDING START"」というメッセージが、公式メッセージ送信システムを使用し、すべての競技参加者に第58条5に詳述される1分前合図に遅れることなく送られる。

via: 2022年競技規則_日本語版_20220429 58条11項

走路の状態がスタンディングスタートからスプリントセッションまたはレースを再開するのに適切でないと判断された場合、公式メッセージ送信システムを使用し、すべての競技参加者に「"ROLLING START"」というメッセージが第58条5に詳述される1分前合図に遅れることなく送られる。

via: 2022年競技規則_日本語版_20220429 58条12項

まあここも判断基準までは示されていない感じですね。慣例的には、路面のコンディションがドライならだいたいはスタンディングスタートとなり、ウェットとかならローリングスタートになるというくらいの感じではあると思いますが。なので、今回のように残り2周での再開となる場合でもスタンディングスタートが選択されたということなんでしょう。残り周回がわずかだから、スタート後の混乱が大きくなることが予想される……というのが「スタンディングスタートが適切ではない」と判断するに足る理由足り得るかどうか。

今回もレギュレーションの解釈を巡っていろいろな宿題が出てきてしまった感じがしますが、やっぱりまずはセーフティーカー赤旗の基準というか、ガイドラインみたいなものを示したほうがいい感じがしますね。レースの展開に大きく関わる要素なだけに、ここの基準が定まらないとまた今回のようにモヤモヤしたレースが繰り返されかねませんし。

レースの話

赤旗に関する話ばかり書いてしまって、肝心のレース内容について全然書いていないのでちょっと(?)書いておきたいと思います。

予選で思わぬ好調さを発揮したメルセデス、決勝ではラッセル車PUが文字通り火を吹いてしまいビックリだったんですが、ハミルトンは上手いことレースをマネジメントして2位表彰台を獲得。ずっとアロンソに追走される展開となりましたが、アロンソを近づけさせることはあってもDRS圏内までは入らせないという、計算された走りができていたのが印象的。ハミルトン自身も今回のレースには手応えを感じたようで、「レッドブルに追いつくことはタフだけど不可能なことじゃない」みたいなコメントまでしてますね。

Hamilton hails ‘amazing’ Melbourne podium as he says Mercedes closing gap to Red Bull will be ‘tough but not impossible’ | Formula 1®

とはいえ、フェルスタッペンは最初のスタートこそしくじりましたが、トップに立って以降は完全にレースをコントロールしていましたし、あんまり無理なプッシュをしているような感じでもなかったので、これにメルセデスが追いつくのは正直あんまり現実的じゃないようにも見えますが……(すくなくとも今季中には)。とりあえずはヨーロッパラウンドでの大型アップデート投入でどうなるか見てみたいところですが、まずは「2番めのチーム」の座を確立できるといいですね。

今回、トップのフェルスタッペンは別として、ハミルトン・アロンソサインツ・ガスリーあたりがかなり近いところで走り続けていたのが印象的でした。今回DRSゾーンが4箇所設定されたのもあって、後ろのクルマが前のクルマに追随しやすい状況だったのはありそうですね。なので今回のレースを見るとフェラーリのロングラン悪くないようにも見えるんですが、ただそれでもアロンソにじりじり離されていく格好にはなっていましたので、まだ改善すべき余地は大きい感じもします。

サインツは最終的にアロンソをスピンさせた件で5秒のタイムペナルティを取られてポイント圏外に追いやられてしまいましたが、これはサインツにとって酷な話ですねえ。サインツにとって避けられる接触だったといえばそうなのかもしれませんが、最後フォーメーションラップのままフィニッシュすることが確定している状態での5秒ペナルティって通常の5秒ペナルティよりも遥かに重い意味を持ちますし……。実際問題、4番目にチェッカーを受けたのに12位まで転落する羽目になってしまったワケで。

ガスリーも上位グループでずっと奮闘しており、彼にとって素晴らしいレースになったなあ……と思っていたら、最後の最後にまさかの同士討ちでアルピーヌダブルリタイヤという結果に。これはオコンとの紛争待ったなしか……と期待、いやさ心配してしまったのですが、ガスリーがオコンに詫びを入れてオコンもそれを受け入れ解決した模様。二人共大人だった。ただ、オコンはどうも角田の動きを避難するようなコメントをしていたようで、それはそれで言いがかりでは?という気がする感じで……。

アルピーヌ失意のダブルリタイア。オコンは角田裕毅のドライビングを”自殺行為”と批判?

その角田はサインツのペナルティに救われる格好で10位入賞を果たしましたが、レースの内容的にはかなり散々な感じでしたね。アルファタウリのマシンはロングランでどうにも踏ん張れない。そもそもダウンフォースがよそのマシンに比べて足りない状態で、ロングランでのタイヤの消費が厳しいところに加えてなんとかポジションを守ろうとプッシュすれば、そりゃレース後半になるにつれまともに走らなくなっちゃうよなあ、と。そうした状況下でなんとか獲得した1ポイントは大きな意味を持つかもしれませんが、しかし今回のアルボンの走りなんかを見ていると、ウィリアムズに勝つのも難しいのではないか、という気がしないでもありません。

ただ、角田自身はベストを尽くせていると思うので、あとはホントマシンの出来ですよねえ……。