大須は萌えているか?

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「聖地化前提アニメ」はどうすれば成功するか

そうそう、ほいで聖地巡礼の話の続きなんですけど。

聖地巡礼」を前提としたアニメ作品の増加

聖地巡礼」って言葉が定着するにつれ、最初から地域とのタイアップを織り込んだかのよーな作品がちらほらと見られるようになってきてますよね。ただ、すると今度は地域タイアップを織り込むコトが優先されるあまりに作品の質が低下してしまわないか、あるいは最初から大々的に「聖地」として宣伝されるとむしろしらけてしまわないか、という懸念も見受けられるようになってくるワケで。

前者については、個人的にはあんまり心配してなかったりして。地域タイアップが前提だろうがそうでなかろうが、面白い作品は面白いだろうしつまらない作品はつまらないコトに変わりはないと思うので。

後者については確かにそうかもなーとは思うものの、ぶっちゃけ自力で聖地を探しだそうというコアなファンよりも、最初から場所が判明しているなら行ってみるか程度のライト層のがたぶん多いワケで、地域活性化を考えるならばその方が正解かなと。それに地元がアニメ作品のコトを理解してノリノリでいてくれた方が、私のよーなミーハーなファンとっては訪れやすいんですよ。

それに地域タイアップが積極的に進められるコトで制作会社にも地域にも訪れるファンにもプラスになるならばこんなに良い話は無いワケで、こうした流れはむしろ歓迎。

ただ、「地域タイアップ前提となることで、アニメ作品の傾向がマンネリ化しないか」、「コアなファンがしらけてしまうコトで、アニメ人気の牽引力そのものが弱くなってしまわないか」という懸念はあるよーな気がします。じゃあなにがどうなれば、皆が納得のいく「聖地化前提アニメ作品」が出来上がるのか?

聖地巡礼前提」によるマンネリ化防止

まず最近読んで興味深かったのが、錦織博監督(『とある魔術の禁書目録』等の監督)の発言をまとめたTogetter。

錦織博監督が語る、アニメ制作におけるロケハンの問題点 - Togetter

アニメの聖地巡礼ブームとロケハン主義が表裏一体となって加速すると、「美術のスタイル、描法が固定化してしまう」という指摘。聖地巡礼を意識して実在の風景をロケハンし、それをどんどん作品内に持ち込んでしまうコトで意図せずとも美術が高密度化し、固着化する。つまり、同じような見た目の作品が増えていっちゃうってコトでしょうか。

地域の風景をちゃんと見せようと思うとどうしても写実的になっていくし、だんだん作品の雰囲気も似たり寄ったりになっていくというのは確かにわかるよーな気がします。

ただ、そもそも今の聖地巡礼ブームの火付け役になった『らき☆すた』を見ると、風景なんかは全然写実的じゃないし、鷲宮神社自体は作中に於いてそんなに出てくるワケでも重要な意味合いを持っているワケでも無いんですよね。でもあんなに人が訪れる聖地になった。

その辺のコトを踏まえて、作り手側がいかに発想を固着化させないかがポイントになってくるのでしょう。この辺は視聴者の立場としては「作り手のお手並み拝見」てなもんで、「聖地巡礼前提 = ロケハン主義」という前提を崩す作品がどんどん登場するコトを期待したいなぁと。

コアなファンをしらけさせない工夫

らき☆すた』の鷲宮神社や、『けいおん!』の豊郷小学校なんかを見ると、地域の人がその作品のコトを大変「わかってらっしゃる」のは大きなポイントだと思います。そりゃ「けいおん!カフェ」で「幻のゴールデンチョコパン(1日限定3食)」とか、「カレーのちライス」なんてメニューを見るともうニヤニヤしちゃってたまらないワケですよ。

こういうの見ると、「ああ、地元の人もホントに作品のコト気に入ってやっているんだな」と思えるワケです。これがもし地元が作品とは全然関係無い観光PRに終始しちゃったり、某かんなぎ神社みたいに適当すぎるコトやっちゃうと、ファンにしてみれば「誰がそんなとこにカネを落とすもんか」と思っちゃいますよね。

あと、豊郷小学校で良いなぁと思ったのは「ファンと一緒に聖地を作る」というスタンス。部室のモデルになってる音楽準備室ではファンによるグッズの持ち込みが許可されてて、訪れる度に新たな発見があり飽きないし、グッズを持ち込むファンも作品世界の構築に参加しているような気分になれる。

こうした「ファンに見物してもらう」のではなく「ファンに参加してもらう」というスタンスは「聖地を見つける楽しみが無くなった」と嘆くコアなファンに対しても訴求力があるよーな気がします。聖地巡礼するファンの心理として、「作品世界を体験したい」というのに加えて「作品世界に関わりたい」というのもあるでしょうから。

そういう意味においては、アニメ作中に登場したお祭りを実際に開催してしまったという金沢・湯涌温泉の試み(『花咲くいろは』のぼんぼり祭り)も興味深いところ。参加型のイベントとしてはお祭りってちょうど良さげですからね。アニメはもう終了したものの、お祭りは今年も継続して開催するそうなんで、前年対比でどれくらい人が集まるのか気になりますね。

湯涌温泉の場合、金沢というそこそこ大きな街は近くにあるものの、東京・大阪・名古屋という大都市圏からちょっと遠いのがネック。ただ、年に一度のお祭りなら十分足を運ぶ理由にはなり得るんじゃないかなぁと。私が湯涌温泉に立ち寄ってみたときにはガラガラでしたけど、まぁお祭りが終わって間もないタイミングでしたし……。

テレビアニメの場合、基本的に放送が終われば作品自体の人気は収束していくので、いかにぼんぼり祭りというイベントそのものを定着させていくかがカギでしょうね。鷲宮神社を見ても、あれはもはや「らき☆すたの聖地」という括りを越えて定着化している感があります。聖地化はあくまでトリガーと捉え、そこからいかにイベント等で定着させるか。……これって結局、ふつーの広告なんかと同じ話だとは思うんですけども。

そんなこんなで

個人的にはこうした「聖地」の増加はちょっと旅に出る良い口実になるので、いいぞもっとやれ。ただ今期の『ラグランジェ』の鴨川はちょっと微妙かも……。