大須は萌えているか?

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『おおかみこどもの雨と雪』を観てきた

えー、今日から公開となっている細田守監督の最新作、『おおかみこどもの雨と雪』を観に行ってきました。ひとりで。

この映画、予告編を観た限りでは「自分向け」ではないよーな気がしており、スルーする気だったんですよ。ただ、あの富野由悠季御大がこの作品を賞賛しているなどという記事を読んでしまい、つい気になって観に行ってしまった次第。

本作は、変身物でもなければ、恋愛物でもないし、エコやら環境問題をあげつらったメッセージ物でもない。まして癒やし系でもない。

それら過去のジャンル分けなどを飛び越えた物語になっている。描写が冷静だからだろう。文芸大作と言っても良い。それほどリアルに命の連鎖を描き、子供の成長の問題を取りあげている。そこに至った意味は刮目(かつもく)すべきなのだ。

via: 富野由悠季:「おおかみこどもの雨と雪」を異例の大絶賛 - MANTANWEB(まんたんウェブ)

そう、確かに描写が冷静でした。基本的に私は「感動大作」なんてキャッチが付くような「お涙頂戴」モノは苦手なんですが、この作品はそういう系統ではない。

Twitterとかの感想を眺めると「感動した」とか「泣いた」とかって人も結構居ますけど、作品の中に「さあここで泣かすぞ」みたいな演出は全然感じられなかった。

ドキュメンタリーっていうと言い過ぎだけど、母と2人の子供の成長を粛々と見守るような作品。

自然の描写も鮮やかで、風になびく草だとか、降りしきる雨の描写は実写さながら。でも「おおかみこども」のキャラクター描写はやっぱりアニメならではのもので、アニメ的な表現と写実的な表現のいいとこ取りみたいな映像かなと。

そのぶん、言い方を変えるとストーリーの起伏は乏しいというか、過剰にドラマチックな要素はありません。タイムリープしたりしないし、「よろしくお願いしまーす」のようなカタルシスもない。

「おおかみおとこ」というファンタジー的な要素はありますが、実は「おおかみおとこ」じゃなくてもストーリーが成立しそうな気もします。映画の最後は、「え?これで終わり?」とちょっと呆気にとられました。

ただね、この作品の女性キャラは魅力的。主人公であり、「おおかみこども」2人の母親である花なんて、もうパーフェクトかーちゃんですよ。なんか、男の「嫁にしたい女」願望を具現化したような女性。

彼氏が実は「おおかみおとこ」だと知っても受け入れちゃうし、元々が奨学金で国立大に進んだ苦学生で、逆境に身を置いても笑顔を浮かべて前へ進める島本和彦的マインド(?)の持ち主でもあります。宮あおいの声も良かった。

それから、「おおかみこども」である雪。この子やばい。幼少期の天真爛漫さがやばい。「おおかみ幼女」の破壊力すごいです。久しぶりに萌え死にしそうなキャラクターでした。私自身、獣属性は無いはずなんですが。

んで、成長するに従って野性的な部分を潜め、人間の女になっていく様がまたやばい。今なら、「小さい頃はあんなだったのに、すっかり大きくなっちゃってぇ」と会う度に同じことしか言わない親戚のおばちゃんの気持ちがわかるよーな気がします。

果たして、富野御大が舐めたくなったのはどちらのキャラクターだったのでしょうか(二択に決めつけ)。

穿った見方をすると、ストーリー的な起伏の少ないこの作品が、よく企画として通ったなぁと思ったりもしますが、そこは細田監督の積み上げた実績の為せる技でしょうか。

いやなんか、全体的に大衆受けを狙ってる感じがしなかったんですよ。狙いたいなら、もっとストーリーの山とか笑いやお涙頂戴の演出を入れてくるんじゃないかなって。

ヱヴァンゲリヲン』がサービス満点の遊園地だとしたら、『おおかみこども』は飾らないけどしっかり手入れの行き届いた近所の公園、みたいな。

富野御大が絶賛しているのも、この作品が受け入れられる土壌があるならば、自分のワガママも通しやすくなるんじゃないか、という計算があったりして……ていうのは深読みしすぎ?

あ、あと林原めぐみが意外なチョイ役で出演しててびっくり。